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『技術と経済』1999年4月号掲載書評

ベジタリアンの健康学 ダイエットからエコロジーまで
丸善刊
99年1月20日
208ページ 定価760円
著者 蒲原聖可
評者 森山和道

 本誌読者年齢は比較的高めだろうと推測する。健康診断の度に食生活を注意されている人も多いのではなかろうか。本書は、近年、肥満遺伝子産物として各方面で何かと話題のタンパク質・レプチンの研究者が書く、ベジタリアンフードのすすめである。
 ベジタリアンとは植物性食品を中心に取る人のことを指す。だが、植物性食品しか食べない人=ベジタリアンではない。牛乳や乳製品を取る人もいれば、中には魚介類を摂る人もいる。一言でベジタリアンと言っても、実に多くのバリエーションがあるのだ。本当に植物性食品しか取らないベジタリアンはビーガンと呼ばれる。
 植物性食品中心の食事の特徴は、低脂肪と高食物繊維だ。脂肪量と飽和脂肪酸が少なく、生活習慣病やガンなどの原因を作りにくい。ちなみに、植物性食品にはコレステロールは含まれていないという。
 それだけではない。野菜の多くにはビタミンなどばかりではなく、多くのファイトケミカルと呼ばれる様々な薬効を持つ物質が含まれている。ファイトケミカルとはいわゆる栄養ではないが有用な働きを持つ化学物質だ。赤ワインに多く含まれているとして話題のポリフェノールなどもファイトケミカルの一種である。その他、イソフラボンやカロチノイドなどもファイトケミカルに含まれる。これらは骨粗鬆症を防いだり、ガンを防いだりするという。一方、これは聞いてびっくりのデータなのだが、動物性タンパク質の摂取量が多くなると骨折の割合が増えるという。
 ベジタリアンフード中心の食生活を送ると、何か栄養素が足らなくなるのでは、と考える方もいらっしゃると思う。実際、ビタミンB12が不足しがちになるので、これはサプリメントなどで補うほうが良いらしい。ところが、日本ではB12が含まれているサプリメントは、極めて限定されているという。
 それどころか食生活の多様化が意外と認知されていない日本では、ベジタリアンの多くはろくろく外食もできないだろう。たとえば本書の著者は現在ニューヨーク在住とのことだが、この春から日本に帰国すると耳にしている。おそらく食生活には苦労することになるだろう。ここら辺りは、日本在住のベジタリアン全てが改善を望むところだろう。
 それはともあれ、ベジタリアンフードが体に良いことは確からしい。さあ、あなたはどうする?

もりやま・かずみち
サイエンスライター


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