東京ビッグサイトで開催された「国際ロボット展」を覗いた。
巨大な会場では多くの産業用ロボットが腕を振り回していた。だが、思ったほどうるさくはない。技術革新の賜物だろう。どの腕も実に器用にくねくねと動く。写真撮影しようと思ったのだが、あの動きはビデオでないと表現は無理だ。それほど、どのロボットも有機的な動きをしていた。
しかしながら私はメーカーの人間ではない。一番興味を引かれたのは各大学・研究機関が出展していた「テクノプラザ」ブースだった。そこへ行くと、一つの展示(らしきもの)に黒山の人だかりがあった。本田技研工業が開発していた人型自立歩行ロボット・P−2である。TBSの番組「筑紫哲也・NEWS23」に立花隆氏と共に出演し、2足でなめらかに歩行するばかりか、押し合いまでやって見せたロボットである。カーペットの上を滑らかに歩き、階段をスムーズに昇り降りするその動きは、研究者でなくても人を「あっ」と言わせるに十分なものだった。
世界各国から取材の山が押し寄せているだろうそのロボットは、どちらかというと、無造作に展示されていた。周囲をとり囲んでいた人々が思っていたことは、同じだったろう。「歩いて欲しい」。
P−2は、TVでの印象よりずいぶんと小さくコンパクトだった。よく「ロボットの研究風景」に現れたケーブル、シリンダー、基盤の山とファンで覆われた内部は、すっかり隠されていた。スマートだった。本当に、すっきりしたボディだった。「完成品」を思わせた。
その横では、大学や研究機関の自律型ロボットのコーナーがあった。2足歩行研究者達のブースはなかった。私個人としては、2足歩行研究者の声こそが、聞きたかった。現時点ではあのロボットに関する資料は、ロボット学会誌に掲載された3ページの文章のみ。論文形式のものはまだない。あとは、ホンダが申請している特許から推測するだけである。現在、他の2足歩行研究者は、あのロボットに取りあえず追いつこうとしている。2足で歩行できれば、階段をスムーズに、しかも上に載せているものを安定させて昇り降りできる。福祉用として、あるいは災害救出用として、応用が考えられている。バッテリーの持続時間を伸ばすための工夫も、いろいろと考えられている。「機械の脚」がキャタピラのように見慣れる日は、案外近いのかもしれない。
(森山 和道/フリー・ディレクター/moriyama@moriyama.com/http://www.moriyama.com)