森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

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書評『100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』

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週刊SPA! 2009年掲載

100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
(ジョージ・フリードマン著 櫻井祐子 訳 早川書房)

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

21世紀半ば、日本はトルコと同盟を組み、アメリカと戦争することになる。主戦場は宇宙空間である。全海洋の覇権を握るアメリカは21世紀も世界最強の大国であり続ける。中国やロシアは2020年代に崩壊、分裂する−−。

100年予測は地政学の観点から21世紀の100年間の動向を予測した本である。

対テロ戦争、景気低迷など昨今の状況から考えるとにわかには信じがたいが、今世紀こそがアメリカの時代となるのだという。そして、日本は太平洋に面した諸国に経済的に乗り出さざるを得なくなり、その結果、アメリカと利害の不一致が発生し始め、やがて煙たがられる存在となるのだと予測している。

さらに宇宙はロボット技術を使った衛星兵器や発電衛星が活躍する非常に重要な場所となるという。まるでSFの世界だが、未来を予測するためには常識を疑わなければならないと著者はいう。

著者の予測の根源には、地理的条件の持つ力は、長期的には圧倒的だという考え方がある。アメリカが強い国となったのも、アメリカが素晴らしい国だからではない。大西洋と太平洋に面する北米大陸にあったからだ。そして今後も他の勢力を混乱させることでアメリカに挑戦するだけの力をつけさせないように動くという。

著者の予測が正しいかどうかは分からない。だが非常にエキサイティングな世界の見方を提供してくれることは確かだ。

100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
ジョージ フリードマン George Friedman
早川書房
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Written by 森山和道

6月 25th, 2011 at 12:00 pm

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書評『パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史』

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CQ出版「Interface」2008年12月号
書評コラム「こんな本を読んで、こんなことを考えました」第12回 掲載

パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史
(YOMIURI PC編集部 講談社(ブルーバックス) ISBN 978-4-06-257610-9 900円(+税))

パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス)

 ライターという仕事がら、メモ帳が手放せません。座れる場所ではノートPCを使っていますが、荷物を肩から提げて立っている状態ではどうしようもないので、鉛筆とメモ帳を使っています。先日、amadanaのカード型電卓をさわってみたら非常に打ちやすいキータッチに感動しました。このキータッチで電子辞書程度の大きさの小型ワープロが欲しいです。通信機能なんていらない、ディスプレイもモノクロだけ、3行程度表示できればいい。ビジネスメモに特化したデバイスです。ICレコーダくらいのニーズはあるのではないかと思うのですが、どうでしょう。

 YOMIURI PC編集部がまとめたパソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史をめくっていると、ますますそんな気持ちが強くなりました。昔を知っている人は懐かしく、知らない人は「へー、そんなこともあったのかあ」と驚きを持って読める本です。

 新聞をコンピュータで作ろう、そのためには日本語をコンピュータで本格的に扱う必要がある。そんな発想が出てきたのは1967年、日経と、経理処理用コンピュータを入れていた日本IBMの間で出てきたそうです。

 1972年にできあがったシステム「ANNECS」は最初は1ページを組むのに数時間もかかっていたとか。その後、ハードウェアの処理速度が上がるに従って徐々に置き換えられていき、さらに事務処理などにも導入されていく過程で日本語処理のニーズが高まっていきます。

 まだ日本語入力方式すら決まっていなかった時代の話も面白いですが、当時の技術者の一人には「すでにコンピュータの仕事を一通りやりつくした」という気持ちがあったという話も、別の意味で興味深く感じます。だから当時は難関であった漢字処理に挑んだ、とのこと。いまから見ると笑ってしまうような話ですが、「もうやり尽くした」と思うのは、いつの時代も同じなのかもしれません。

 もちろんこの本で紹介されているのはメインフレームの話だけではありません。漢字ROMの時代の話や、「一太郎」をはじめとするワープロソフトの話、そしてワープロ専用機全盛からパソコンの時代への変化も出てきます。東芝が机のようなワープロ1号機「JW-10」を発表したのが1978年。今年で30年です。

 本の後半はケータイ文字入力やフォントの話になります。そのあたりもまた興味深いですが、ただ、前半に比べると時代が「いま」に近すぎて、ちょっと興味が削がれるところもあります。肝心のコンピュータが日本語を変えたかはどうかについては、ややぼかして書かれていて、面白くありません。まあ、一言でいえない問題ではあると思うのですが……。

 さて、冒頭で述べたメモ帳用途の小型ワープロ希望の話ですが、人に話したら「だったらケータイを使えば」と言われました。確かにケータイの反応も速くなっていますし、若い人たちならば脊髄反射で入力できるのかもしれません。ですが私が欲しいのは一言メモを書くようなものではなく、そのまま記事原稿に使えるようにコメントをメモすることができる、ビジネス用途、プロの道具としてのメモ帳なのです。

 いまでも毎年シーズンになるとメモ帳売り場が賑わいます。デスクでPC、スケジュール確認にはケータイを使う人たちも、いまだに紙のメモ帳と鉛筆は手放せない。あれをそっくり代替することができれば、まだまだ大きな市場があると思うのですが、どなたか作ってくれませんかね。

パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス)
講談社
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Written by 森山和道

6月 24th, 2011 at 1:54 pm

書評『もしかしたら、遺伝子のせい!? 魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話』

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SFマガジン 2009年6月号 掲載

もしかしたら、遺伝子のせい!? 魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話
(リサ・シークリスト・チウ(Lisa Seachrist Chiu) 著 越智典子 訳 白揚社 2800円(税別) ISBN : 978-4-8269-0153-6 原題:When A Gene Makes You Smell Like A Fish… and Other Tales about the Genes in Your Body, 2006)

もしかしたら、遺伝子のせい!?―魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話

 タンパク質が多く含まれる食品を消化する際の副産物トリメチルアミンを分解するための肝酵素が作れなくなる、トリメチルアミン尿症、またの名を「魚臭症候群」という遺伝子異常があるそうだ。
もしかしたら、遺伝子のせい!?は、遺伝子が環境との相互作用の中で、私たちの身体に与える影響を様々なトピックスで紹介する本である。

 人間の遺伝子は99.9%同じだ。だが残りの0.1%のわずかな違いが人それぞれの個性を生み出すもととなる。そしてその差異が、個人の人生においては大きな意味を持つ。「魚臭症候群」の場合は、一対のFMO3遺伝子のうち、両方に欠陥がある場合のみ発症する。原因は一つだ。しかしながら対応法は様々で、酵素を入れればいいといったような簡単な方法ではすまないようだ。人体、遺伝子の仕組みは単純ではない。

 本書は、後天的なエピジェネティックな遺伝子の修飾や日本人の起源の問題まで、様々な話題を収録している。なかでも特に面白かったのは、獲得免疫系の起源が4億5000万年前のウイルス感染にあるという話と、哺乳類の胎盤を作る仕組みに、やはりゲノムに組み込まれたレトロウイルスが深く関わっているという話だ。本書を読む限りでは、この説はかなり確からしいものに思える。獲得免疫系に胎盤となると、どちらも進化の過程において大きな役割を果たしたことは確実だ。一つの個体の発達過程でもじゅうぶんすぎるほど複雑なのだが、遺伝子レベルで見ると、生物は想像以上にダイナミックに、考えだすと頭がくらくらするほど大きなレベルで相互作用しているらしい。

もしかしたら、遺伝子のせい!?―魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話
リサ・シークリスト チウ
白揚社
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Written by 森山和道

6月 23rd, 2011 at 2:53 pm

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書評『会社のデスノート』

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週刊SPA! 2009年掲載

『会社のデスノート  トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?』
(鈴木貴博 著 朝日新聞出版)

会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?
 
大会社ならば、それほど間違った判断は下さないだろう。そんな思い込みが我々にはある。だがコンサルタントの著者は、大きな判断を間違ってしまう会社が増えて来たという。

では会社、日本社会全体を殺さないためにはどんな判断を下すべきなのか。この本では「所得弾力性」というキーワードを使って、商品やサービスの需要の行く末を考察する。

所得弾力性とは、所得が増えたり減ったりしたときに、その商品を買うカネがどのくらい増減するかという数字だ。この概念を使えば、トヨタが大幅減益になることも、そして驚くべきことに今後の判断を間違えなければ驚異のV字回復を果たすことも予想できるという。さらに今後は安売りではなく、小売りの世界でコンビニ業界が成功したように値付けを上げてものを販売することが重要だと述べる。

著者は日本が今後経済成長するのは資本投下が必要な「重サービス産業」の伸び次第だと語る。「重サービス産業」とは労働集約的なサービス業に対して、インフラ投資が必要な宅配便や遠隔警備、電子マネーサービス等を指す。労働集約的な仕事をシステムやネットワークに置き換えることで安価なサービス提供を可能にする。優良サービスを活用出来る社会を目指すことで、日本は新たな発展サイクルに進んでいけるという。

具体的な話も多く、取っ付きやすい本である。しかも著者の指し示す方向が明快だし、元気になれる。読んで損はない。

会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?
鈴木 貴博
朝日新聞出版
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Written by 森山和道

6月 13th, 2011 at 9:07 am

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書評『Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える』

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扶桑社週刊「SPA! 」2009年掲載

『Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える』
(日経BP社出版局 編 日経BP社)

Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える

140文字のマイクロブログ・サービス「Twitter」がブレイクしつつある。今や新聞テレビ各社はいうまでもなく、居酒屋やちょっとしたイベントに至るまで、みんながTwitterのアカウントを取って140文字のつぶやきをネット上に発している。

本書は10人のジャーナリストや評論家、研究員たちからなるネット識者たちがTwitterの魅力を各方面から紹介した本だ。気軽にパッと書けること、同時多発的にネット中から多くの声が上がる様子が目に見えて分かることがTwitterの特徴だ。新しいジャーナリズムの手段やマーケティングツール、サポートツール、仕事ツールなど、様々な可能性が期待されている。取りあえずTwitterについてどんな論点があるのか知りたい人ならば、本書をまず読んでみることをおすすめする。

ネットサービスは自分で体験してみなければ分からないことも多いが、自分の視野からは見えない視点も本書で得ることができる。

Twitterは面白さが分かりにくい。一回に書ける分量が140文字ということ以外は制限がなく、最初は何をすればいいのかも分からない。だが大勢の人のつぶやきを追うようになるに従って、漠然とネット上の流れが見えてくる。そのためには普段は自分と接点がない人たちもフォローしてみる必要がある。雑踏のなかでふと耳をすませてみるような感覚で大勢の声がディスプレイに上がってくるようになると、多様な考え方が見えてくるかもしれない。

Twitterの衝撃 140文字がビジネスからメディアまで変える
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Written by 森山和道

6月 4th, 2011 at 12:32 pm

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