過日4月30日に、私は(株)デジタルウェアのもとで<ネットサイエンス・インタビュー・メール>というメールニュース・サービスを立ち上げた。科学者のインタビューをコンテンツとしたもので、無料購読できる。想定読者は研究者、大学生、科学ファン。創刊から2週間半現在で3000部を配信している。読者数は、現在なお増加中である。
なぜ無料なのか。「そこが理解できない」「あとで有料化するつもりなのか」、そう感じる方も少なくないようだ。個人的にもそういう声を頂いている。そこでこの場をお借りして「メールニュースという媒体」の特性について、ご説明させて頂きたい。
この媒体は、発行元である(株)デジタルウェアにとっては<企画広告>的位置づけなのである。まずタイトルそのものに、デジタルウェアが運営する科学技術ソフトウェア・データベースサイト名<ネットサイエンス>を冠している。もちろん、メールニュースそのものの中にも広告が入る。うまく発行部数が伸びれば、メールニュースそのものが有名になることもある。そうなると必然的に<ネットサイエンス>本体の名前も告知することができる。
というわけだ。現在のネットで、有料サービスで部数を伸ばすことは困難だ。よって「まず第一に無料」なのである。これまでのコメントでも何度か書いたことだが、「数が増える」あるいは「人間が集まる」と、それ自体が付加価値を持ち始める。その付加価値をあてこんだサービスなのである。
メールニュースには、アダルトをはじめとしたエンターテイメント系や、プレスリリースを右から左へ流すだけで「ニュース」と称している類のものが多い。コンピュータネタに全く関係ない、真面目なものは苦戦しがちである。本メールサービスは、コンテンツとしては極めて地味な「科学者インタビュー」を選びながら、程なく3000部の部数を達成することができた。もちろん、この程度の部数で満足するつもりはないが、コストなしの宣伝しかしてない割には上々のスタートを切ったと考えている。
そう、メールニュース発行のためのイニシャルコストは限りなく安いのである。ここにメールニュースの利点がある。実際の発行には有名な配信サイト「まぐまぐ」を使用しており、発行元のデジタルウェアが出しているコストは、編集人たる私を雇う金額と、インタビュー対象に払う謝礼金のみである。宣伝に関しては、私が適当な媒体にリリースを打っただけで、0コストである。それなのに、3000部の広告配布媒体を得たのである。完全に手前味噌であるが、つまりメールニュースという媒体を持てば、限りなく安いカネで自らを宣伝告知できる場を持てるということなのだ。
「そうか、じゃあ我が社も!」と考える方もいらっしゃるかもしれない。とはいうものの、もちろん、どんなコンテンツでも人が集まるわけではない。ネットは広大であり、それなりの中身がないコンテンツには今や誰も集まらない。私は「科学者インタビュー」を企画した。もちろん、元々<ネットサイエンス>が科学技術ソフトのデータベースであることが大きな理由の一つであったのだが、それにしても地味だと感じる方もいらっしゃるようである。そんなコンテンツで人を集められるのか、と。
だが私には、最初からある程度の勝算があった。「科学は人を集めることができるコンテンツである」という勝算である。その一部分は、今までの私自身のウェブサイト運営経験から来ている。だがそれよりも単純に、今のネットワークに接続している層はどういう層か考えてみれば、科学がコンテンツたりうることは明々白々だ、私にはそう思えたのだ。
こういうと大言壮語、自信満々のようだが、白状すればやはり不安はあった。現在、とりあえず最初期目標部数は達成し、ほっとしているというのが正直なところである。本メールニュースは一企業の企画広告であるが、同時に「科学はInternet上でどの程度の人間を集められるか?」という実験でもある。皆様の今後の応援を御願いしたい。
森山 和道/フリーランス・ディレクター
moriyama@moriyama.com/
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