僕は正直いって眠かったのだが、やはりamazon.co.jpを実質上立ち上げた立て役者と風に聞く「西野さん」なる人物がどういう人か見たかったので、bk1の名物男・屋田さんと話を聞きに行った。
というわけで、久々に「森山和道の適当レポート」をお送りする。以下、客観的な「記事」ではなく、あくまで僕の主観的な「日記」に過ぎないことをお断りしておく。
安藤哲也
オンライン書店bk1(http://www.bk1.co.jp/)店長。
1962年生まれ。明治大学文学部卒。
85年、出版社(有紀書房→リットーミュージック)に勤務し、書店営業として全国1500軒の書店を歩く。その後UPUでは『エスクァイア日本版』の宣伝を担当。
94年、書店員に鞍替え。95年、「街の本屋の復権」を掲げ、千駄木・往来堂書店をプロデュース。
2000年、オンライン書店bk1に移籍。現職。
著書に『出版クラッシュ!?』(編書房)がある。現在、雑誌『ダ・ヴィンチ』『編集会議』に書評やコラムを連載中。
アマゾン・ジャパン ジェネラル・マネージャー。
1964年10月25日生まれ、36才。1988年明治大学経営学部経営学科卒業。
1994年から1995年にかけてのニューヨーク大学MBA留学中にインターネットと出会う。
大学卒業後、NTTにてシステムコンサルタントとして企業の通信システム構築を担当。
MBA留学を経たあと、国内第2位のポータルサイト“goo”及びシリコンバレーのベンチャー投資を担当する。
1998年にNetAge社を現社長と共に立ち上げ、取締役として様々なインターネットビジネスのインキュベーションに携わる。
「ビットバレー」を米国シリコンバレーに退避される日本におけるインターネットビジネスベンチャーの動きの代名詞として定着させた一人としても知られる。
「インターネット・エバンジェリスト」と称される西野さんは1999年、日本でのさらなるEC普及のためにAmazon.com日本版の設立を構想。Amazon.com CEOのジェフ・ベゾスに送った一通のメールを契機に、当時の仲間と共に綴ったその構想をシアトルに乗り込みAmazon経営陣に対してプレゼンを実施する。結果“Japan Founder”としてその後日本プロジェクトに従事して現在に至る。
Amazon.co.jpエディター。
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部社会経営学科卒。
大学では井関利明ゼミに所属し、マーケティングを専攻。
1996年ギリシャに留学。サントリーニ島のアクロティリ遺跡を発掘したスピリドン・マリナトスの娘、ナンノ・マリナトス教授の指導を受ける。
1997年、セガ・エンタープライゼス入社。
その後、編集プロダクション所属、フリーライターを経て日経ホーム出版社へ。主に雑誌の編集・ライティングに携わる。担当した雑誌は『東京ウォーカー』など。(中略)
現在は、Aamzon.co.jpのエディターとして、ビジネス、コンピュータ、語学書など実用書関連のページの編集を手がける。
安藤さんが喋ったことは、当然のことながら我々は何度も聞いていることだし、安藤さん自身もあちこちで書いたり喋ったりしているので省略。
外部の方にとって目新しい情報としては、一受注あたりの客単価が5000円だとか、カード利用が64%で代引きが27%だとか、5%が海外配送だとか、受注のうち46%が関東からで、しかもそのうち東京が23%を占めるとか受注のピークは火曜・水曜だといった話だろうか。ちなみに、アマゾンは木曜が受注ピークだと西野さんは言っていた。理由はどちらもよく分からないらしい。なお、bk1の受注は前月比117%の伸び率。
僕ら下っ端(かつ外部)の人間はどこからどこまでが対外的に話していいことなのかよく分からなかったりするんだけど、この程度までは話してもいいらしい。
まず最初に聞かれたのは、都道府県別の受注のはなしで、人口比だとはどうなるのか?という質問。これにはアマゾンの西野さんが「インターネット普及比率が分からないから、正確なところは分からないんですよ」と答えていた。
次は書誌メンテはどうしているのか?という話。これは版元から協力してもらうしかない、よろしくという話。
ブリーダープログラムとはなにか?という質問もあった。
また、TRCの人の話によるとbk1−TRC在庫が一万点増えるそうだが、それで<お取り寄せ>事故はどのていど減るのか、とか。
アマゾンの西野さんから、フィーリング検索ってどのていど使われているの?という質問もあった。
聞かれたのはだいたいそういうこと。
あとに残された土井さんがアマゾンの説明を始める。アマゾンはエディトリアルとビジネス部分がはっきり分かれているので、エディトリアルの部分を土井さんが説明するとのこと。
おおざっぱな部分──売れ筋がコンピュータとビジネス書だといった部分は、bk1もアマゾンも同じ。ただ、当然細かい部分は違う。語学、特に英語の本がいっぱい売れているとか、画像を出す場合、原則的に1ページ8つまでに制限しているとか、インターネット上の人は売り込みを好まないと考えているので、インタビューも客観的なものにしているとか。 bk1に掲載されているインタビューはやたら主観的なものがあるが、それとは対照的にアマゾンのインタビューがさらっとした感じがするのは、そういう理由だったわけですね。
僕ら(屋田&森山)がああやっぱりなと思ったのは、仕入れとエディターとは完全に分離しているとの話。土井さんは「仕入れといろいろぶつかります」と言っていた。あとでここの部分を聞いてみたのだが、西野さん曰く「葛藤どころか闘いだよね」という話。屋田さんはこれは全面的にアマゾン式のほうがいいと思ったみたいだけど、僕は一長一短あるなと思った。実際、アマゾンのコンテンツを見てると、表に出ている(数少ない)本がお取り寄せになっていたりするし。
そのほか、実用書は対象レベルを明確に、とか、ビジュアル本は「この本の中身を見る」で中の画像を紹介しているとかいった話があったけど、あまり驚くような話はなかった。僕はただあの軽快に動くシステムが羨ましくてしょうがないなあと思ったりしながら、ぼーっと聞いていた。
そうこうしているうちに今度は西野さんがアマゾンのビジネス面を解説。「質問があれば随時してくれ」とのことだったが、そういう雰囲気でもなかったので、蕩々と説明が流れた。
カスタマーレビューは一日あたり150件、という話とかもあったのだが、たぶん、僕も含めて一般の人が興味があるのはアマゾンのあのランキングだろう。あのランキングはいったいいつからいつまでの集計なのか? その疑問はこんかいの説明で取りあえずとけた。あれは、「過去24時間の注文数に基づいて算出され、一時間ごとに更新される」のだそうな。つまり、いま売れている本ということ。
僕はとにかくアマゾンのシステムが羨ましいのだが、なかでもいいなあと思ったのは、similaritiesという奴。「この本を買った人はこんな本も買っています」というのが出ることはアマゾンを使ったことがある人ならみんな知っていると思う。これは実際の購買データに基づいて出しているわけだが、アマゾンではこれだけではなく、「この商品に興味がある人は、こんな商品にも興味を持っています」というのが出せるのだ。これは、購買まで結びつかなくても、クリックはした、といったデータをもとにして出しているのだそうな。bk1でいえば、買い物かごに入れた、という段階までのデータを元にしているのだろう。こういうのが出せるようになればなあと思う。
最後に西野さんは、雪だるま効果(Snow ball effect)というのを紹介していた。これは、ポジティブなカスタマーレビューなどがきっかけでトップ100にランクインした本が、ランクインしたことによってさらにポジティブなレビューを集め、さらにセールスを伸ばしていく、といった現象のことを指していってるんだそうな。 これはやったなあと思う、という話だったのだが、僕は、そんなに手放しでは喜べないなあと思った。なぜなら、これは、単に「売れる本」がより売れる、という現象でしかないからだ。ま、売ってる側としては売れるにこしたことはないから、売れるのは大いに結構だし、それが良い本であれば、まったく文句はないのだが。
アマゾンの土井さんは、「そういうジャンルの本でも売れているので<売れないジャンル>とは思ってない」という答え。僕はそれを聞いて「あー、『大人の回答』だなあ。やっぱりマーケティングとかやってる人は言い方がうまいなあ」と思ったりした。
でも現実問題、配られたレジュメに掲載されていたアマゾンの月間ランキングに人文書や科学書は登場してないわけで、アマゾンといえども、やはりあんまり動かないジャンルであることは確かでしょう。よって、実質的な回答は頂けなかったというのが僕の率直な印象。こういうときに食い下がれないのが講演会形式の残念なところだ。まあ、ある意味ほっといても売れていくジャンルであるビジネス書担当とのことなので、しょうがないか。
大人の科学やロボットもの新刊、そして『虹の解体』をめぐる議論などなどのおかげで、bk1の科学書売り上げは徐々に、だが着実に上がってきている。だが、僕はbk1サイエンスサイトを、もっともっと科学書を売れる本屋にして行きたいし、科学書トータルの売り上げが上がってもらいたい。そのために、色々な人とマジにブレストがしたいんだけど、残念。
そのほか、西野さん曰く、bk1とアマゾンは細部を見ると非常に対照的な作りになっているという話があまり語られなかったり、土井さんがポロッと言った「一日一冊しか売れないような本でも」といった言葉に僕の後ろにいた版元のオジサンが「そんなに売れれば御の字だよ」と反応していたり、bk1の版元在庫の有無確認におけるトーハンルートにおける謎が浮上したり、屋田さんはやっぱり名刺を持ってきていなかったりといった小ネタはまだまだあるのだが、疲れてきたので終わり。まとめはありません。基本的にフランクな会で楽しかったです。もうちょっといろいろ話ができればもっと楽しかったけど。
ま、みんな適当に頑張りましょう。
溝口壮行会の話も書くつもりだったんだけど、もう眠いし疲れました。取りあえず写真でも、と思ったんだけど、よく考えたら写真がウェブにあがるの嫌な人もいるよね。というわけで雰囲気写真と、家の図解をする主賓・溝口氏の写真だけアップしておきます。
おまけ:スローシャッターでブレるサイトウマサトク氏。筆文字屋名刺がかっこよすぎ。
もう一つおまけ:タニグチリウイチ&おーかわ君。珍しい2ショット。