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書評『脳科学の真実』『新しい霊長類学』『雑食動物のジレンマ』『認知哲学』
日経サイエンス2010年1月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
脳画像を使って心の働きを探る研究者が「脳科学ブーム」を検証した本が『脳科学の真実』だ。脳科学風の言葉を使って従来のハウツーに有り難みを持たせるマスコミ的脳科学を批判する、ただそれだけの本ではない。著者の批判的視線は、受け手側の一般人や「脳ブーム」に乗っかる脳研究業界だけでなく、研究という営みの本質的な部分にも向けられている。ここが面白い。
研究費を取り巻く問題や研究発表のあり方など、本書で取り上げられている問題点のなかには、当事者である研究者たち自身は実際にはあまり自覚的でない部分も少なくない。著者は「脳科学風造語」と脳研究で使われる造語の区別は実はそれほど簡単ではないし、両者の距離はそう遠くないと指摘する。色々と考えさせられるし、著者の筆致も好感が持てる。多くの人に読んでもらいたい一冊である。
河出書房新社
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人間と人間以外の動物の知性の一番の違いは「想像する」能力だ、と『新しい霊長類学』で松沢哲郎氏は述べている。900個体以上のサルやチンパンジーを飼育、研究している京都大学霊長類研究所の研究者たちが100の質問に答えた本である。進化・形態、生活と社会、人sとのかかわり、認知・思考能力、生理と病気、遺伝とゲノムと広い話題が扱われている。どこからでも読めるので一晩にいくつかずつ読んでいくといいかもしれない。問いも色々だが答えの深さも多様だ。それは分かっていることのレベルが違うからだが、答えの書き方から執筆者(回答者)それぞれの個性も垣間見えて、それもまた面白い。
講談社
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キノコの選び方は分からないそうだが、サルは基本的に自分の味覚に従って食物を選んで食べているという。では人間はどうか。雑食性で何でも食べる、そう自らを位置づけているものの、驚くなかれ、今の人間はトウモロコシばかり食べているのだと『雑食動物のジレンマ』は指摘する。食や農業をテーマにしているジャーナリストが現代社会における食物連鎖を辿り直して、食、そして人と自然環境の関わりを考えた本だ。著者は自ら銃を持ち、狩猟やキノコ狩りをする。農場で働き仕組みを目の当たりにする。そして家畜飼料だけでなく、驚くほど多くの加工食品原料となっているトウモロコシ畑の姿を探り、それが原材料の多くを占めるハンバーガーを車の中で食べる。人間は今や究極の「工業食動物」なのだ。ちなみに米国では食事の19%が車中で食べられているという。
もったいぶった書き方は少々気になるし、考え方の違いに乗り切れないところもある。だが食の問題はやはり目を背けてはいけないと思う。ただ問題に目を向けたからといって、すぐに現実の生活を変えられるわけもない。多くの人がそのジレンマに直面し食卓でしばし何かしら考えること、それがおそらく著者の意図なのだろう。
東洋経済新報社
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東洋経済新報社
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考える。でもそれはどんな現象なのだろうか。『認知哲学』は、心と脳の問題について「科学の哲学」の視点から考察した本だ。こういうと、ああまたいつもの本かとこの本も思われるかもしれないが、この本もまた、ありがちな本とはちょっと違う。「意識とはどんな働きなのか」という問題について、基本概念がどのように構成されているのかということから考察を深めている。脳がしていることは情報処理だと考えている人は少なくないと思うが、その見方自体が思い込みだという。後は本書をお読み頂きたい。読後、必ず発見があると思う。
新曜社
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評『月のかぐや』『海の色が語る地球環境』『大腸菌』『完全なる証明』
日経サイエンス2010年2月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
『月のかぐや』に収録された、月周回衛星「かぐや」の地形カメラによる写真は月面世界を克明に捉えている。
空は暗黒,月面は灰色,色がない世界だ。だがよくよく見れば、月面も表情豊かだ。盛り上がったクレーターの縁、中央丘の形状,噴出物が堆積した様子、不思議なチェーンクレーター,どこまでも平らに溶岩で満たされた「海」など、空から月面観光している気分で月の様子を堪能できる一冊だ。
レーザー高度計によって月の高度差は20km近く,地球や火星よりも起伏に富んだ地形であることが分かった。マルチバンドイメージャは鉱物の違いを見分けた。リレー衛星 「おきな」は月の表裏の正確な重力分布図を作るのにも役立った。何より、精度を揃えて全球の地形データを取ったことが大きな意味を持つ。今後の研究に期待したい。
月には色がないが、地球には様々な色がある。海洋汚染の調査研究を行っている著者による『海の色が語る地球環境』は、まず、海の色と海洋環境の関係について述べている。
たとえば、エメラルドグリーンの珊瑚礁には生きた珊瑚はいない。珊瑚が死んでできた白い砂浜の海が、あの色に見えるのだ。また、透明度が非常に高い海は、真っ黒に見える。光が途中で散乱されないため、吸収されて戻って来ないからだ。深さ千メートル以上になる黒潮もやはり黒く見える。紺碧の海には栄養が少ない。プランクトンが大発生すると赤潮になったり、緑色の藻が大発生するのは,日本人なら誰しも身近に体験している。
海の色が想像以上に様々な表情を見せているという話そのものが面白く、引き込まれた。水の色で、その環境がある程度分かるのだ。後半の水循環の話も面白かった。
PHP研究所
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地球が色に富んだ星であるのは生物のおかげである。そして生物は、想像以上にダイナミックな存在だ。例えば細菌の世界では、互いに遺伝子をやりとりするのが当たり前らしい。
大腸菌を案内人にして生物の世界の本質を探ろうとした本が『大腸菌』だ。著者らの表現によれば生物はオープンソースだということになる。オープンソースとはIT業界の言葉で、ソースコードを誰でも自由に改変したり再配布できるようにしたソフトウェアのことだ。生物の系譜というと脈々と繋がる系図のようなものを想像する人が多いと思う。だが実際は網のように繋がったものかもしれないのだ。これによって生物の進化は従来考えられていた以上に速く、かつ、ややこしいものになっている。
実際に新しい大腸菌株を調べるたびに、未発見の遺伝子が数十、数百と見つかっている。大腸菌全体の遺伝子集合は「パンゲノム」と呼ばれ、パンゲノム全体で考えると遺伝子数はヒトゲノム以上になりそうだという。
日本放送出版協会
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オープンというと数学の世界もそうかもしれない。だが『完全なる証明』から感じたのは、月面のように灰色と黒に閉ざされた色のない世界、閉塞感だった。本書は、ポアンカレ予想を解き明かしたが、その後、姿を消した数学者ペレルマンの姿を描いた本だ。著者はペレルマン本人に会う事ができず、周囲の関係者と歴史から彼がどのように考える人なのかを浮き彫りにしていく。ポアンカレ予想そのものについては少ししか触れられておらず、彼が賞金100万ドルを拒否した理由も、いま一つ納得がいかない。だが、一人の人間の業の深さを感じさせる読後感だった。
(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『日本人とナノエレクトロニクス』『強い者は生き残れない』『統計数字を読み解くセンス』『大人の宇宙図鑑』
日経サイエンス2010年3月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
携帯電話にネット、デジタル放送と情報通信技術の世話にならない日はない。猛烈な速度で動作する高速トランジスタは日本人技術者による発明だ。『日本人とナノエレクトロニクス』は5人の日本人研究者に焦点をあてて、電子デバイスの原理や発想、発展の歴史や可能性を解説していく一冊だ。量子細線や量子ドット、フラッシュメモリやスピントロニクスなどなどの技術開発の歩みが丁寧に解説されている。
ナノスケールで加工された構造からなる集積回路は、既存の人工物とは本質的に異なる複雑さを持ち、自然界にない機能を発揮する。どんな構造を作りこめば新機能を創出できるのか。そこに苦労と醍醐味があるのだが、最近は、ものづくり系は人気がないという。本書は、新技術を開発する意義とやりがいを語る研究者たち自身の言葉で締めくくられている。
技術評論社
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今は製造業に限らず生き残りが厳しい時代だ。単に適応度が高いものが勝ち残るわけではないと説く『強い者は生き残れない』によれば、最後まで生き残るのは他者と共生・協力できるものだという。これは進化という現象を、不確定で変化する環境に対する対応と捉えて解説した本である。生物進化全体を、変動する環境そのものからの脱却、そして共生による絶滅回避という二つのビジョンで描き出している。著者自身が認めるように、まだ推論レベルの仮説も多々含まれているのだが、進化全体を見渡すための見方を一般書で示し、一気に説くためにはこれもまたありだと判断したのだろう。数学しかできなかったという著者のユニークな経歴が書かれた「あとがき」も面白い。
新潮社
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この本にも出てくるが、「マーフィーの法則」というものがある。「傘を忘れたときに限って雨が降る」といった類の、失敗してはいけないときに限って失敗する、という意味の経験則のことだ。実際にはそうでもないのに「ああ、あるある」と思ってしまうのは、人間が、失敗を特に強く記憶してしまうからだ。記憶や認知システムがこうなっているのは、同じ事をまた失敗しないようにするためだろう。
直感と現実の確率統計は大きくずれていることがあるのだ。だからこそ確率や統計の考え方は重要なのである。『統計数字を読み解くセンス』のような本は、まさに自分のような人間のためにある本だ。何となく知っている気分になっている分布や相関の話、そして標本や予測とは何ぞやといった事柄が、年収と血圧の関係や占いなど、身近な例で解説されている。
ただ読み終わったあとも、自分はどうも統計というものがよく分かっていないような気がする。統計数字を読み解くセンスが身に付くまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。
化学同人
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予測とは将来起こるだろうことを現時点までの情報で説明しようとする試みだという。だが「予想」であれば、もうちょっと自由に想像してもいいだろう。『大人の宇宙図鑑』は4部構成で現代までの宇宙開発や宇宙探査の歴史と、今後の宇宙進出を描き出す。エウロパの海に潜る探査機や宇宙発電所、火星の植民都市や宇宙帆船、移民船などなどがCGで描かれている。まさに大人向けの絵本だ。
「はじめに」には「正確な科学予測」と「大胆な予想」で未来の姿を描いたとある。二つが両立しているかどうかは別にして、こういう本はやはり楽しい。夢ばかり語るのは無意味だが、次世代を育むためには、現代を生きる人間が夢を持つことも必要なのである。
日経ナショナルジオグラフィック社
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『物質のすべては光』『太陽の科学』『新企画は宇宙旅行!』『笑い脳』
「日経サイエンス」2010年4月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
クォークはグルーオンという粒子でやりとりされる「強い相互作用」で結びついている。1970年代に、理論物理学者ウィルチェックは「強い相互作用」が近距離では弱くなる性質「漸近的自由性」を発見し、後にノーベル物理学賞を受賞した。彼による著書『物質のすべては光』は、宇宙のありようと質量の起源についての本だ。
素粒子物理学や宇宙論がらみの本を読むと、物質や空間の正体とは何なのかと考えずにはいられない。考えれば考えるほど分からなくなるのだ。本書によれば質量とは、クォークの色荷によるグルーオン場の擾乱と、対を為すクォークと反クォークとの間の、量子力学的なせめぎあいから生まれるものだ。そして空間は空っぽの容れ物ではなく、著者らが「グリッド」と呼ぶ実体であり、むしろ物質のほうがその一側面に過ぎない。そして我々が暮らすこの宇宙は、ある種の超伝導体のようなものなのだという。
本書のテキストは軽やかでジョークに満ちている。しかし内容そのものがかなり難しく、正直な話、ジョークどころではない。だが読んでいるとわくわくしてくる本だ。考え方や論理の流れをグルッと大きく変えることで、世界の見え方がいきなり変化することを読者に体験させてくれるのである。目に映る世界は、単に我々にそう見ているだけで、本質は別物かもしれない。その不思議の醍醐味が感じられる本だ。本書単独で理解することは難しいと思うので、類書も合わせて読むことをおすすめしたい。
早川書房
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性質はだいぶ違うが、『太陽の科学』も類書と合わせて読んだほうがいいかもしれない。こちらは磁気のリコネクション(つなぎかえ)をキーワードとして、現在の太陽物理学、シミュレーション、そして観測衛星「ようこう」や「ひので」を使った知見を解説した本だ。
カルチャースクールで行った講義をもとにしているのだが、やや不親切で話の流れを把握しにくいところがある。だが内容そのものは面白い。巨大なスケールで絶えず脈動し、磁場のエネルギーを放出させているダイナミックな太陽の姿には、ただただ圧倒される。太陽活動は磁気嵐をもたらし、時として大停電に繋がるし、太陽活動変動は地球全体の気候を変える。分かっていることだけではなく、メカニズムが未解明の現象についても書かれている点が嬉しい。
日本放送出版協会
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遠い将来には、宇宙に出て星々を見ることもできるのだろうか。せめて弾道飛行だけでもしたいところだが、それすら、なかなか難しい。『新企画は宇宙旅行!』は旅行会社JTBで宇宙旅行パックツアーを立ち上げようとした顛末をライターが取材して書いた本だ。内容はだいたい想像通りである。
敢えてこの本を紹介するのは、宇宙開発業界からは大変なことだと言われた宇宙旅行企画が、旅行業界からは単なる旅行だよね、と言われたという話が収録されていたからだ。この、業界内外の温度差は面白い。
面白いと感じたとき、人は笑う。まだ始まったばかりの笑いの脳科学の本、『笑い脳』によれば笑いは自己報酬だという。また、笑いは伝染する。人を笑わせ、笑顔を見る。するとその笑顔が報酬として働く。そして自分も笑い、また相手も笑う。そういうものらしい。他にもマンガを見せたり、擬態語を聞かせたりする実験の話が収録されている。
一言で「笑い」といっても色々な種類がある。脳のなかの様々な機構が笑いに関わっているからなのかもしれない。どうせ笑うなら常に心の底から笑いたい。
岩波書店
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『性器の進化論』『人はなぜSEXをするのか?』『コンドームの歴史』『人間らしさとはなにか?』
「日経サイエンス」2010年5月号「森山和道の読書日記」掲載
詩的な表現を使えば恋や愛、ざっくりいえば繁殖活動や生殖行為、すなわち性行動は個々人にとっても、動物としてのヒト全体にとっても意義深い。だが未解明のことがらが多い。
『性器の進化論』は恋愛中の脳内物質の変化や活動をいくら調べたところで愛を理解することはできないという。そして、性現象のなかで具体的に捉えやすく他の動物との比較も容易なのは生殖器、性生理、性行動の道筋だとして、ヒトの「性複合体」の進化を追った本である。
なるほど確かに、ちゃんと探れるところから探っていくこのアプローチは科学的だ。読んでいても安心感がある。一方、この分野に興味がある読者には目新しい話がやや少ない点が残念ではあったが、著者は最後に、ヒトのメスは受精後に生殖管のなかで、胎児に対して何らかのメカニズムで淘汰をかけているのではないかと論じている。これは実に興味深い可能性だ。
化学同人
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読書していて面白いのは『人はなぜSEXをするのか?』のほうかもしれない。セックスに関する人の外見や生理の不思議や、文化的な話題や最近の脳科学や薬理学そのほかの研究トピックスまでが、実に幅広く、そしてバランス良く書かれている。どんな物知りの読者でも「ねえねえ知ってる?」と他人に披露したくなる新トピックスが見つかるだろう。筆者としては両方合わせて読むことをおすすめしたい。
アスペクト
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人前では背表紙を広げて読みにくい本が続くが『コンドームの歴史』は、まさにそんな、隠語で呼ばれ続けて来た道具コンドームに関する本だ。『人はなぜSEXをするのか?』にも出てくる話なのだがエジプト人はワニの糞と蜂蜜を混ぜて女性の膣に入れて妊娠を防いでいたという。紀元前1850年のパピルスに書かれているのだそうだ。そしてコンドームも、ゴムが使われるよりもずっと前からあった。多くは動物の腸だったようだが、中には戦争相手の兵士の筋肉を使ったものまであったそうだ。
これは要するに、コンドームを一つの象徴として、生殖のコントロールと性病、そして文明の発展の歴史を追った本だ。といっても本そのものは堅苦しいわけではない。むしろ気楽に読むタイプの本である。だが読了後ふりかえって考えてみると、人間という存在の、性に対する複雑な社会的態度の変化に思いを馳せずにはいられない。
ヒトは生殖活動を自らコントロールすることに多大なエネルギーを使ってきた。それもまた、人間という動物の特徴なのだろうか。
人は動物でもあり、特別な存在でもある。分離脳の研究で有名なガザニガの『人間らしさとはなにか?』はヒトのヒトらしさについて、脳科学の観点から論じ、未来を展望した本である。
一言で脳科学といっても広い。だがこの本は、よくこんなに広くフォローしたなと感心するくらい、本当に色々な話題を詰め込んでいる。細かい話は主に参考文献リストに任せられているため、本文は至って軽い調子で読める。著者のジョークも多い。だが言語や社会行動、倫理や道徳、共感、芸術の神経基盤、心や意識の問題など人間の本質について、そして人類の未来に関わる人工知能や遺伝子操作の可能性など、それぞれの話題に関して突っ込んだ議論が展開されている。各話題は互いに相補的で、読後、間違いなく新たな視点を得られると思う。何より、自分でもこの本を出発点としてより深く考えたくなるだろう。おすすめだ。
インターシフト
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『音のイリュージョン』『粘菌』『日本近海に大鉱床が眠る』『土の文明史』
「日経サイエンス」2010年7月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
『音のイリュージョン』は聴覚の情報処理の本だ。ガヤガヤうるさい所でも人と話ができるのは、音素修復と呼ばれる知覚の補完が行われるからだ。声に限らず、連続した音の一部を雑音で隠しても、連続した音である可能性が高いと脳が見なした場合は、音は補完される。連続聴効果という。
面白いことに、滑らかに上昇する音と上がった後に下降する音をそれぞれ真ん中で雑音でマスクしても、両者とも問題なく聞こえる。雑音前の音は同じなのに、あたかも雑音後の音の変化を予測したような知覚補完が起きるのだ。実際には知覚は現実からは遅れているのだが、それを我々は自覚できないのだと考えられる。
知覚は単純な物理的な測定器ではない。知覚は周囲の時空間で何が起きているのかを把握するために存在する。音は単なる空気の振動ではない。脳のなかで生成されている。
岩波書店
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知覚をはじめ脳のほとんどの情報処理は意識されないが、神経細胞のネットワークで生み出されている。普通、細胞は目に見えないが、粘菌は単細胞だが数センチに巨大化して動き回れる。『粘菌』は、単細胞生物にも知性、情報処理能力があるとし、細胞の原形質流動、身体運動そのものが情報処理を担っているのではないかと述べている。生物を素材にしたネットワーク科学の本でもある。
情報処理とは何かという定義の問題もあり、肝心の粘菌の知性については今ひとつ飲み込めないところもあった。だが、粘菌がどんな餌が好きかといった研究の細かい苦労話や、まだ練りきられていない考え方もそのまま書かれていて、面白い。確かに、細胞運動そのものが原始的知性であることは確かなのだろう。
PHP研究所
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『日本近海に大鉱床が眠る』はタイトルだけだと内容を誤解する。前半2/3はもっぱら基礎科学としての海底熱水鉱床発見物語だ。読者は、そんなことあり得ないと思われていた海洋底拡大の発見から、「しんかい2000」を使った実際の海底熱水鉱床の発見に至るまでの物語を、研究者自身による描写で読むことができる。
これだけでも本書は稀有な一冊と言えるのだが、さらに後半は資源としての海底熱水鉱床の可能性を巡る各国の動向へと続く。日本の排他的経済水域の海底にはレアメタル資源が眠っているのだ。ただ御存知のとおり熱水鉱床は光合成に寄らない特異な生態系が生きる場所でもあり、それを破壊するわけにはいかない。よって掘削資源としては既に活動をやめた熱水活動跡が狙い目になる。既に利潤を求めて動いている企業もあり、研究者たちも否応なく資源開発の流れのなかで立ち位置を求められることになる。地質学的な知識がないと読むには苦労する本かもしれないが、今後、日本が進めるべき海底鉱床学の方向性も含めて非常に面白く、必読の一冊と言える。
技術評論社
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資源が生成されるよりも速く消費されている限り、いかなる形であれ、奪い合いになる。国の資源は、鉱物だけではない。『土の文明史』は、土壌に注目して文明の衰退を見た本である。イースター島が環境破壊で滅んだ話は有名だ。土壌を保全することの重要性は既に理解されている。だが今でも年間推定240億トンの表土が失われている。土壌は生物によって生み出される貴重な資源なのである。だが鋤の発明によって斜面の耕作が始まって状況は一気に悪化した。人間の知性は環境をようやく理解しはじめた。いま少しの猶予を自然が許容してくれればいいのだが。
(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『不運の方程式』『超高層ビルのしくみ』『数字で世界を操る巨人たち』『質量はどのように生まれるのか』
「日経サイエンス」2010年8月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
科学ネタはどこにでもある。『不運の方程式』はツイてないサラリーマンの一日を題材に、38の雑学を展開する本だ。電子レンジを爆発させ、鳥のフンを浴び、鞄を忘れ、ガムを踏んづけ、靴を壊し、会議に遅刻し、コンピュータ・ウイルスをまき散らしたり風呂場で滑ったりと、とにかく散々な目に会う主人公の一日の出来事を枕にして、様々な蘊蓄が語られる。
身近な出来事を科学の見方と知識で深堀りする、言ってしまえば雑学本なのだが内容は意外と深い。またテキストが軽快かつユーモラスなので、一気に楽しく読めた。著者は常に「どうしてそうなったんだろう」と考えることを読者に勧めている。あるいは本書を通じていわゆる理系の思考の癖を覗いてみることもできるかもしれない。
新潮社
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いま東京では「東京スカイツリー」が建設中だが、何度見ても、高層建築の上で作業するクレーンはどうやって持ち上げて下ろすのかと不思議に思う。『超高層ビルのしくみ』のような本で解説を読み、理屈が頭で分かったあとも、その疑問は消えない。
この本は超高層オフィスやマンションの建築に関する最新技術が詰め込まれた本である。建造や建材、インフラ設備の詳細だけではなくメンテナンスや廃棄などについても紹介されている。
延べ床面積10万平方メートルのオフィスビルでは一日あたり約4万kwh、一般家庭4000世帯分もの電力が消費されるという。風圧に耐える特殊ガラスに覆われた超高層ビルは、縦に伸びた一つの街なのだ。それがくまなく紹介されているのだから、面白くないわけがない。揺れや空調などにおいて異なる性能が求められるマンションとオフィスビルの違いも面白かった。
高層ビルに入る時にはカードをかざさなければならないところが増えた。ピッと音がするたびにそれがデータになる。監視カメラもこちらを見ている。仕事中ならネット上のログも集められているだろう。我々の行動がデータとして収集され、数学の力で情報となり、業務効率化、顧客の購買意欲促進、選挙、テロ対策、医療、恋人探しに使われるようになっている。これが『数字で世界を操る巨人たち』の内容である。莫大なデータを集めることで、人間の行動にパターンを見出し予測できるようになりつつある。数学的手法の詳細は端折られているので物足りない部分もあるが、いま何が起きているのかは知っておいたほうがいい。
武田ランダムハウスジャパン
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いややっぱりちゃんと説明してる本のほうが面白いという読者には『質量はどのように生まれるのか』を挙げる。質量はグルーオン場のゆらぎを背景としてクオークと反クオークの対が生成消滅している量子色力学的な真空において、右巻き粒子と左巻き粒子とを区別するカイラル対称性が自発的に破れることで生まれるのだという。
これだけだと意味が全く分からないだろう。だがこの本は、この話を誰でも理解できるように丁寧に解説してくれている。研究者たちが論理をどのように組み上げて今のところに立っているのか、そして最終的にいまどんな疑問を持って、何をしようとしているのかを分かりやすく解説してくれている。広くおすすめできる本である。
ただしこの「分かりやすさ」とは、一言二言で説明できる分かりやすさではない。頭から最後まで読み、順に追って行けば誰でも理解できるという意味での分かりやすさだ。こういう分かりやすさこそが本当の科学本の面白さなのだと思う。
講談社
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『世界の野菜を旅する』『土の科学』『大気を変える錬金術』『光るクラゲ』
「日経サイエンス」2010年9月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
中東の山岳地帯が原産と考えられるタマネギ、インド北部原産のナス、アメリカ大陸原産のトマトやジャガイモ、トウモロコシなど、野菜の原産地を訪ねた旅行記『世界の野菜を旅する』は実に楽しい一冊である。
どのページも野菜に関する蘊蓄が満載で、しかも嫌味なところがない。ポルトガルではイワシの塩焼きにキャベツの味噌汁に似たスープを飲めるとか、ペルーでも日本と同じく生の魚介を食べるといった、世界各国の食文化の話題も楽しい。ともかく楽しい本なのだ。毎日食べているのに野菜について全く知らないことに気づかせてくれる本だった。
人類の農耕開始以来、数千年の歴史を持つ野菜は、人と共生しながら、それぞれの土地の気候や地質に合わせて姿を少しずつ変えて来た。作物の基本は日光と水、そして土だ。植物は土中の空隙にイオンとなって溶け込んだ元素を吸収し、人に分け与える。そして人は経験的にどのような土が豊かな植物を育てるか知っていた。『世界の野菜を旅する』と『土の科学』などを合わせて読むと、先人たちの経験的な知恵は大したものだと感じる。
『土の科学』は土壌とはそもそもどんなものなのか、どうやってできるかなどを解説した本である。土は外的環境が変わっても簡単には変化しない。本書では「緩衝能」と呼ぶ安定性が生態系全体を支えてきた。だがそれも表土が削られると失われてしまう。環境保全まで考えた農業が始まったのは、つい最近のことである。
PHP研究所
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先人たちの知恵は大したものだと述べたが、その知恵は集団が経験的に持っているものに過ぎず、哀しいかな、個々の人間が賢いわけではない。鳥の糞からなるグアノが肥料として優秀であることに気づいた19世紀の人々は、何千年もかけて蓄積されたグアノをわずか20年で採掘し尽くしてしまった。人の知恵はその程度だ。
いっぽう、大気中の窒素を固定するハーバー・ボッシュ法は、貴重な肥料の化学合成を実現した。大気の安定な窒素を固定する技術は同時に火薬にも使われ、戦争の長期継続をも可能にした。『大気を変える錬金術』は、この二人の化学者と技術者の物語である。栄光に満ちた、だが、あまりに哀しい物語だ。
多くの研究者の絶えざる努力と成功、第一次大戦の毒ガス製造やナチスの台頭など、ハーバーとボッシュの話を知っている読者は多いと思う。たった一つの反応が巨大産業を生み出し、世界を根本的に変えてしまう化学の力については言うまでもない。
だが自分の生き方や誇りそのものに裏切られたハーバーの思いや、直径90mに及ぶクレーターができるほどの工場爆発後のボッシュの苦悩、窒素固定の成功体験の持つ魔力の深さについてはどうだろうか。著者はあくまでハーバーとボッシュ側に寄って立ちながら、科学と人間の持つ業を、歴史を淡々と追うことで浮き彫りにする。
みすず書房
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ある人は自然の本質を探り、別の人は実用を探索する。多くの研究者たちの連続した努力が大きな成果を生む。緑色蛍光タンパク質(GFP)の開発を追った『光るクラゲ』の物語もその一つだ。下村氏がノーベル賞を受賞したことで一般の人にも広く知られることになったが、背景には受賞者3人以外にも多くの人がいる。本書はそれを適度な深さで解説してくれる良書だ。
訳者あとがきによればGFPのDNAを提供した研究者は、今は失業し送迎バスの運転手をしているという。これまた別の意味でショックだった。
青土社
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(もりやま・かずみち:サイエンス・ライター)
書評 『生活家電入門』『数覚とは何か?』『音楽嗜好症』『飢えたピラニアと泳いでみた』
「日経サイエンス」2010年10月号 書評欄 「森山和道の読書日記」掲載
今年は酷暑だった。今やエアコンや冷蔵庫がない生活など考えられない。だがついこの間まで、家電どころかコンセントすら家庭にはなかった。『生活家電入門』は生活に不可逆な変化をもたらしてきた家電を一つ一つ取り上げ発展史を追った本だ。白熱電球に始まり扇風機や食器洗い機、洗濯機、炊飯器、IHヒーターなどなど、日々世話になっているものの由来をあまり知らない家電の歴史が紐解かれる。
人は何にでもすぐ馴れてしまうが、これらの家電は人間が生み出す前にはこの世に存在しなかった。良くも悪くも、まさに革新である。これからの技術者は、生活への革新をどれだけ起こせるだろうか。是非夢を描いて欲しい。
工学にせよ理学にせよ背景には数学があり、数がある。なぜ人間は数を理解できるのか。そもそも人間にとって数とはどんな概念なのか。『数覚とは何か?』は、心理学な実験や症例などから、人間の持つ「数覚」、すなわち「数の感覚」の不思議を掘り下げて考察した一冊である。
本書によれば人間は1、2、3まではほぼ正確な概念を持っているが、そこから先は要するに「たくさん」だと捉えているらしい。さらに数が多くなればなるほど差には鈍感になる。そして、数を量と結びつけずに考えることは非常に難しいようだ。否応なく量と結びついてしまうのである。計算の手順にも一定のパターンがある。
つまり脳は、計算機のように純粋に論理的情報処理で数を扱っているのではない。もともと時間や空間を知覚し理解する能力の延長上に数の感覚も存在しており、生まれつき強力な制約を受けているのだという。数覚は特定領域に局在しているのではなく、あちこちに分散している機能モジュールのネットワークによって生みだされているらしい。人が本能的に持っている数の捉え方の概念は教育にも影響する。
早川書房
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数覚がもともと生存に必要な知覚のすぐ延長上にあるとすれば、数学の能力と空間把握能力の間には相関があることも納得できる。この本のなかでも何度かオリヴァー・サックスの著作が言及されているが、サックスの『音楽嗜好症』には、音楽を聴くと壮大な建築物を思い描く人の話が登場する。床や窓、屋根、地下室に至るまでありありと内部空間が知覚されるのだという。
本書では落雷によって突然音楽の才能に目覚めてしまった人や、音楽を聴くと発作に襲われる人、逆に音楽に向かい合っているときだけ自分自身を取り戻すことができる人たちなど音楽にまつわる多様な症例が紹介されている。
頭のなかで突然、音楽の一節がループし続ける体験は誰もがしているだろう。なぜ我々の生活は音楽に満ちあふれているのか。人はなぜ音楽に感応するのか。リズムや運動、他者との強調能力などとの関連などが議論されているが、真相は未解明だ。ともかく人間の脳と音楽との間には、深い部分で分かちがたい何かがあるらしい。最後は、認知症においても音楽に関する神経回路はかなり耐性があることが述べられている。
早川書房
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絶対音感を持つ昆虫学者は虫の羽音を聴き分けることができるそうだ。ライターによる野生動物に関するエッセイ集『飢えたピラニアと泳いでみた』の著者も、虫の羽音は多数聴いてきたに違いない。シロアリやミツバチや顔ダニ、亀やヒョウやクラゲなど様々な野生動物の生態が23のコラムで紹介されている。ひどい目にあいながらも取材をやめられない気持ちはちょっと分かる。
青土社
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書評 『ドングリの戦略』『ミミズの話』『確信する脳』『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』
「日経サイエンス」2010年11月号 書評欄「森山和道の読書日記」掲載
「どんぐりころころ」という唱歌があるが、ドングリの生態の研究者による『ドングリの戦略』によれば、実際にはそれほど転がらないそうだ。また「ドングリの背比べ」ということわざもあるが、ドングリの大きさは同じ種内でもだいぶ違う。
ドングリの数は毎年変化する。「結実変動」とよばれるこの現象は、ドングリを餌とする動物を通して他の植物など山全体にも影響を与える。だが実態は十分に解明されていない。本書を通読してもすっきりとは分からない。この本の醍醐味はその答ではなく、ドングリを手がかりとして、樹木そのものの生長と繁殖のバランス戦略や、様々な種間の関わり方を考える、その考え方や研究手法の面白さにある。
八坂書房
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地上の次は地下に目を転じよう。植物育成は土作りであり、そしてミミズが土を肥やすことは常識とされている。生ゴミを処理させるミミズコンポストやオーストラリアの巨大ミミズ、そしてもちろんダーウィンのミミズ研究などの逸話が紹介される『ミミズの話』でも、それらの話は中核にある。黙々と活動するミミズは今や汚染土壌のモニタリングや浄化、下水処理にも使われようとしているという。
だが、ミミズが逆に、有害な影響をもたらす外来動物となることもある。ミミズの侵入が下層植物に影響を与え、森全体の姿を変えてしまうことがあるのだ。森林保護は地上だけに目が向きがちだが、この視点が本書をより奥深い本にしている。生物の世界はそれほど単純ではない。
それが何かは分からないが、自分は確かにそのことについて知っている、という感覚を持つことがある。「間違いなく自分は知っている」と。『確信する脳』は、その「知っているということを知っている感覚」について考えた一冊である。
知っている内容自体は知識と呼ばれる。だが「知っているという感覚」そのものは、その知識そものものとは独立した感覚であり、かつ、意識的には制御不能であると指摘している。つまり人は、知らないのに「知っている」という感覚を持つことがあり、その「確信の感覚」に大きく振り回されることがあるのだ。それが人の心を形作る脳の生物学的な制約なのである。「思考」の持つ本質的な制約の結果、どんなことが起こるのか。本書は一冊かけて考察している。
この本は特に多くの人に一読をおすすめしたい。なぜなら自分自身の心について、そしてそれがどのようなものであるかについて知ること、そして「知る」という感覚を持つことそのものの限界を深く考察しているからだ。それはすなわち、人間とはどういう存在であるのかについて考えることに他ならない。人生に対する「目的感」、「意味感」、そして「信仰感」を持つ理由、そして必ず答えがあるはずだと不可避かつ不随意に、独立して抱いてしまう感覚。このような感覚を自動的に生起することで生成される「心」をみんなが持っている。このことを見つめ直さなければならない。
河出書房新社
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人は行動の原因を相手の「心」や性格に求める傾向がある。対して『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』は、行動分析学の考え方を使って、行動と環境の関わり方を視覚化して捉え分析する方法を提案する。心の問題の理解や解決策には、心以外の事柄に注目する事のほうが有用だという。ポイントは変えられるところ、制御可能なところはどこかと探すことにある。
光文社 (2010-08-17)
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