iTunes Store(Japan)

02

たんぱく質合成のオン・オフスイッチを開発 (ヒトの細胞内で標的となるたんぱく質の生産を自在に制御-未来型の細胞機能制御テクノロジーの確立に向けて-) — 京都大学.

京都大学の生命科学研究科教授の井上丹氏、同助教の齊藤博英氏らの研究グループはJST目的基礎研究事業の一環として、細胞内のmRNAからタンパク質に変換する段階の遺伝子発現の制御を行う新しい翻訳制御システム「人工RNPスイッチ」の開発に成功したと発表した。特定のタンパク質の発現量に応じて標的の遺伝子の翻訳をオンオフ制御できる。高精度の制御が可能で、二つの異なるターゲット遺伝子の一方を抑制し、他方を活性化させることもできる。「分子タグ」を使うことで、標的タンパク質の発現量を自在に制御することもできる。がん細胞のみを死滅ささせるガン治療法や、マーカータンパク質の発現を検知する診断、細胞分化のコントロールなどへの応用が期待できるという。2009年12月13日(英国時間)にイギリスの科学雑誌「Nature Chemical Biology」のオンライン速報版で公開された。

論文名
“Synthetic Translational Regulation by an L7Ae-Kink-turn RNP Switch”
(L7AeキンクターンRNPスイッチによる翻訳制御)

細胞でのタンパク質合成は、合成装置である「リボソーム」が、「mRNA」と相互作用することにより行われる。この両者の相互作用を制御すれば、たんぱく質の合成を制御することが可能と考えられる。今 回の研究は、この相互作用の制御方法として、「RNA-タンパク質(RNP)相互作用モチーフ」を利用したもの。

具体的には古細菌が持つリボソームたんぱく質の一つである「L7Ae」と、L7Aeに特異的に結合するRNAである「キンクターンRNA」を利用した。このキンクターンRNAを導入したmRNAは、L7Aeと複合体(RNP)を形成する。そのため、L7Ae存在下ではリボソームとmRNA の相互作用が阻害され、たんぱく質の合成が妨げられる。これがオフスイッチになる。

同様の仕組みを利 用することで、目的遺伝子の翻訳を活性化(オン)する「オンスイッチ」を構築することにも成功した。オンスイッチには、L7Aeにも標的mRNAとも結合できる「人工レギュレーターRNA」を利用する。人工レギュレーターRNAは、L7Aeが存在しない場合は標的mRNAに結合する。するとリボソーム とmRNAとの相互作用が妨げられ、タンパク質の発現が抑制される。いっぽうL7AeがあるときはL7Aeと優先的に結合し、mRNAから外れる。そしてmRNAからのたんぱく質発現が起こる。これがオンスイッチだ。

オンスイッチとオフスイッチの制御を同時に引き起 こし、二つの異なるターゲット遺伝子の一方を抑制し、他方を活性化させることもできるという。

03

タンパク質生合成―真核生物におけるその機構と制御

出版社:講談社( 1984-02 )

定価:¥ 4,414

- ( 258 ページ )

ISBN-10 : 4061395408

ISBN-13 : 9784061395404