森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

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書評 『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』

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「SFマガジン」2010年1月号掲載

ロボットとは何か 人の心を映す鏡
(石黒浩 講談社現代新書 740円(税別) ISBN : 978-4-06-288023-7)

 自分そっくりの遠隔操作ロボット「ジェミノイド」を作ったり、演出家・平田オリザ氏と組んでロボット演劇を行ったりしている大阪大学教授の石黒浩氏が、人間と関わるロボットの研究を通して考えたこと、すなわち研究哲学を紹介した著書が『ロボットとは何か』だ。ヒューマン・ロボット・インタラクションの研究を通して、人間とはどういうものかについて著者が考えたことが書かれている。

 ロボットそのものや、現在進行中の発達ロボティクス研究用の幼児ロボットや「ゆらぎ」を利用したプロジェクトについてもいくらかは紹介されているが、それはわずかだ。本書の主たる内容は、人間の心とはどういうものについての考察だ。著者によれば、人間に心があるかどうかは分からないが、人間は互いに相手に心があると信じて振る舞っており、それによって社会が生まれ、また社会によって自己が生まれているのだということになる。人は全ての能力を機械に置き換えたあとに何が残るのかを見ようとしており、そんなことをし続けて来た「人間」とはどういうものか理解するために格好の存在、それが「ロボット」なのだという。だからロボットは「人の心を映す鏡」なのだ。

 一つ一つの考察は、科学的に実証したものというより、主に著者が考えたことだ。やや暴走気味に感じるところもあるし、妙に悟ったような、ややくどい書き方も気にならなくはない。だ、研究者ならこのくらい極端なところに思考と研究の目標を飛ばしてしまったほうが良いのかもしれないとも思う。講演を聞いているかのように一気に読める一冊である。SF好きなら感じるところは必ずあるだろう。

ロボットとは何か――人の心を映す鏡  (講談社現代新書)
石黒 浩
講談社
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Written by 森山和道

12月 7th, 2010 at 11:26 pm