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糸状仮足の回転を示した模式図

糸状仮足の回転を示した模式図

脳細胞の先端が、右ねじの方向に回転することを発見|2010年 プレスリリース|理化学研究所.

独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター神経成長機構研究チームの上口裕之チームリーダーと玉田篤史研究員らと、大阪大学大学院生命機能研究科の村上富士夫教授らは、脳の神経回路を形成する神経細胞の神経突起の動きを3次元的に捉えることに成功し、神経突起が時計回り(右ねじ方向)に回転していることを世界で初めて発見したと発表した。アメリカの科学雑誌『Journal of Cell Biology(ジャーナル・オブ・セルバイオロジー)』オンライン版(2月1日付け:日本時間2月2日)に掲載される。

脳の働きを担う神経回路は、多数の神経細胞から伸びた神経突起が絡み合ったもの。脳が機能を発揮するためには神経突起が標的に向かって伸長することが必要となる。

神経突起の先端部は成長円錐と呼ばれる。成長円錐はアメーバ状の領域から多数の糸状仮足が突出した構造をしており、成長円錐が前進することで神経突起を引き伸ばす。従来の研究では、培養皿にはり付いた状態の神経突起を観察していたため、平面的な運動しか捉えることができなかった。

神経突起と成長円錐の形態

神経突起と成長円錐の形態

研究グループは、ラットの脳の神経細胞を3次元的に広がるコラーゲンを含むゲル状の培地内で培養し、顕微鏡の対物レンズに向かって伸びてくる神経突起の運動を観察する事で、成長円錐の本来の動きを3次元的に捉えることに成功した。観察の結果、神経突起の先端部は右ねじ方向に毎分約1回転していた。

次に研究グループは糸状仮足が回転する分子メカニズムを解析した。糸状仮足の内部にはアクチン線維の細胞骨格があり、それによって糸状仮足は細長い形態を保持している。成長円錐には、アクチン線維を動かす数種類のモーター分子が存在する。中でもミオシンVが、アクチン線維を回転させるモーターであると推察されていた。そこで研究グループは、成長円錐が持つミオシンVの働きを阻害する変異型ミオシンVの遺伝子を開発し、この遺伝子を組み入れた神経細胞では糸状仮足の回転が止まることを証明した。これにより、ミオシンVが、糸状仮足を回転させるモーターの役割を担うことが確かとなった。

この糸状仮足の回転運動が原因で、神経突起は右に曲がりながら伸びることもわかった。

神経突起は右曲がりに伸びる。(A)脳組織を培養皿(水色)の上に乗せて液体培地(紫)で培養したことを示す模式図。培養皿にはり付いた神経突起は右に曲がりながら伸びていく。(B)実際に(A)の方法で培養したラット脳組織の顕微鏡写真。脳組織から伸びた多数の神経突起は右に曲がっている。

神経突起は右曲がりに伸びる。(A)脳組織を培養皿(水色)の上に乗せて液体培地(紫)で培養したことを示す模式図。培養皿にはり付いた神経突起は右に曲がりながら伸びていく。(B)実際に(A)の方法で培養したラット脳組織の顕微鏡写真。脳組織から伸びた多数の神経突起は右に曲がっている。

神経突起が伸びるメカニズムを解明することは、胎生期の神経回路の構築や経験依存的な神経回路の再構築の仕組みを理解する上できわめて重要だという。例えば、糸状仮足が右ねじ方向に回転することで、左脳と右脳で神経突起が同一方向に曲がると、神経回路は左右鏡像ではなく非対称になる。

左脳と右脳のいずれの神経細胞でも、神経突起が右ねじ方向に回転していたことから、神経突起の右ねじ方向への回転は、脳の左右非対称性を生み出す新たなメカニズムであると推察できるとしている。

今後、糸状仮足の回転を止める変異型ミオシンVの遺伝子を組み入れた実験動物を作製することで、糸状仮足の回転と左右脳の機能分担のかかわりを調べることもできる。また、糸状仮足を逆方向(左ねじ方向)に回転させる変異型ミオシンVの遺伝子を設計することも理論的に可能であることから、糸状仮足が逆回転する実験動物を作製して解析することで、脳科学分野におけるまったく新しい概念が創出されることが期待できるという。

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