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図1 真正粘菌変形体

粘菌の輸送ネットワークから都市構造の設計理論を構築 —都市間を結ぶ最適な道路・鉄道網の法則確立に期待—

関東地方のかたちの寒天上で粘菌を育てると、実在の鉄道路線と同じような形の餌輸送経路を作った。

JSTは、JSTさきがけ研究者の手老篤史研究員らが、単細胞生物の真正粘菌の集合体が形成する餌の輸送ネットワークを理論的に解明し、都市を結ぶ実際の鉄道網よりも経済性の高いネットワークを形成する理論モデルの構築に成功したと発表した。最適な都市間ネットワークを設計する手法の確立につながるものだという。北海道大学電子科学研究所の中垣俊之 准教授、広島大学 大学院理学研究科の小林亮 教授らと共同で行われた研究で、1/22日の「Science」に掲載される。

粘菌の集合体によるネットワークは、利用されている部分が発達し、利用されていない部分は減退・消失する。そして、構築・維持コストの節約やアクシデントに対する頑強性や輸送効率などの性質を持ち、全体で分散して制御しながらネットワークを作成している。手老氏はこのような粘菌のネットワークの性質の研究で、2008年度のイグ・ノーベル賞を受賞している。真正粘菌のネットワークは人間が作る都市間ネットワークの思想と共通する部分が多いという。

今回、手老氏らは真正粘菌変形体(図1)という単細胞生物の作る輸送ネットワークに着目し実験を行った。まず関東地方の形状を模した容器を作り、主要駅に対応する場所に粘菌の餌を置いた。そこに粘菌を這わせると、粘菌は餌の周りに集まり、管状の輸送ネットワークを作成した(図2)。

図2 粘菌の都市間ネットワーク作成実験

図2 粘菌の都市間ネットワーク作成実験

粘菌は光を嫌い、明るい場所では管ネットワークを作らず、暗い場所に迂回して管を作成する性質がある。この性質を用いて標高の高い場所や湖に対応する領域に強い光を当てる実験を行ったところ、制作コストに対応したより精度の高いネットワークを作ることを確認した(図3)。

図3 実験結果とネットワーク

図3 実験結果とネットワーク

そして、粘菌の輸送ネットワークの作成を再現するアルゴリズムを生成し、実験に対応する数値計算を行って、駅間を結ぶ粘菌ネットワークを再現した(図4)。 これらのネットワークの性能を評価することによって、ネットワークの長さ・断線のリスク・輸送効率のバランスが良いネットワークが作成されていることが分かった。全体のネットワーク利用量が少ない場合には構築コストも少ないネットワークができるといったような、環境により重視する値が自動的に適応することも数値実験により確認された。

図4 コンピュータによる数値計算結果

図4 コンピュータによる数値計算結果

この結果から、粘菌が形成するネットワークを再現するアルゴリズムは、インフラ整備や都市間ネットワーク作成に有用となるものと期待されるという。