NetScience Interview Mail
2001/04/05 Vol.139
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【梶田秀司(かじた・しゅうじ)@機械技術研究所 ロボット工学部 運動機構研究室】

 研究:2足歩行ロボットの制御
 著書:『歩きだした未来の機械たち −ロボットとつき会う方法−』ポプラ社

ホームページ: http://www.mel.go.jp/soshiki/robot/undo/kajita.html

○二足歩行ロボット、その制御の研究者、梶田さんにお話を伺います。
ロボットブームではありますが、技術的な話はほとんど触れられていないようです。
素人でも、もうちょっと詳しいことが知りたくなりました。(編集部)



前号から続く (第10回)

[30:これからの二足歩行]

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○もうちょっと現実的な質問を。具体的にはHRP2の新型ロボットは、どういう目標を持っているんですか。

■僕が実際にやらなくちゃいけないのは、不整地の歩行です。P3でも、けっこう床面の凹凸に敏感で、平面の精度が何度以内とか、数センチ以内とかあるんです。それを、もうちょっととっぱらってやりたい。
 イメージとしては、雨が降ったあとにカンカン照りになると、長靴で歩いたあととかがデコボコになって残るでしょう。ああいうところを歩いていけるといいなと。それをつくりこみたい。
 歩行の制御の問題ですが、ややこしい問題があるんですよ。予期するよりも先に足が着いてしまうと、何も対応しないとそれで姿勢が揺れちゃいますから。

○はい。

■屋外の凹凸路面を歩いた上で、我々がいま考えているのは、長い板を、人間と共同して運びたいと。そのときに狭いところを歩いていくとか。ロボットが先導するか、 人間が先導するかは分かりませんが、最終的には壁にたけかけてやるとか。そういう形を考えています。

○なるほど。

■もう少し、状況に応じて足の動かし方を変えさせてやりたいんですよね。バリエーションを増やす。たとえばものすごく大きな段差があったら足を大きくあげてやるとか、平らなところだったら地面すれすれですべらせても大丈夫ですよね。そういうバリエーション。

○ホンダのロボットに限らないんですが、いまのロボットの歩き方って、目をつぶって、思い切り足探りで歩いているような感じがするんですが。

■ん、そう見えますか?

○なんていうんでしょうかね。ちょっとした段差でも、人間は目で見て予測して歩いてるけど、ロボットはそれを着地した時点、つまり足で探ってるわけじゃないですか。

■うん、まさにそうですね。

○人間は、段差があると思ってたところになかったときや、その逆の場合は「おっとっと」ってなるけども、ほとんどの場合、目で見て見当をつけて歩いているじゃないですか。これは視覚からの情報で頭のなかでモデルを作って歩いているからでしょ。
 ところがロボットは思い切り「踏みしめて」歩いてますよね。たとえ出っ張りとかがあっても、踏みしめることで無理矢理突破してるような歩き方じゃないですか。

■ええ、そうです。 ○まさに不整地突破なのかもしれませんけど。でも、人間でもね、目をつぶって、思い切り力を入れて、ドンドンと踏みしめながら歩けば、段差があったらこけるのは、そりゃ当たり前じゃないかと思うんですよ。

■うん…。いま僕が考えているようなやり方だと、踏みしめ方をもっと激しい踏みしめかたに変えていくということになっちゃいますね。

○やっぱそうなんですか。そこらへんが、人間とは全く違うんだな、と思えるところなんですよ。人間だったら、つま先立ちしちゃったりして、歩き出したりするわけじゃないですか。つま先の部分でコンプライアンスして、バランスを取って歩ける。

■ええ、P3はつま先ないですからね。つま先で歩こうと思ったら、つま先に関節が必要だし、またそこにコンプライアンスを入れないといけない。

○うん。逆におそるおそる歩いていったりしますよね、人間なら。

■ええ。その辺が自動的にね、あまりにデコボコが激しすぎたら、少しおそるおそる歩くようになるとか、そういうモードに切り替わったりすると良いですね。
 それと、僕は足元をスマートにしたいなあと思ってるんですよ。コンパニオンさんとロボット並ぶでしょ。そしたらやっぱりぜんぜん見栄えがよくないですよね。

○あんなに足首が太い人間はいませんからねえ(笑)。そうすると人間っぽく見えますよね。

[31: 新しいアルゴリズムの模索]

○歩き方にしても、違う形の制御アルゴリズムが出てくるといいのかなー、と思ったりするんです。

■はい。制御アルゴリズムに関しては、是非、ホンダとは違うアルゴリズムにしようと思ってます。今まで僕がやってきたやり方は、早稲田ともホンダとも違うやり方なんですけど、それをベースにしたいなと。

○どんなふうに違うんですか。それぞれ教えて頂けますか。

■はい、ホンダさんも早稲田さんも、基本的には予めモデルを計算して、全て、足の一挙一動は計算されてるんですね。それに対して僕がやっているのは、一挙一動は計算しない。ある瞬間には腰の位置とか、つま先の位置とかを時々刻々計算していく、動きをその場で作っていくやり方なんですよ。そういう意味では、ロボットが動き始めるまでは、一切、パターンを持ってないんです。あとは、歩き始めたあとにセンサーの情報をもとに計算していくと。
 ホンダのロボットがどこまでできるか分からないんですけど、おそらくP3がドシドシ歩いているときに真正面から人がぶつかったら、あそこの制御は破綻する可能性がある。それに対して僕のやり方であれば、人がドシンとぶつかったらおっとっとってなって、止まって、また歩き始めることができる。そういうような制御に拡張できます。

○それはどうしてですか。

■ええ。歩行中、ほとんどの期間は片足で立ってるわけですね。片足で立ってるとき何をしないといけないかというと、胴体を垂直に立てないといけないですね。もう一つやらないといけないのは、胴体の運動を制御するんですけど、僕がやってるのは、胴体の高さを、常に一定になるように制御しましょうと。
 そういう意味で、もしもある瞬間に胴体が下がっていたら、関節を少し伸ばしたりして胴体を持ち上げてやるし、胴体が傾いていたら、胴体を立ててやる。そのなかには、あらかじめどのように足を動かせばいいかという情報は必要ない。胴体の動きだけから決まってくる。それを一歩ごとに繰り返すと。

○ふむ。

■浮いているほうの足も、これも現在の胴体の動きから、適切に、倒れずに歩き続けられるような場所を実時間で計算して、着地できるように持って行ってやる。それを一歩一歩繰り返す。

○ホンダの奴も、軌道が多少狂っても変えられるようにはなってるんでしょ?

■ええ、そうなんですよ。そこは正直いうと、ホンダさんの制御はフレキシブルですよね。だから、どこまでできているのか分からないんだけど、基本的な足の動き方はテーブルとしてコンピュータのなかに持っているんです。僕が知ってる限りは、そういうやり方なんですよ。

○んー、いまお話伺った感じだと、「もっと早く行け」って命令出すと勝手に走り出したりしそうですが、そうは行かないんですか。

■そこまでは考えてなかったですけど(笑)。いきなりスキップのパターンが出てくるとかね。

○だって、胴体をどう立てていくかということだけ見て、足の動きはフリーなんだったら、そういうこともできそうな気がしなくもないなあ、と。
 まあ、走るとか、スキップとかってことになると重心の位置そのものが変わってくると思うので、また別かもしれませんが。でも逆に、重心の位置と目標までの到達目標時間だけ変えてやると、新しい足運びのパターンが生まれてくると面白いじゃないですか(笑)。

■うーん、残念ながら僕にはそれを実現するアイデアはないなあ。そういうことができそうな手法を試している人はいるんですけどね。もうちょっとニューロよりの人ですけど。

○我々、楽しむ側からすれば、どんなアプローチでも良いんですけどね。

[32: 企業 VS 研究者のコミュニティ、ロボット業界の「伽藍とバザール」]

■僕がHRPやっていて凄くフラストレーション溜まるのは、一番キーの部分は、やっぱりホンダさんは教えてくれないんです。できれば、プロジェクトが終わったときに、こうすればヒューマノイド・ロボットは誰でも作れて、プログラムも基本的には こういう構成でこういうアルゴリズムで動きますよと。そういうものを見せることが 使命だと思うんですよ。企業秘密じゃないところで。
 それをやらないと、次にもっと良い物を作りたいというときに、生かすことができ ませんからね。

次号へ続く…。

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  http://www.cnn.co.jp/2001/TECH/03/31/NASA.sunspot/index.html

◇インターネット自然史博物館
  http://211.0.15.2/website/2d/index.htm

◇アースデイ・オフィシャルサイト
  http://www.earthday-tokyo.org/

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  http://j.people.ne.jp/2001/02/26/jp20010226_2783.html

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  http://homepage2.nifty.com/yukidon/

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◇科学技術者のための総合リソースガイド・NetScience
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NetScience Interview Mail Vol.139 2001/04/05発行 (配信数:25,135 部)
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