もちろん、表層の物語そのものは「分かる」。それだけでも、まあ、そこそこ。本書の場合だと、悪夢か、幻想か。夢。やはりこれは夢だろう。と思えるような幻想世界の冒険箪が語られる。
が。
しかし。
その下の物語、メタファーに隠された真の意味、これが分からない。見えてこないのだ、僕には。解説を読んで、ようやくなんとなく見当がついたような次第。この物語を読み解くキーは、やはり作家自身のバックグラウンドにあるようだ。
文章にわざと両義性をもたせるのは文学作品では良くあることだが、それを全編にちりばめているのが彼の小説。こういうのは得意じゃないし、特に好きでもないなあ。まあ「文学的価値」は高いのかもしれないけど。
僕がSFに求めるものとは違うけど、SFの可能性、文学としての、ある種の装置としてのSFの可能性の一つを示してくれる作ではある。
しかし、しかし、解説を読んで初めて「ぐらんぐらん」と揺れるような感覚を味わえる、というのは、やはりちょっとなあ。そういう意味で、この日本語版の長い長い解説と翻訳期間は有り難いのかもしれない。
なお、「ノヴァ」の解説も一緒にされている。「ノヴァ」を読む前に読んでもいいし、読後に読んでも良いと思う。やはりメタファはメタファとして読みたいのだ、ボクは。勉強不足か。
挑戦的態度で読むべき小説。
わたしは、この本にあまり期待してなかった。この手のジャンル、つまり戦争SFものも、あまり読まない。暇つぶしになれば良いか、くらいに思っていた。
ところがところが。
思っていたより遥かに良い出来。このジャンル全体に対する見方も少し変わってしまった。私にとっては、それほどの小説だった。この本をたまたま手に取った事を幸運に思う。
サイボーグSFとしても、水中戦闘を描く小説としても、非常に良いのではないだろうか。
お薦めする。
しかし、この邦題と表紙イラスト、なんとかならんのか。
センス0。