森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

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2011.02.11 雪 「SFが読みたい! 2011年版」 恐竜の指と鳥の指 エジプト

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▼一日中、雪。
▼朝日 スカイツリー、落雪防げ 仮設ネットや電熱線で対策

▼新刊。

  • 『「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言』(川口淳一郎/飛鳥新社)
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  • 『原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か』(吉岡斉/岩波ブックレット)
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  • 『エゾシカは森の幸 人・森・シカの共生』(大泰司紀之、平田剛士/北海道新聞社)
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  • 『SFが読みたい! 2011年版 発表!ベストSF2010〈国内篇・海外篇〉』(SFマガジン編集部/早川書房)
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▼何気なく『SFが読みたい! 2011年版』の、国内篇第一位になった『華竜の宮』著者 上田早夕里インタビュウ「SFを通して私が語っていきたいこと」(インタビュアー 日下三蔵)を読んでいたら、文中に自分の名前が出て来てちょっと驚いた。

発想の最後の一押しになったのは、こちらで森山和道さんが紹介して下さっている<パラサイト・ヒューマン>に関する記事です(http://robot.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/09/03/631.html)。

▼SF大会のレポート記事だから目に留まったのだろうか。ともかく自分の仕事が何らかのかたちで誰かの役に立てたのであれば、大変有り難いことだし、わざわざその話を挙げて下さったのは嬉しい。ここは普通であれば、前田太郎さんの<パラサイト・ヒューマン>というべきところだと思う。でもそこにレポート記事を書いただけのライターの名前を挙げてくれたことに尚更感謝したい。

▼そして改めて、ロボットだけでなく幅広く先端技術やサブカルチャー的な話題も扱えたインプレス「Robot Watch」が完全になくなったのは残念なことであるよ、と思うのだった。「Robot Watch」の記事のほとんどはニュース記事なのだが、案外古びない。いまでも結構、資料として使える。すっかり古びてしまう前に後継媒体ができるといいのだけど。自分で作るのは無理だということはこの一年くらいで分かってしまったので、他力任せになってしまうのだが……。

▼なお僕も例年どおり、一般科学書の(SF読者向けの)ベスト10を挙げている。科学書ノンフィクション紹介は「SFマガジン」のなかでももっとも読んでいる人が少ないページだろうなといつも思いながら書いているのだが、誰か読んでくれている人もいるのかもしれないなと思った。

華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
上田 早夕里
早川書房
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魚舟・獣舟 (光文社文庫)
上田 早夕里
光文社
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▼もう一つ、こちらは取りあえず忘れないようにメモ。

中央公論 2011年 03月号 [雑誌]
中央公論新社 (2011-02-10)

特集 復活!理系大国ニッポン
  理系的思考法でムダを省く ものごとを「構造」で考えよ 鎌田浩毅
  「はやぶさ」の快挙を次代につなげるために 対談 的川泰宣・川口淳一郎
  ロボットスーツ「HAL」開発・実用化への舞台裏 山海嘉之
  「新こたつ文明」を世界に輸出しよう —省エネ技術こそが日本の生きる道 安井 至
  理系政権の挑戦 科学・技術予算の「質」的強化をめざす 津村啓介

▼テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でサービスロボットの話。ほぼ予想通りの構成だったのだがいちおうメモしておく。
▼最初に登場したのはスキー場でソフトクリームを作るロボット「やすかわくん」。その後、積水ハウス静岡工場で活躍する安川電機のロボット。コメントしていたのは安川電機サービスロボット事業化 推進室長の松熊研司氏。
▼続けて、大阪守口市にあるパナソニックの病院。1月から運用開始した病院用の自律移動搬送ロボット「ホスピー」。「ホスピー」は薬剤部とナースステーションの間を薬を運ぶ搬送ロボット。パナソニックのロボット事業推進センター。洗髪ロボットやロボティクベッドなど。パナソニック生産革新本部ロボット事業推進センター 本田幸夫所長のコメント。
▼で、「サービスロボット分野では日本は技術力はあるが商品化が遅れ気味」といういつもの話で、つくば市での特区そのほかの動きが紹介された。
▼つくば市 産業振興課 大久保剛史氏。特区認定を受ければ、ロボットにナンバーが付けて公道に出られるかも。ロボット用ナンバープレートデザイン案の検討風景。つくば市 経済部 横山篤史氏。
▼最後に登場したのはNEDOプロジェクトの一環として、昨年末に25億円をかけてつくられてオープンした「生活支援ロボット安全検証センター」。18の装置で安全性試験が行われる。産総研の比留川氏のコメント。「各社が安心してビジネスができる環境を整えたい。国際標準も日本がリードしないといけない」という話。

▼でも、安全基準ができて、それを認証する機関ができて、それをクリアするロボットができたとしても、それが「売れる」かどうかはまた別の話。肝心なのは、その部分のはずなんだけど。

▼僕は早々に年末年始休みをとったので生活支援ロボット安全検証センターは見学していない。一度見てみたいと思っている。

▼東北大学 恐竜の前足の指と鳥類の翼の指は同じもの  150年続く指論争に終止符を打つ発生研究

恐竜の前足の3本の指は第1ー2ー3指であるのに鳥類のそれは第2ー3ー4指である、 というパラドクスが問題点として指摘されてきました。今回、東北大学大学院生命科学 研究科の田村宏治教授と大学院生・野村直生さんらは、発生学的解析から鳥類の翼の3 本の指が第1ー2ー3指として形成されていることを示し、始祖鳥の発見以来150年に 及ぶこの問題を解決しました。

これまで見落とされていた、発生初期に指原基の位置がずれるという事実を発見。鳥の発生の教科書を塗り替えて、残っていた謎を解決した。面白い。

▼読売 がん増殖抑制の遺伝子を確認、治療法・新薬に道
▼読売 脳梗塞もっと救える…発症6〜8時間でも可能に
▼読売 タクシーもEVの時代、プロジェクト本格始動

▼WEB本の雑誌 電子書籍が描く未来の読書像 第一回:西田宗千佳さん

西田 そう。結局電子書籍端末を使うのは誰かという話になると、どう考えても普段から本を読みつけている「本読み」の人たちなんです。

内沼 それこそこの『Web本の雑誌』の読者は、そういう人たちが多そうですね。

西田 ですよね。本が好きでWebへの親和性も高い。電子書籍端末をまず手に取るのはそういう人たちのはずです。じつは昨年までの日本のガラケーを中心とした電子書籍市場はBL(ボーイズラブ)作品の読者に支えられてきていました。ところがソニーの人に電子書籍販売サイト「Reader Store」の売り上げの傾向を聞いてみると、まったく動きが違うそうなんです。動いているのは文芸とビジネス書で、アダルトめいたコンテンツの動きがほとんどない。しかも発売1〜2週間という段階で、10冊、20冊と買っている人が相当数いて、3ケタ買った読者もいるというんです。

電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ (ビジネスファミ通)
西田 宗千佳
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▼朝日 めざせTOEIC800点 三井住友銀、総合職全員に
▼深夜未明になって、エジプトのムバラク大統領が退陣したというニュースが入って来た。見覚えのある名前と顔がカイロからレポートしていた。

Written by 森山和道

2月 12th, 2011 at 9:00 am

科学書総括2009(2008.11〜2009.10)

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早川書房「SFマガジン」別冊「SFが読みたい」掲載

  • 『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(ダン・アリエリー/早川書房)
  • 『人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く』(ティム・ハーフォード/ランダムハウス講談社)
  • 『地球温暖化の予測は「正しい」か? 不確かな未来に科学が挑む』(江守正多/化学同人)
  • 『生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則』(ジョン・ホイットフィールド/化学同人)
  • 『ハチはなぜ大量死したのか』(ローワン・ジェイコブセン/文藝春秋)
  • 『ミラーニューロン』(ジャコモ・リゾラッティ、コラド・シニガリア/紀伊國屋書店)
  • 『46年目の光 視力を取り戻した男の奇跡の人生』(ロバート・カーソン/NTT出版)
  • 『時計の時間、心の時間 退屈な時間はナゼ長くなるのか?』(一川誠/教育評論社)
  • 『認知哲学 心と脳のエピステモロジー』(山口裕之/新曜社)
  • 『脳科学の真実 脳研究者は何を考えているか』(坂井克之/河出書房新社)

 二〇〇九年は、ブームである環境やエコ関連本、脳科学本、ノーベル賞本のほか、そして人間の行動原理を探る行動経済学やそれと関連したニューロマーケティング関連本が目立った一年だった。いっぽう脳科学関連に関しては、行き過ぎた一般化や過剰な宣伝的表現を批判する研究者達からの出版が続いた。これまでは笑ってみたいたが、我慢ならなくなったということだろう。

 売り上げ的には出版不況と言われる中、ある程度売れた本もあったが、ここでは特に取り上げない。いっぽう身近になったかどうかは別だが民間宇宙船を使った宇宙観光旅行関連の出版物も複数刊行されたことは、本誌には記載しておきたい。「過去」に抱いた「未来」の夢は、「現在」において、どこまで現実化するのだろうか。

 さて、それぞれの本についてざっと紹介する。人間の行動原理を、行動経済学や実験心理学、脳科学から探る本については対称的なタイトルの『予想どおりに不合理』と『人は意外に合理的』をあげておく。

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
ダン アリエリー Dan Ariely
早川書房
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人は意外に合理的 新しい経済学で日常生活を読み解く
ティム ハーフォード
武田ランダムハウスジャパン
売り上げランキング: 44093

 同時期に刊行されたこの二冊は書店でも並べて販売されていることが多かった。内容的にはどっちもどっちで、合理的な面に目をやるかそれとも別の面に目をやるか次第で、結論が大きく変わってくることが良く分かる。両方読むのがベターだ。

 地球温暖化あるいは気候変動問題については『地球温暖化の予測は「正しい」か?』をあげておく。気象シミュレーションの立場から、予測とはどういうものなのかが分かりやすく丁寧に語られている。取りあえずこの本を読んでおかないと議論にも立てない。

 『生き物たちは3/4が好き』は、複雑で例外も多い生物の世界に、規則性を見つけようとする人々の物語だ。たとえば動物の毛細血管の数は体の大きさに比例するのではなく、より大きな動物の血管数はより小さな動物よりも相対的に少なく、体重の3/4乗に比例しているという。そして動物の代謝量は毛細血管の数に比例する。よって、動物の代謝率は体重の3/4に比例する。体表面積や筋肉の量ではなく、毛細血管の数とその表面積が動物の体の大きさと代謝率の関係を決めるのだ。この説の真偽はまだはっきりしていないそうだが、示唆に富んだ内容は面白かった。

生き物たちは3/4が好き 多様な生物界を支配する単純な法則
John Whitfield
化学同人
売り上げランキング: 205333

 突然いなくなってしまったハチの原因を探る『ハチはなぜ大量死したのか』も同様に、まだはっきりしない原因について考察した本だ。この本によれば、人間の経済活動に組み込まれたミツバチがいなくなってしまった理由は、大規模農業によってあまりにも単調化してしまった畑のせいだということになる。

 何が起きたのかはまだはっきりしない、だが何かが起きている。いま何かしなければ手遅れになる—-。そんな感情が行間に噴き出している。

ハチはなぜ大量死したのか
ローワン・ジェイコブセン
文藝春秋
売り上げランキング: 59075

 『ミラーニューロン』は、自分の行動と他人の行動、双方に反応するミラーニューロンを発見した研究者本人による本だ。残念ながら発見当時の物語は、この本には全然登場しない(他者が書いた本にはよく出てくる)。だが、慎重な筆致ながら、興奮する成果を今も出しつつあることが分かる良書である。ただし読了するにはそれなりの読書力が必要だ。

ミラーニューロン
ミラーニューロン
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ジャコモ ・リゾラッティ コラド・シニガリア
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 38385

 『46年目の光』は三歳に失明したが幹細胞移植によって四六歳で視力を取り戻した男性、実業家マイク・メイ氏の話だ。彼は視力を取り戻したが人の顔などの判別は困難で、あたかも外国語を話すときのように頭のなかで考えて、意識的に、視覚で得た情報を処理する必要があったという。だがもともとアクティブな人物だったメイ氏はそんなことにはめげない。、自分自身がこれまで身につけていた感覚を再び呼び覚まして、それらをサポートする新しい感覚として視覚を使うように訓練していく。このへんがヒューマンドキュメントとして面白い。また、将来の技術によって我々に五感以上の感覚が得られるようになる可能性もあると思うが、そのときには皆がメイ氏のようなトレーニングを重ねる必要があるのかもしれない。

46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生
ロバート・カーソン
エヌティティ出版
売り上げランキング: 74237

 『時計の時間、心の時間』は、心が知覚している時間の感覚とは実は錯視の集合体のようなものに過ぎないことを教えてくれる一冊である。私たちは、たとえば時計が刻むような機械的な時間というものに馴れてしまっているが、それは人間が作り出したものである。確かに物理的な時間次元は存在するものの、それをどのように知覚するかはまた別の話である。この本や他の本を読むと、おそらく動物は、自分自身の入力と出力、つまり自分自身の身体感覚のみを基準とした独自の時空間の座標系を作っており、それをベースに時空間の知覚を行っているらしいことが分かる。

時計の時間、心の時間―退屈な時間はナゼ長くなるのか?
一川 誠
教育評論社
売り上げランキング: 225208

 おそらくこの問題は今後ますます重要になると思う。脳の働きは情報処理ではないかもしれないと説く『認知哲学』と合わせてお読み頂きたい。様々な思い込みから自らを一度解き放って考え直そうという試みが、若い世代の研究者たちから生まれ始めている。実に面白い。

認知哲学―心と脳のエピステモロジー (ワードマップ)
山口 裕之
新曜社
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 行き過ぎた通俗脳科学や脳ブーム批判の中からは、『脳科学の真実』をピックアップする。脳科学風の言葉を使って従来のハウツーに有り難みを持たせる流れを批判するだけではなく、「脳ブーム」に意識的か無自覚かを問わずに乗っかている脳研究業界だけでなく、「研究」という営みの本質的な部分にも批判的視線を向けている。研究者たち自身があまり自覚的でない部分にも向けられた批判的考察は鋭い。著者は「脳科学風造語」と脳研究で使われる造語の区別は実はそれほど簡単ではないし、両者の距離はそう遠くないと指摘している。多くの人に読んでもらいたい好著である。

脳科学の真実--脳研究者は何を考えているか (河出ブックス)
坂井 克之
河出書房新社
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Written by 森山和道

12月 7th, 2010 at 11:42 pm