98年5月SF Book Review



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  • 悪魔の発明
    (井上雅彦監修 廣済堂出版、762円)
  • 異形コレクション4。今回はマッドサイエンティストもの。
    全体の出来は、まあまあというところではないでしょうか。そこそこ、というか。こちらの度肝を抜いてくれるような着想のものはないが、出来が悪いわけでもない。物価高の世の中、600ページを超す文庫本でこの値段なのは嬉しい。次がペラペラだったらどうしよう、と余計な心配してしまう。

    出来はそこそこ、といったが気になるところがないわけではない。この手のモノ──マッド・サイエンティストもの──だと、「あっち側」に共感しているのではなく、「こっち側」に主体があるものが多いように感じる。残念ながら、本アンソロジーも例外ではなかった。要するに、説教くさいのが混じっているわけ。その辺は、まあ仕方ないんだけど、ちょっと気になった。

    でも楽しめましたよ。僕はこれを電車の中で読んでて、駅を乗り過ごして取材に遅れそうになりました。


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  • ゲノム・ハザード
    (司城志朗(つかさき・しろう) 文藝春秋、1333円)
  • 平穏な日常がいきなり崩壊した。自宅に帰って見つけたのは、殺されたとおぼしき妻の死体。そしてその時、目の前で死んでいるはずの妻から電話がかかってきた…。はがれ落ちていく自分の記憶。どうやら1年前まで俺は全く違う人間だったらしい。俺は一体誰なんだ? 一体何が起こっているんだ?

    粗筋紹介としてはこんなところか。タイトルどおり、バイオネタとミステリをくっつけた作品で、サントリーミステリ大賞受賞作。全体の雰囲気は、どことなく昔懐かしいジュヴナイルを思わせる。中で展開されるSF的味付けは正直お粗末の感ありだが(でも一瞬「面白い」と思わせるだけのものはある)、それ以外の要素に大きく助けられ、それなりに楽しめる作品。


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  • スロー・リバー
    (ニコラ・グリフィス 幹遙子訳 早川書房、840円)
  • おおざっぱな印象は、森下一仁さんの感想とそう変わりません。そっちを読んで下さい。
    で、それを踏まえて。

    なんだか最近の現代小説みたい。SFといえばSFだけど、別にSFじゃなくても良いような気がする。
    なんていうんだろうか、僕自身はいま「スタイリッシュな」小説というのにかなり飽きているんだよね。なーにがスタイリッシュだ、っていう気がしてしまっているのですよ。
    主人公達のレズの心理描写がどうしたこうした、という文章もいくつか読んだけど、このくらい誰でも書けるような気がするんだけどね。そんなことないのかなあ?

    僕には退屈でした。ただなんていうんでしょうか、逆に、普通の人には勧めやすい本ですね、これは。


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