会場には産総研、東大、川田工業、安川電機など関連研究機関の研究者に加え「HRP成果モデル」のデザインを担当する出淵裕氏も顔を見せた。我々世代には言わずとしれた『パトレイバー』のデザイナー、最近ではアニメ『ラーゼフォン』の監督として知られている人物である。
まずここから話をするのもどうかと思うのだが(笑)、出淵氏デザインとなる「成果モデル」は、2002年上半期中に2体製作される予定だという。
この写真のロボットは出淵氏デザインではないが、基本的にはこれをベースとして外装されることになる。
ただ「出淵先生のデザインをできるだけ生かす方向で」考えるために、微妙なデザイン変更は行われるかもしれないとのことだった。
なお、今後、搬送協調(人間とロボットで板を運ぶ。この辺をご覧頂ければイメージが掴めるだろう)や隘路歩行(足をクロスさせ、細い道を歩ける)、4センチ程度の不整地(凸凹道)歩行、5%程度の傾斜歩行、転倒制御、転倒回復などをやる予定だとのこと。腰をひねって体を丸くするとか、膝でとまるとか、起きあがるといった動作は、シミュレーションでは既に実際に行われている。
肩のところにピョコンと飛び出ている紫色の棒が無線LANのアンテナ。
そんなことやるならフォークリフトそのものを知能化すればいいんじゃないかと誰もが思うが、そうではなくて、汎用のヒト型ロボットに、そこらへんにある機械をそのまま操縦させることに意義があるのだろう(多分)。
右がおそらくバイラテラルの操縦システムだと思われる。隣に群がる記者たちを一顧だにせず研究にいそしむ(?)姿が男らしい。いやほんとに。国の機関で研究者と呼ばれる仕事に従事している人くらい、世俗の評価を気にせず、自分の信じた道を進んでもらいたいようにも思う。
「汎用的なPCにART-Linuxという自前のリアルタイムOS、自前のシミュレータ、制御プログラム、インタフェースボード、メカに至るまで痒いところに手が届くシステムなので、やりたい事が何でもできるんです」
おそらくHRP-1(ホンダP3)ではそうはいかなかったのだろう。
また、現場に産総研の様々な研究者がいたことから(ビジョン、運動制御、音声認識など)、HRP-2は今後、大学や研究機関、そしてメーカーの共同研究プラットフォームとしての機能が大いに期待・推測される。
ヒト型ロボット研究開発において、現時点では、国研・大学はメーカーに負けている(ように見える)。だがみんなが好き勝手にいじくり倒せるHRP-2を使いたおすことができれば、また別の方向でブレイクさせることができるかもしれない。今後を期待する。
身長58センチ、体重6.5キロ。制御系はOPEN-R。
38自由度、2CCD、7つのマイクロフォンを持つ。
内蔵ワイヤレスLANによって外部接続可能。
「実時間統合適応制御技術」によってリアルタイムに歩行パターンを生成。
障害物検出や10ミリまでの凹凸に対応した不整地歩行が可能。
10度までの傾斜面の歩行が可能。
外力に対応して転倒を避ける回避行動を実行可能(指で背中を押されたら、押された分だけトコトコと歩く)。
転倒時には衝撃回避姿勢を作ることができ、なおかつ関節を柔らかく制御し衝撃を緩和可能。
仰向け姿勢からの転倒復帰が可能(俯せも?分かりません)。
独立して動作できる5指を持つ(たぶんワイヤー駆動と書いてましたが、違うそうです。失礼しました)。
なお、そのほかリリースでもらったプレスキットには、スケボーに乗ってバランスしている写真がついていた。
これらの様子は動画でも見ることができる。
言葉を尽くすよりも、この動画を見てもらうほうがいいと思う。
目的や体制が違うわけなので、比べるのが悪いのかもしれないが、HRP-2が予定している動作のほとんどを、既に実現できてしまっている。
僕は発表そのものを全く聞いてないので実際のところはよく分からないが、資料を見た雰囲気だと、たぶんソニーが一番押したい(あるいはマスコミのくいつきのいい)ポイントは、「マルチモーダルヒューマンインタラクション」という技術だろうと思われる。
いわく、
個人検出、識別、学習、大語彙連続音声認識、未知語獲得、
記憶(短期記憶と長期記憶を持つそうです)に基づく対話行動制御
音声合成と歌声合成
などの技術が詰め込まれているとのこと。
要するに、主人の顔と名前を記憶、認識したりでき、歌を歌ったりできるわけだ。
なおこのロボットは高級車一台分くらいの値段で、今年内で市販を目指すらしい。
というわけで、全くの勝手ながらこんなアンケートを開始(02.3.20)。「SDR−4X、買いますか?」
SDR−4X