森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(2)トマトロボコン編

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トマトロボコン参加者

1日目(移動・黒崎滞在編)から続く。

二日目。

黒崎から北九州学研都市へ

トマトロボット競技会は3日間にわたって開催される。1日目はブリーフィングやテクニカルカンファレンスのようなことが行われ、2日目に予選、3日目が本選である。
予選といってもロボットの動作性能確認のようなもので、エントリーした14台のうち、落ちたのは1チームだけだったとのこと。
具体的には「トマトを触る」というものだ。ロボットがトマトに触れればオッケー。

僕が行ったのは最後の本選の日だ。
会場は九州工業大学ほか3つの大学がある「北九州学研都市」の体育館。

朝だったので、あまり足が選べない。
「地方都市あるある」だが、公共交通機関、この場合はバスの本数が少ないのである。
しかもこの日は日曜日。平日以上に本数が少ない。
だが、これがメインの仕事である。遅れるわけにもいくまい。
となると、タクシーを使うのが無難ということになる。

折尾駅が最寄りだということは知っていたのだが、ホテルのフロントにも聞いたところ、
「学研都市は折尾からだと行きすぎ。タクシーなら折尾から乗るのも黒崎から乗るのもそれほど変わらない」とのことだった。
地図を見ると、なるほどそうなのかな、とも思えた。
そこで黒崎駅からタクシーを利用した。
だが、これが間違いだった。
ぜんぜん違いました。
おまけに乗ったタクシーが外れで、のろのろ運転しやがってまったく、と思ったが、以下省略。

というわけで、「北九州学研都市」に行くときには、「折尾」駅から行きましょう。

トマトロボコン

まあ、いちおう時間には十分間に合って到着した。
体育館はひえひえだった。
とりあえず、取材で伺った旨を伝え、担当の石井和男教授ほか、いろんな先生に挨拶をし、
準備中のロボットをちょいちょいと見せてもらう。

トマト収穫ロボットは、自律でも遠隔操作でも可とされている。
遠隔操作も、ロボット搭載のカメラやセンサー類だけを見ながら行う「ブラインド」と、ロボット本体を肉眼で見ながら行う操作があるが、そのどちらでもいいことになっている。

ただし、どの方式を取るかによって、獲得する得点への掛け率が変わってくる。
またロボットの移動方式も、フリーエリアを使うのか、トマト近くに敷かれたパイプレールを使うのかによって異なる。

本選は2回にわけて行われる。
ファーストステージは葉っぱなどのない状態のトマトを使う。
ファイナルステージは、葉っぱのついたトマトからトマトを収穫する。

トマトを傷つけたりすると、減点である。
もぎとったトマトだけではなく、トマトの本体を傷つけるのも減点。
落とした場合はノーカウントだが、落としたトマトが傷物になっていたらやはり減点となる。
トマトはヘタをつけた状態で収穫しなければならない。
日本の流通ではそういうことになっているからである。

聞いて驚いたのだが、ふさになっているトマトを、一つずつ取らないといけないのだという。
しかも傷つけてはダメ。
人間でも馴れないとかなり難しい作業である。
これは難しい、と思った。

大規模ハイテクトマト農園「響灘菜園」

収穫したトマトを審査する浦環氏と「響灘菜園」の川尻氏

審査は、このロボコンを行うきっかけの一つである、
若松地区にある「響灘菜園」の川尻一志氏が行っていた。

「響灘菜園」はカゴメの子会社で、巨大な、まさに植物工場としか言いようがないトマト農園を持っている。
温室面積はなんと約8.5ha(約4.3ha×2棟)
20万本のトマトが植えられている。
大規模ハイテク農園である。

そこで収穫を少しでも自動化できれば、という話を聞いた九州工業大学の先生たちがロボコンを行うことにしたのだという。
たとえば、ハイシーズンであっても、選果作業のためには、まず収穫作業を行わなければならない。
それがもしロボットを使って行えるようになれば、夜間(あるいは昼間も)にロボットに収穫作業を行わせ、人間が出勤したらただちに選果作業に入る、といったかたちでの作業ができるようになる。

トマトのそばに敷かれているパイプレールも、もともと農園で温水暖房と作業をしている人たちが移動台車用レール兼用として使っているもののサイズを測って幅を決めているという。
いちおう、将来的には実用を目標としているからだ。

会場ではここの紹介ビデオが流されていたのだが、このビデオがまた面白くて、
いろいろ思うところがあった。
個人的にはこのビデオを見られただけでも来た甲斐があったなと思った。

トマトロボコン競技

さて、ロボットはどれも意外によく動いていた。
特にシンプルな動きのものは動作も確実である。

成績結果は、

1位 九州工業大学のチームHayashi Lab、
2位 「都合により個人参加」のチームSS、
3位 東大JSK3年生少人数ゼミチーム

となった。


「チームSS」の人は、知ってる人たちにはおなじみのマスタースレイブでロボットを操作していた。

あとの詳細は「ロボコンマガジン」に記事として書く予定だ。

いくつか動画をアップしておいたので、興味があればYoutubeを見て欲しい。
おいおい、追加もしていく予定である。


ちなみにこれは優勝した九州工業大学のチームHayashi Labのロボット。
自律でトマトを見つけ、もぎとっているところ。

最後にわーっと盛り上がっているのだが、
動画ではアップなので何がどうなっているかわからないと思う。
解説しておくと、これは、一つをもぎとったら、
たまたま他のトマトもボロボロっとうまい具合に取れてしまい、収穫カゴに入っちゃった、というシーン。
こういうミラクルを引き寄せるのも実力のうちである。

優勝したHayashi-lab

なおロボットによるトマトの取り方としては、かつて通販番組でお馴染みだった
「高枝切りばさみ」を使っているチームが多かった。
切りさえすれば、切ったあとも、そのままトマトをつまんだままで収穫できるからである。

見ていると、単に切るだけでもかなりの切れ味か力が必要なようで、
もう片方の腕を使うなどしてサポートするといった工夫は必須だなと思った。
また、今回はトマトは取りやすい角度にもともと向けてもらっているが、
実際のトマトはそういう生りかたのものばかりではない。
葉っぱの陰になっているものもあれば、回転したりする作業も必要になる。
単なるXYでアームを動かし、手先を伸ばしてチョキンと切ってとるだけのものでは実用化は不可能だ。

大会はロボット自体もさることながら、「響灘菜園」の方の話が非常に面白く興味深かった。
自分としては、既にあれだけ自動化されているのであれば、この菜園専用に機械を開発してしまったほうが、
逆に汎用性と実用性をもった機械ができるように思った。

ただ、いきなりメーカーに開発を依頼すると、それなりのものはできるかもしれないが、高価につく。
ロボコンという形式ならば、安価に、しかも今までになかったアプローチの機械が生まれるかもしれない。
そう考えているとのことだった。

ジュニア部門の様子

会場は体育館で、とにかく冷えた。
今回は「ジュニア部門」として、レゴマインドストームを使って、
ミニトマトの入ったボックスを収穫するライントレースロボットを作るという、
ETロボコンのトマト特化版のようなものが同時に行われていた。

参加していたのは高校生くらいの子たちである。
マインドストームも触ったばかりだそうなのだが、けっこうなロボットをいろいろ組み立てていて、これはこれで見ていて面白かった。
しかし会場は冷えたなあ。
彼らも寒かっただろうと思う。

なお、ロボットによって収穫されたトマトは、希望者に配布された。
そんなにいっぱい食べられないんじゃないかなと思ったが、
ジャムなどにすると美味しいそうだ。

というわけで、2日目は終了。
僕はバスに乗って黒崎に帰り、冷えた体をラーメンで温めた。

あとで知ったが、たまたま入ったこのラーメン屋は黒崎では人気の店だったらしい。
確かにうまかった。あたりを引いた。

3日目に続く

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Written by 森山和道

12月 23rd, 2015 at 10:14 pm

Posted in ロボット,日記