95%以上が水の新素材アクアマテリアル 高強度、自己修復性も

高強度で自己修復性のあるアクアマテリアルの開発に成功—水からできた究極の環境無負荷材料として期待—.
東京大学 大学院工学系研究科の相田卓三教授らは、高強度で透明な「アクアマテリアル(ハイドロゲル)」の開発に成功したと発表した。既存のどの含水材料よりもはるかに高い強度を持ち、形状保持性とともに自己修復性も持つ。究極の環境無負荷材料への道を切り開くものだという。科学雑誌「Nature」のオンライン速報版で公開される。
今回開発された「アクアマテリアル」は95%以上の水分を含んでいて、2〜5%の層状粘土鉱物と、0.4%に満たない有機高分子化合物と水を混ぜるだけで簡単に創ることができる。形状保持性、自己修復性などの性質は、このアクアマテリアルの分子が非共有結合性の相互作用のみによって形成されているためだという。剛性は天然物由来のアクアマテリアルとして知られ、今回開発されたものとほぼ同等の水分を持つ、こんにゃくの強度の約500倍に相当する。
研究グループは、これまでの研究成果を用いて、新たに親水性の高分子の両末端を、カチオン性のデンドロン基で修飾した高分子化合物を設計。デンドロン基とクレイの層の表面との相互作用を利用して、クレイ層を親水性高分子で非共有結合的に架橋して形成される網目構造に水を保持させるという基本構想を立てた。そして約95%の高含水率と0.5MPa(メガパスカル)の高剛性を併せ持ち、形状保持性と自己修復性を持つ透明なアクアマテリアルの開発に成功した。
ハイドロゲルの作り方には、共有結合による架橋構造を利用する方法と、非共有結合による超分子的方法が知られているが、研究グループは、混ぜるだけで簡単に作れ、自己修復性が期待できる非共有結合による方法を選んだ。材料は、(1)水、(2)クレイナノシート(粘土鉱物が層状に積み重なったもの)、(3)両末端デンドロン化高分子、(4)ポリアクリル酸ソーダ(ASAP)の4つの成分。
ポリアクリル酸ソーダの水溶液にクレイを入れ、この分散液を撹拌しながら親水性のポリエチレングリコール鎖の両末端を、末端にグアニジニウムカチオンをもつデンドロン基で修飾したGn-binderを加えた。するとグアニジニウムカチオンが多数のオキシアニオンの存在するクレイナノシートの表面と相互作用して、長いポリエチレングリコール鎖を介してクレイナノシートを結合し、3次元の網目構造を形成して透明なハイドロゲルが生成した。このハイドロゲルの生成は、Gn-binderを加えてから3分以内。
強度の高いハイドロゲルを得るためには、クレイをあらかじめポリアクリル酸ソーダで処理するプロセスが極めて重要だという。この操作によりクレイナノシートがきれいに分散して3次元網目構造を形成するために十分な表面積が確保される。
また、このハイドロゲルのブロックをスライスして得た断片を、スライスした直後に貼り合わせると、新たなブロックが形成される。さらに、このハイドロゲルが、生理活性のあるたんぱく質を変性させることなくゲル内に取り込むことも研究グループは明らかにしている。
今後に関しては、水を主成分とするアクアマテリアルは、環境に優しく、容易に作製することができること、非共有結合でできているため自己修復性であるという特徴、十分な強度を持つこと、どんな形にも成形できること、生理活性物質を取り込むこともできることなどから、異なる酵素活性を持たせた反応シーケンスの場をデザインでき、バイオリアクター用材料、および骨、軟骨などの再生材料や代替材料、アクチュエーター材料など、さまざまな応用分野を切り開く可能性があるという。
ハイドロゲルの作り方
著者/訳者:吉田 亮
出版社:共立出版( 2004-06 )
定価:¥ 1,575
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単行本 ( 131 ページ )
ISBN-10 : 4320043642
ISBN-13 : 9784320043640
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