「デジタル多チャンネル時代が来る」という。本当に来るのだろうか?
おそらく来るのだろう。既にその兆しらしきものはあるわけだし。
では、その時、テレビはどうなるのか?あるいは、どのようにして「多チャンネル時代」へと移り変わっていくのだろうか?
現在、新規にテレビ産業に参入しつつある、いわゆる「デジタル多チャンネル」を売り物にしているCS局は、極めて厳しい予算で番組を制作しようとしているらしい。勿論、予算が高いか安いかは、どんな番組を作ろうとしているかを問題にしないと話ができないわけだが、それにしても、びっくりするほど安い金額を耳にした(ただ、私は内部の人間ではないので確認したわけではない)。しかしながら、そういう噂がある、というのは事実である。そして実際の台所事情も、それほど楽なわけではなかろう、と思う。仮にもテレビ局と銘打っているわけだから、採算が取れないとまずい、ということもあるだろう。だが、安い予算で良い番組を作るにしても、限度がある。良い番組がないと、視聴者は掴めない。その辺、多チャンネルならではの視聴者戦略が必要になってくると思うが、どういう戦略を取っていくのだろうか?既存のテレビの真似では、絶対に先が見えている。
一方、「インターネット放送局」と称する、ネット上のストリーム技術利用サービスの方はどうか。こちらは、画質はメタメタ、音声さえも途切れがちの代物。現時点で、これだけで採算がとれると思っている人間はまずいないだろう。実際、そんなことは考えてもいないと思う。要するに、悪く言えば「お遊び」、良く言って「実験」に過ぎないのだ。その一方で、海外の番組など、これまでは見ようと思ったらかなりの手間が必要だった番組が(一部分にせよ)簡単に見られるのは意外と便利である。そういう意味では、かえってこちらの方が、「現実的」かもしれない。
こう考えてしまうと、「デジタル多チャンネル」の未来はあまり明るくないが、そちらへ流れていくことはまず間違いない。現在の地上波TV各局は、どこもマンモスタンカーのように巨大で方向転換すらままならない。しかしながら、「氷山衝突」の前に舵さえきってしまえば、先行していた小さなボート群を蹴散らすことなど造作ない。そう考えているのだろう。
小さいが先行したボートが勝つか、やはり大きなタンカーが勝つか。
小さい方に勝ってもらった方が、世の中面白くはなるだろうが、多チャンネルになると結果として広告は分散する。そうすると、結果的に勝つのはNHKなのだろうか?
(森山 和道/TVディレクター/moriyama@moriyama.com/http://www.moriyama.com)