衛星インターネットを体験した。
「上り」には通常の電話回線を使用するが、「下流」にはCSを利用して、1.5Mの速度を実現しようとするものである。確かに速い。びゅんびゅんである。業者では間もなくサービスを開始したい、と考えているらしい。問題はコストである。まず初期費用として、アンテナ+専用ボード(このボードに同軸ケーブルを突っ込んで使用する)で5万円。これは、個人ユーザーにも十分手が届く金額だと思える。
では維持コストはどうか。まず、プロバイダーへ繋ぐための電話料金がかかる。そしてプロバイダー利用料。そして、その上に衛星インターネット利用料がかかる、という計算になる。これは、一般ユーザーには結構厳しいコストである。速い回線を手に入れたからといって、利用時間が少なくなるわけではない。そんなことは電話線でネットを利用したことのある人なら誰でも納得してくれるだろう。「用があるとき」だけネットに繋いでいるわけではないのだから。
端的に言えば一般ユーザー、つまり自分で電話代やプロバイダーへの課金を気にしながら使っている人のことを考えて作られたシステムではない、というのが私の評価である。これの導入で一般ユーザーもコストを下げることができる、と思っているのは、専用線でしかネットを使ったことのない人だけだろう。もし、それを宣伝文句にして売り込めると思っていたら、痛い目を見ることになるだろう。
では、何の役にも立たないかというとそんなことはない。重たいページやソフトをダウンロードする時には、もちろん圧倒的な力を発揮する。また、例えば学校の授業での利用のような、一斉に同じページにアクセスする場合、空から降ってくるデータ流は実に強力な味方となるだろう。
またプロバイダー利用料と衛星インターネット利用料が一つのパッケージになるのもそう遠くないかもしれない。そうするとまた大きく事情は変わってくる。インターネット利用の選択肢がまた一つ、広がった。
(森山 和道/フリー・ディレクター/moriyama@moriyama.com/http://www.moriyama.com)