NetScience Interview Mail 2002/01/10 Vol.170 |
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【篠原正典(しのはら・まさのり)@財団法人 環境科学技術研究所 環境シミュレーション研究部 研究員】
研究:動物行動学
著書:「イルカ・クジラ学(仮題)」(共著、東海大学出版会 2002年6月出版予定)
○財団法人 環境科学技術研究所 環境シミュレーション研究部の篠原正典さんのお話を配信致します。環境科学技術研究所では人工閉鎖環境、通称ミニ地球の研究が行われており、篠原さんはそのなかに入って生活を行う予定になっています。(編集部)
[01: ミニ地球居住実験・CEEF] |
データベース |
■はい。青森県六ケ所村にある財団法人「環境科学技術研究所」(http://www.ies.or.jp/)で行っているプロジェクトです。
我々は「CEEF(シーフと発音、Closed Ecology Experiment Facilities 閉鎖型生態系実験施設)」と呼んでいますが、延べ床面積がだいたい550平方メートルの建屋で、ヤギやイネなどを育てて食糧を完全自給して暮らすというものです。
現在は準備中で、本格的な実験に入るのは2005年からになります。
○単に閉じこもって生活するわけではなく、酸素や水、植物、排泄物なども全て循環させるわけですね。
■そうです。
○この手の閉鎖実験施設というと、アメリカの<バイオスフィア2>(http://www.bio2.edu/)が有名ですが。
■そう。あれよりも小型ですけどね。
中は閉鎖系植物実験施設、閉鎖系動物飼育・居住実験施設、閉鎖系陸・水圏実験施設から構成されています。物質循環は空調装置や物質処理装置で厳密に維持制御されます。循環せず、外部とやりとりされるのはエネルギーと情報だけです。
○所の常務理事で、シミュレーション部の部長も兼任している新田理事は以前から閉鎖環境の研究や著書で大変有名ですね。将来的にはやはり宇宙基地とか、ステーションとかに応用、ということなんでしょうか。
■ええ。もちろん物質循環をはじめとした環境科学の研究に使うのが第一の目的ですが、月面や火星での基地のテストベッドとしての役割も期待されています。また、公害を出さないゼロエミッション社会構築の研究などにも応用される可能性が考えられています。
○なるほど。各設備について教えて頂けますか。
■はい。まず居住区は人間二人までが生活ができるよおうになっていて、調理や食事、データ整理、さらにトイレや、睡眠などができる設備が整っています。
植物栽培区では温度や湿度、二酸化炭素濃度、光などがコントロールされていて、稲などが育てられます。
動物飼育区では、檻の中で動物を飼います。
○動物は何を飼うんですか。
■ヤギです。シバヤギという小型のヤギです。檻には水飲み器や飼料箱があり、糞尿はすのこ状になった床で分離できるようになっていて、自動的に回収と清掃ができます。
動物の糞尿や、もちろん人間の屎尿、そして植物の食べられない部分は、物質循環処理設備で湿式酸化処理で分解され、肥料に変えられます。また酸素が足りない場合は二酸化炭素を分解して酸素を作り、有毒ガスなども処理されます。
また水圏モジュールでは3つの水槽を使って、沿岸域の生態系を作る実験が行えるようになってます。水槽のなかの水は、将来的には微生物によるフィルターなどを使って浄化、循環する予定になっています。
○篠原さんはその中に入って閉鎖施設で居住するわけですが、肝心の閉鎖実験のスケジュールは?
■まず4年後に一週間の閉鎖実験。これは何回かやると思います。そして5年後に一ヶ月。で、そのあとにもうちょっと長期の。
○じゃあその間にトレーニングを? 今は待ちなんですか。
■そうです。
○でも四年は長いですよね。
■うん、だからむしろ早く入りたいですね。
でも、いまは楽しいですよ。勉強することも多いですし。
たとえば植物を30種ちゃんと育てたことってないでしょう。トマトのわき芽を摘んだりだとか、受粉させたりとか、ホルモン剤をまくとか。システム全体のこととかを勉強しているところですから。
○なるほど、閉鎖生態系のエコシステムを勉強中ということですか。
■ええ。僕は、工学的知識がぜんぜんないので、特にシステム全体がどう働くのかを勉強しているところです。
[02:CEEFの目的 ] |
○いま、CEEFの施設はどのくらい出来ているんですか。
■植物栽培区と動物飼育・居住区関連は全部できています。
○基本的な疑問なんですが、新田先生の基本的スタンスは、微生物や生物などに頼ると不安定だし衛生面にも問題があるから、あんまりそういうのは入れたくなかったんじゃないかと思うんですけど。工学的にそういうものを再現するという立場で研究をやっていらっしゃるものだと思っていました。
■それは仰るとおりです。計画の初期は、まず、生物の分解者はなく、生産者の植物と消費者の動物の間の生物体移行ということで、植物栽培区と動物飼育・居住区を作り、いやいやさらに、様々なものをみれる地球のシミュレーターみたいなものにしようと、規模を拡大し、陸圏と呼んでいる陸地と、水圏と呼んでいる海とかも作ろうということになったと。さらには、分解者としてコントロールできる状態の微生物を利用しようということで計画が進んでいます。
○バイオスフィアですね。
■ええ。陸圏と水圏もあわせると、それこそ宮崎のシーガイアみたいな大規模な構想だったと聴きましたけど。予算の都合で、とてもそんなにも大きなものにはなりませんでしたけど。
○なるほど。じゃあバイオスフィア2に近くなってるんですかね。
■そうですね。新田先生本人も、世間的にも地球環境のシミュレーションの話を全面に押し出してますからね。物質循環の具体的な課題も、最初は放射性物質のトレースだけだったんですが、最近は環境ホルモンの動態を追うとかも視野に入れているみたいですしね。
○環境ホルモンの動態って?
■放り込んだら、まずいでしょうけど。ほっといても閉鎖施設のなかにあるものが、どこに溜まるのかを調べるとか、同様の動態をするような物質を利用してシミュレートするとか。
○具体的にどの物質を追いかけるのかは決まってるんですか。
■放射性物質に関してはC14が対象になってると思いますが、実際には安定同位体を使うことになります。
○炭素循環を追うんですね。
■そうです。C,N,Oに関しては、元素レベルで収支を見られるようにしようとしています。
○バイオスフィア2のときには大気圧がどんどん下がるという事態が発生しましたね。そういうのを防ぐための方策はどうするんですか。
■どうなんでしょう。今の段階では、閉鎖して回したときにどの程度なにが起こるか……どの程度バッファを持っているかによると思うんですよね。バイオスフィア2のときはバッファがほとんどなかったじゃないですか。建物は大きかったですけど、それが一つの系でしたから。うちの場合は、実際に植物を育てたり動物を育てるのは小さいですが、それとは別にバッファがありますから。そこをどれだけ大きくするかだと思うんです。それにうちの作りはコンクリではなくステンレスの箱ですし。
○バイオスフィア2でも、いわゆる肺にあたる、大気圧の変動を吸収するための施設があったのでは?
■あっ、そうなんですか。うちの場合も気圧調節のためのエアタンクや循環の際の溜めの系があるんですよ。それらが、閉鎖系全体の何割分かに相当する量があるんです。
○?
■中で循環させる分以外にも、各種のガスや水などが貯蓄されていたり、様々に処理されていたり、ということです。
○なるほど。予備タンクがあるんですか。
■そうです。かつかつでは、足りなくなっても足してやることができませんから。
○バイオスフィア2の場合は土の中の微生物とコンクリの中に吸収されてしまったんでしたよね。
■ええ。ライフサイクルの短い昆虫などの場合は現実的にはコントロール効きませんからこわいですね。バイオスフィア2でも土壌中の微生物の他にゴキブリの大発生なんかもありましたよね。そういったものや小動物は怖いですよね。
○閉鎖生態系で殺虫剤を撒くわけにも行きませんからね。
■ええ。うちの場合は水もガスも一度フィルターを通したり加熱や加圧で相転移したりしますから、そこで落ちると言えば落ちるんですけどね。水は殺菌システムもありますし。汚れた水と、中水と、上水、3種類にわけてます。
○水は不味そうですね。
■そうですね。飲んだことないから分からないけど、まずいでしょうね(笑)。
○ストレス溜まりそうですね。逆に、蒸留水からうまい水を作る研究もすればいいのに。
■うん、だからお茶を作ろうかという話はあるんですよ。大きな木だとすぐには育たないですけど、ハウスのなか、小規模でもすぐに作れるハーブとか。
○なるほど。
■はじめはそういうこと考えてなかったんですけどね。根っこを煎ってコーヒーみたいなものを作ったりだとか……。
○ああ、タンポポとかひまわりとかね。
■そうです。そんなのをしようかと一緒に選ばれた人と冗談で言ってたんですけど、「そんなサバイバルみたいなことしなくていい」って言われて(笑)。欲しければハーブも育ててやるし、お茶も用意する」と。
○「育ててやる」って言われても、それの面倒は篠原さんがやるんでしょ(笑)?
■そうです。でも、高価な植物はハウスの水耕栽培で育てるノウハウがあっても、稲とか大豆とかは今まで意外と水耕栽培で育てられたことがないらしいんですよね。だから欲しいものでもちゃんと育てられるかどうかを色々実験してもらわないといけないんですよ。
○なるほど。
■動物のほうは去年からヤギの閉じ込め実験とかやってるんですけどね。ただ、Ceefの場合、動物や植物を育てているのは本当にごく一部でしかなくて、その外で物資を処理して循環させるシステムが大変なんですよ。それと居住区や植物栽培区をどうインテグレートさせるかも問題で、こっちのほうも実験の真っ最中です。
○次号へ続く…。
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◇毎日 遺伝子操作:拒絶反応抑えたクローン豚開発 臓器移植に道
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200201/03/20020103k0000e040017000c.html
◇毎日 がん:抑制たんぱく質が多すぎると老化早める 米研究者が発表
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200201/03/20020103k0000m040092000c.html
◇gooリサーチ結果(No.35)「環境報告書発行企業の意識調査」
〜 6割がインターネット上で公開、英語版作成は4割。
課題は、発行企業と読者とのギャップの解消、費用対効果の向上〜
http://www.goo.ne.jp/help/info/n_release/n_011226.html
◇ZDNet 2001年は,やっぱりロボットの年だった?
http://www.zdnet.co.jp/news/0112/25/robot.html
◇ZDNet バンダイ戦略開発室が考える「ネットワーク対応ロボット」の可能性
http://www.zdnet.co.jp/news/0112/27/bandai.html
◇ゲノム特定オンラインニュース
http://www.kuba.co.jp/genome/news/index.html
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