森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

書評『もしかしたら、遺伝子のせい!? 魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話』

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SFマガジン 2009年6月号 掲載

もしかしたら、遺伝子のせい!? 魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話
(リサ・シークリスト・チウ(Lisa Seachrist Chiu) 著 越智典子 訳 白揚社 2800円(税別) ISBN : 978-4-8269-0153-6 原題:When A Gene Makes You Smell Like A Fish… and Other Tales about the Genes in Your Body, 2006)

もしかしたら、遺伝子のせい!?―魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話

 タンパク質が多く含まれる食品を消化する際の副産物トリメチルアミンを分解するための肝酵素が作れなくなる、トリメチルアミン尿症、またの名を「魚臭症候群」という遺伝子異常があるそうだ。
もしかしたら、遺伝子のせい!?は、遺伝子が環境との相互作用の中で、私たちの身体に与える影響を様々なトピックスで紹介する本である。

 人間の遺伝子は99.9%同じだ。だが残りの0.1%のわずかな違いが人それぞれの個性を生み出すもととなる。そしてその差異が、個人の人生においては大きな意味を持つ。「魚臭症候群」の場合は、一対のFMO3遺伝子のうち、両方に欠陥がある場合のみ発症する。原因は一つだ。しかしながら対応法は様々で、酵素を入れればいいといったような簡単な方法ではすまないようだ。人体、遺伝子の仕組みは単純ではない。

 本書は、後天的なエピジェネティックな遺伝子の修飾や日本人の起源の問題まで、様々な話題を収録している。なかでも特に面白かったのは、獲得免疫系の起源が4億5000万年前のウイルス感染にあるという話と、哺乳類の胎盤を作る仕組みに、やはりゲノムに組み込まれたレトロウイルスが深く関わっているという話だ。本書を読む限りでは、この説はかなり確からしいものに思える。獲得免疫系に胎盤となると、どちらも進化の過程において大きな役割を果たしたことは確実だ。一つの個体の発達過程でもじゅうぶんすぎるほど複雑なのだが、遺伝子レベルで見ると、生物は想像以上にダイナミックに、考えだすと頭がくらくらするほど大きなレベルで相互作用しているらしい。

もしかしたら、遺伝子のせい!?―魚臭くなる病ほか遺伝子にまつわる話
リサ・シークリスト チウ
白揚社
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Written by 森山和道

6月 23rd, 2011 at 2:53 pm

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