iPS細胞が出現する瞬間の撮影に成功 放医研

世界初、iPS細胞の出現の瞬間が見えた!—iPS細胞への転換メカニズム解明に大きな前進—.
独立行政法人 放射線医学総合研究所(放医研)重粒子医科学センター 先端遺伝子発現研究グループ 安倍真澄グループリーダー、荒木良子チームリーダーらは、世界で初めてiPS細胞出現の瞬間の撮影に成功して動画を公開した。動画はhttp://www.nirs.go.jp/news/press/2009/01_08_move/index.shtmlでダウンロードできる。
体細胞からiPS細胞への変化は、早いものではiPS化の処理後、数時間で始まり、48時間以内にはほとんどの体細胞で変化が始まっていることがわかった。幹細胞学の国際誌『Stem Cells』に近く掲載される。独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ「iPS細胞と生命機能」研究領域(研究総括:西川伸一)における研究課題「iPS法と核移植法の比較による初期化機構の解明」(研究者:荒木良子)の一環として行われた。
研究グループは、「いつ、どのような体細胞が、どのようにiPS細胞へ転換するのか?」という疑問に答えるため「iPS化の瞬間」の撮影を試みた。
この研究ではマウス胎児線維芽細胞にレトロウイルス感染によって4つの因子を導入し、細胞培養装置で iPS細胞化する実験系を用いられた。通常、マウス胎児線維芽細胞を用いる場合、因子導入後、約2週間で境界が明瞭なiPS細胞コロニー(iPS細胞の塊)を観察できる。しかし、開始時点ではどの細胞がiPS細胞になるか分からないため、広い視野で撮影せざるを得ない。研究グループでは、「10分前後のインターバル」「広い視野」「2週間の撮影」による80万個、 600GB以上という膨大な画像数の処理を可能としたシステムを組んだ。
2週間後、最終的にiPSコロニーが出現した部分を過去に遡って観察(バックトラッキング)し、「どの細胞がiPS細胞の祖先の細胞であるか」、「その祖先の細胞からiPS細胞はいつ生じるか?」、「そのときの形態は?」について解析を試み、最終的に28個のiPS細胞コロニーについて完全な解析に成功した。
その結果、以下のような事が分かったという。
- ほとんどの体細胞で、4因子導入後48時間以内にiPS化が起きている。また一部の細胞では、数時間でiPS化が始まる。
- iPS化が起こるときの細胞形状は元の線維芽細胞に近い。
- iPS化が起こった後は、分裂を行いながら徐々にiPS細胞コロニーの形に変わる。
- iPS化は始まったものの、途中で完全なiPS細胞化に失敗している細胞が多く観察された。すなわち、4因子を導入する事により、従来考えられていたより遥かに高頻度にiPS化が始まっている。
これまで、体細胞がiPS化を始めた瞬間の画像は得られていなかった。この研究で体細胞がiPS細胞へ変化していく全過程が世界で初めて映像として記録された。今後は、iPS化に関わる4因子がどのステップに関わるか、iPS化しない細胞とする細胞の違いは何かなど、iPS化の基本的なメカニズムを解明していく。またこのシステムは「細胞がガン化する瞬間」「細胞が別の細胞へと分化する様子」などの観察にも用いることができるという。
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