森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

書評 『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』

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日本経済新聞 2010年8月29日 書評欄 掲載

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
(ニコラス・A・クリスタキス、ジェイムズ・H・ファウラー 著 鬼澤忍 訳 講談社 3000円(税別) ISBN : 978-4-06-214770-5)

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

 両親、子供、兄弟姉妹、配偶者、上司、同僚、友人たち、ちょっとした知り合い、単に同じ地域で暮らししている人たちなど、我々は多くの人と繋がっている。他者とまったく接触しない人でも、どこかの誰かの作ったサービスや社会インフラの恩恵を受けている。他人から完全に独立した個人など存在しない。

 それだけではない。人は何でも自分で考え、自分で決定していると思い込んでいる。だが感情の伝染やパートナー探し、お金の流れや政治的決定、インターネット上での絆など多くの人的ネットワークと影響を研究している著者らによれば、それは根本的に間違っている。我々は気づかないうちに友人知人どころか、見知らぬ人たちの価値観や道徳、選択や経験から影響を受けて行動しているというのだ。人から人へと伝染するのは感染症だけではなく、投票行動や肥満まで「うつる」のだという。

 幸せそうな人のそばにいると自分も幸福感を感じるといった体験ならば誰でもあるだろう。だが真似るのは直接の繋がりがある人たちだけではない。我々は友人の友人、そのさらに友人など、弱い繋がりしかない人の行動を真似、比較し、幸福度を測っているという。我々は自分が属しているネットワークの影響を、直感的に感じている以上に強く強く受けているのだ。

 さらにネットワーク中の位置によっても行動は変わる。著者らはそこに遺伝子の影響もあることも示唆している。

 最近になって著者らの統計データの扱いへの反論が提出されるなど、この本の研究内容そのものへの批判もまだある。また今のところ、多くの人が直感的に感じていたことに裏付けを与えつつある段階に過ぎず、思いもかけない事柄を発見したわけでもない。どうすればネットワークの中心に立てるのかも分からない。今後の発展が期待される。

 ともあれ我々は人と人との絆から良くも悪くも逃れられない。それは同時に、ネットワークをうまく使いこなせれば単一個人を越えた能力を発揮できる可能性があるということだ。

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力
ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー
講談社
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Written by 森山和道

12月 22nd, 2010 at 4:35 pm