森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(4)和田研、田向研、我妻研編

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3日目から続く。

九州工業大学

4日目。

この日は九工大滞在最終日。
4つの研究室を訪問させてもらった。

これも記事としては、ある程度は「ロボコンマガジン」に書くつもりなのだが、
とりあえずブログでもざくっとした話を書いてご紹介しておく。

相手をしてくださった研究室は以下の4つ。

  • 障害者支援技術などを研究している人間機能代行システム研究室(和田研究室)
  • ロボカップ@ホーム三位の成績を持つ脳型計算機システム研究室(田向研究室)
  • テオヤンセン機構の解析や自動運転などをやろうとしている脳型知能創発システム研究室(我妻研究室)
  • それと、

  • 購買意思決定過程のモデル化や運動意図推定、双腕ロボットを使ったリハビリシステムなどの研究開発をしている人間・社会的知能システム研究室(柴田研究室)
  • である。

    改めて、呼んでくださった柴田先生に御礼を申し上げます。
    そしてご多忙の折(おそらくは突然だったろう取材のお願いに応じて)相手をしてくださった他の研究室の先生方、
    どうもありがとうございます。
    デモや説明などで時間を割いてくださった学生さんたちにも感謝します。

    さて、一つ一つざっとだがご紹介する。

    人間機能代行システム研究室(和田研究室)

    一つ目は和田親宗研究室

    人間機能代行システム研究室という名前のとおり、和田研では障害あるいは高齢者のための機能代行技術の開発を行っている。これまでに視聴覚障害者のための冷覚の仮現運動を使った文字提示システム、立ち上がり動作支援、歩行支援技術などの開発を行ってきた。また、うつ病など精神的負荷を定量的に推定するシステムの研究も行っているという。こちらはなかなか難しそうだ。

    和田研の靴

    最初に見せてもらったのは超音波センサや力センサ、慣性センサなどをつけた靴。歩行訓練用の歩容の計測・提示システムである。

    和田研究室の松葉杖計測システム。右が和田親宗教授

    松葉杖を使うときの圧力計測システムは、松葉杖をどう使えば(脇の下ではさめば)ずれないか、ユーザーに伝えるためのもの。共同研究している九州看護福祉大学の先生たちに使ってもらっているという。単に圧力を計測するだけではなく、歩容のどのタイミングで外れやすいかがわかればいいかもしれないと思った。

    立ち上がるときに適切に前傾姿勢が取れないと、人は立ち上がれない。足裏に重心からの垂線をもってこれないと立てないのである。起立動作誘導システムは、それがどのタイミングか慣性センサを使って教えようというもの。ただ慣性センサだけでは難しいそうだ。最初から背中が丸まってしまっている高齢者なども少なくないからだ。足底の力センサなどを組み合わせる必要がありそうだ。

    このほか、トイレでの起立支援機械の筋電を使った評価システムや、膝の曲がり方を計測するシステムの提案なども見せてもらった。

    真面目で地道な研究室という印象を受けた。ユーザー、高齢者や障害者の方たちともっと現場で触れ合うと、もっと色々な発想や考察が自然に出てくるのではないかなあと思った。

    脳型計算機システム研究室(田向研究室)

    田向准教授とロボカップ@ホーム用サービスロボット「エクシア」

    田向権(たむこう・はかる)准教授には、ロボカップ@homeで3位になった「EXI@(エクシア)」(Hibikino-Musashi @ホーム)のデモだけでなく、こちらの研究室が連携大学院(カーロボ連携大学院)の仕組みを使ってどのように学生たちの教育に取り組んでいるか教えていただいた。自動運転の研究を行っており、ナビゲーション技術、画像認識、また変わったところで脳波計測とその利用などについて、かなりじっくりと実習が行えるとのこと。初めてこの学研都市の構想が若干理解できた。また、企業とのインターンシップなども実施しており、学生・企業ともにメリットがあるのではないかとのこと。

    「EXI@(エクシア)」は、田向先生が九工大に来る前から既に使われていたロボットで、もともとは石井研によってつくられた台車の名前だったそうだ(というわけで、ガンダムに由来しているかどうか不明とのこと)。腕は車椅子などにつけて使われているiARM。デプスセンサ(Xtion)を二つ、それぞれ手先を見るためと人を見るためにつかっている。デモはペットボトルを取って人に渡すというもの。

    iARMはもともと人が操るためのアームなので、精度はそんなに出ない。手先で5cmくらいは平気でずれてしまうそうだ。だからロボットに使わせるのはけっこう大変だとのこと(逆に言えば、それを使っても人間は作業ができてしまうわけで、人間はやっぱりすごい)。

    いまはiARM用のROSパッケージを作ろうとしているという。どうしてiARMを使っているのかについては、もともと研究室にあった資産だから、とのこと。

    処理系にFPGAをアクセラレータとして使って画像処理を行っているところが特徴となっている。ROSユーザーからは特に何も考えずに扱うことができるそうだ。田向先生は「これからはFPGAの時代が来る」とおっしゃっていた。今年になってIntelがAlteraを買収したことにも一面が表れているように、この業界はこれから大きく伸びるという。スマートフォンにもFPGAが入るだろうとのことだった。組み込みマイコンをFPGAがどれだけ置き換えていけるのか、自分にはどうなんだろうと思うところもあるのだが、FPGAは大きく用途を広げつつあるらしい。

    ともかく半導体の人たちは「常にアプリケーションを探している」そうで、そういう立ち位置からロボットや自動運転を見ているということのようだった。その他、田向研の研究室紹介はこちら

    先生によればいまは「ロボカップ@ホームリーグ」がずいぶん盛り上がっているということだったので、やっぱり一度は見ておこうと思った。

    脳型知能創発システム研究室(我妻研究室)

    我妻広明 准教授

    私自身は完全に忘れてしまっていたのだが、我妻広明 准教授には、以前、お会いしたことがあった。今は昔、インプレスに「Robot Watch」があった時代のこと、こちらの記事だ(「異なる時間スケールの階層性」と「全体から部分への分節化」が知能を創発させる? 〜理研、「創発と知能」研究会を開催)。

    また、2015年9月30日に行わ荒れた産総研によるAIセンターの話(しなやかに人間によりそえる人工知能を 〜産総研 人工知能研究センター(AIRC)始動へ)のなかで出てきた、自動運転の話にもコミットされているとのことだった(このスライド)。

    まず脳にとっての身体、また生物にとって意味のある情報とは何かと考えるお話から伺った。具体的な研究としては、テオヤンセン機構の解析やそれを基にした拡張、身体の運動の分節化、脳波計測時の眼電信号のキャンセル、弾性素材を積極的に使った補助具などの開発を行っているとのこと。最近流行の「ファブ」的な設備環境を整え、教育にも力を入れているとのことだった。

    テオ・ヤンセン機構については、おなじみのVagabond worksさんの仕事に触発されたというところもかなりあった様子。「一昨日会いましたよ」と言ったら担当の学生さんがびっくりしていた。ちなみに博士号取得後は東芝の研究所に行く予定とのことだった。

    拡張テオヤンセン機構

    拡張テオヤンセン機構。クランクがもう一つついている

    柴田研究室編に続く

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    Written by 森山和道

    12月 24th, 2015 at 1:26 pm

    Posted in ロボット,日記