出来はそこそこ、といったが気になるところがないわけではない。この手のモノ──マッド・サイエンティストもの──だと、「あっち側」に共感しているのではなく、「こっち側」に主体があるものが多いように感じる。残念ながら、本アンソロジーも例外ではなかった。要するに、説教くさいのが混じっているわけ。その辺は、まあ仕方ないんだけど、ちょっと気になった。
でも楽しめましたよ。僕はこれを電車の中で読んでて、駅を乗り過ごして取材に遅れそうになりました。
粗筋紹介としてはこんなところか。タイトルどおり、バイオネタとミステリをくっつけた作品で、サントリーミステリ大賞受賞作。全体の雰囲気は、どことなく昔懐かしいジュヴナイルを思わせる。中で展開されるSF的味付けは正直お粗末の感ありだが(でも一瞬「面白い」と思わせるだけのものはある)、それ以外の要素に大きく助けられ、それなりに楽しめる作品。
なんだか最近の現代小説みたい。SFといえばSFだけど、別にSFじゃなくても良いような気がする。
なんていうんだろうか、僕自身はいま「スタイリッシュな」小説というのにかなり飽きているんだよね。なーにがスタイリッシュだ、っていう気がしてしまっているのですよ。
主人公達のレズの心理描写がどうしたこうした、という文章もいくつか読んだけど、このくらい誰でも書けるような気がするんだけどね。そんなことないのかなあ?
僕には退屈でした。ただなんていうんでしょうか、逆に、普通の人には勧めやすい本ですね、これは。