帯状発疹による強い痛みの原因はBDNFの活性化 理研
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は神経線維束に沿って感染(神経損傷を伴う)しなが ら下降し(この時に前駆症状)、神経支配領域に沿って増殖し、帯状疱疹を発症する。皮 膚病変部で神経損傷を伴い、痛覚過敏となる。 (下)痛覚経路を示す。脊髄神経節細胞は中枢端軸索を脊髄後部(後角)の中継神経細胞へ 伸ばし、その中継細胞の軸索は交差して脊髄の反対側を上行し脳に痛みの情報を伝える。
帯状疱疹に伴う「強い痛み」の謎を世界で初めて解明(PDF).
富山大大学院医学薬学研究部ウイルス学教室白木公康教授らと理化学研究所(理研)脳科学総合研究センターの津本忠治チームリーダーらは、12月17日、帯状疱疹による強い痛みや、帯状疱疹後の痛覚過敏症(帯状疱疹後神経痛)の痛み発生のメカニズムを明らかにしたと発表した。
原因となる「水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)」の抗体が、「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の活性を高め、それによって脊髄の痛覚伝達神経細胞を賦活するため、痛覚過敏が生じる。この痛覚過敏のネットワークの存在を示す世界で初めての発見だという。米国の科学雑誌『Journal of Virology』(2010年2月10日号)のオンライン版に掲載される。
帯状疱疹は1,000人に4.15人(70歳台で8人)の率で発症する病気で、80歳までに3人に1人が経験する。皮膚に神経にそって帯状に疱疹が形成され、激しい痛みが生じる。また60歳以上の患者では12.5%が3カ月以上も疼痛が続く、帯状疱疹後神経痛を経験する。
原因となる「水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)」はヘルペスウイルスの1種で、初感染で水痘を起こし、神経節に潜伏、活性化することで帯状疱疹を生じる。いっぽう、同じヘルペスウイルスの単純ヘルペスウイルスによる口唇ヘルペスや性器ヘルペスも、潜伏ウイルスの再活性化で帯状疱疹に似た状態になるが、ほとんど痛くない。帯状疱疹の痛みが生じるメカニズムは謎だった。
研究グループは、これまでに、脳由来神経栄養因子BDNFが痛覚系に関与するという先行研究報告があることから、BDNFが水痘帯状疱疹の痛みに関与しているのではないかと考えた。
免疫学的手法や培養細胞、神経損傷痛覚モデルマウスを作製して調べた結果、VZVの前初期抗原の刺激で作られた抗体が、BDNFの活性を高め、痛覚形成に関連する脊髄の痛覚伝達神経細胞を賦活するため、痛覚過敏が生じていることを世界で初めて明らかにした。
帯状疱疹では、帯状疱疹発症の前駆期に神経節におけるウイルス増殖と、帯状疱疹皮疹に伴う末梢神経損傷が生じ、さらに髄腔内での抗IE62抗体が産生されることにより、BDNFの活性が増強すると考えられるという。その結果、痛覚過敏と痛覚ネットワークが形成され、帯状疱疹中の疼痛や帯状疱疹後神経痛に伴う痛覚過敏症が生じると推測している。
今回、メカニズムが解明されたことで、帯状疱疹発症から帯状疱疹後神経痛への移行過程の遺伝子発現が検討でき、また、モデル動物の開発が可能となる。研究グループでは根本的なレベルで有効な治療薬の開発が期待できるとしている。
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