森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

書評『パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史』

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CQ出版「Interface」2008年12月号
書評コラム「こんな本を読んで、こんなことを考えました」第12回 掲載

パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史
(YOMIURI PC編集部 講談社(ブルーバックス) ISBN 978-4-06-257610-9 900円(+税))

パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス)

 ライターという仕事がら、メモ帳が手放せません。座れる場所ではノートPCを使っていますが、荷物を肩から提げて立っている状態ではどうしようもないので、鉛筆とメモ帳を使っています。先日、amadanaのカード型電卓をさわってみたら非常に打ちやすいキータッチに感動しました。このキータッチで電子辞書程度の大きさの小型ワープロが欲しいです。通信機能なんていらない、ディスプレイもモノクロだけ、3行程度表示できればいい。ビジネスメモに特化したデバイスです。ICレコーダくらいのニーズはあるのではないかと思うのですが、どうでしょう。

 YOMIURI PC編集部がまとめたパソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史をめくっていると、ますますそんな気持ちが強くなりました。昔を知っている人は懐かしく、知らない人は「へー、そんなこともあったのかあ」と驚きを持って読める本です。

 新聞をコンピュータで作ろう、そのためには日本語をコンピュータで本格的に扱う必要がある。そんな発想が出てきたのは1967年、日経と、経理処理用コンピュータを入れていた日本IBMの間で出てきたそうです。

 1972年にできあがったシステム「ANNECS」は最初は1ページを組むのに数時間もかかっていたとか。その後、ハードウェアの処理速度が上がるに従って徐々に置き換えられていき、さらに事務処理などにも導入されていく過程で日本語処理のニーズが高まっていきます。

 まだ日本語入力方式すら決まっていなかった時代の話も面白いですが、当時の技術者の一人には「すでにコンピュータの仕事を一通りやりつくした」という気持ちがあったという話も、別の意味で興味深く感じます。だから当時は難関であった漢字処理に挑んだ、とのこと。いまから見ると笑ってしまうような話ですが、「もうやり尽くした」と思うのは、いつの時代も同じなのかもしれません。

 もちろんこの本で紹介されているのはメインフレームの話だけではありません。漢字ROMの時代の話や、「一太郎」をはじめとするワープロソフトの話、そしてワープロ専用機全盛からパソコンの時代への変化も出てきます。東芝が机のようなワープロ1号機「JW-10」を発表したのが1978年。今年で30年です。

 本の後半はケータイ文字入力やフォントの話になります。そのあたりもまた興味深いですが、ただ、前半に比べると時代が「いま」に近すぎて、ちょっと興味が削がれるところもあります。肝心のコンピュータが日本語を変えたかはどうかについては、ややぼかして書かれていて、面白くありません。まあ、一言でいえない問題ではあると思うのですが……。

 さて、冒頭で述べたメモ帳用途の小型ワープロ希望の話ですが、人に話したら「だったらケータイを使えば」と言われました。確かにケータイの反応も速くなっていますし、若い人たちならば脊髄反射で入力できるのかもしれません。ですが私が欲しいのは一言メモを書くようなものではなく、そのまま記事原稿に使えるようにコメントをメモすることができる、ビジネス用途、プロの道具としてのメモ帳なのです。

 いまでも毎年シーズンになるとメモ帳売り場が賑わいます。デスクでPC、スケジュール確認にはケータイを使う人たちも、いまだに紙のメモ帳と鉛筆は手放せない。あれをそっくり代替することができれば、まだまだ大きな市場があると思うのですが、どなたか作ってくれませんかね。

パソコンは日本語をどう変えたか (ブルーバックス)
講談社
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Written by 森山和道

6月 24th, 2011 at 1:54 pm