98年6月SF Book Review



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  • マウント・ドラゴン 上・下
    (D・プレストン&L・チャイルド 中原尚哉訳 扶桑社ミステリー、上640円 下660円)
  • ノンストップ・ハリウッド的SFバイオホラーアクションエンターテイメント(笑)。一昔だったら「これぞモダンホラー(笑)」と言われていたに違いない。

    こう書くとけなしているようだが、読んでいる間は十分面白い。最初ちょっとだけタルいけど、もうサービス精神全開で読ませてくれる。簡単にイントロだけ紹介するとこうだ。
    主人公カースンはジーンダイン社遠隔砂漠地試験施設、通称マウント・ドラゴンへの赴任を命じられた。突然の抜擢、大栄転だった。そこでは驚愕の遺伝子治療実験が行われていた。なんとボノボの遺伝子を人間に組み込み、人間をインフルエンザの脅威から救おうというのだ。ところが実験は恐るべき結果へと…。
    こんな感じだろうか。

    最新の知識とSF的転回、電脳空間でのバトルや宝探しまで盛り込んだ、ハリウッド的エンターテイメントだ。ほんと、著者のサービス精神には思わず笑っちゃいました。

    本書の鍵となっているSF的アイデアはなかなか目の付け所が良いなー、と思わされました。もっとも、実際は「そんなことない」らしいんですが。詳しくは読んで下さい。暇つぶしには最適です。


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  • エイダ
    (山田正紀 早川書房、740円)
  • 早川の新刊案内の文句を見ると改変世界ものみたいだけど、そうじゃない。世界改変ものと言うことはできrかもしれないが。山田正紀流の「ドグラ・マグラ」といったところかなあ。

    「どんな人間も結局は主観的な"物語"のなかを生きているんです」というのが著者の哲学なのだろうか。現実から生まれた物語は現実に影響を与え、浸食していく。現実と物語はお互いに影響を与えあい、区別できなくなっていく。区別することすら意味はないのかもしれない。

    そんな考え方が著者にはあるんだろうと思う。生み出した物語は、ひとたび語られてしまったら、もはや誰のモノでもない、勝手に自己増殖していくものだ、という…。

    読んでいると、金子邦彦氏の「進物史観」を思い出した。その時にも書いたのだが、こういう形でぼっと出されてもなあ、という気がしなくもない。「生のまんま」じゃないか、と思うのだ。どうせならもうちょっと調理して、素材と素材の味をなじませて欲しかった。

    ただ、それほどつまらないわけでもない。読んでいる間はそれなりだった。ああ、日本SFってこんな感じだよなあ、という気が(良くも悪くも)したのだった。なお、タイトルの「エイダ」に惹かれて買うと後悔する。このタイトルにはそれほど意味はない。


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