物語は82年のパリ、キャロと名乗るパヒューマー・伊能宿禰が女性を惨殺するシーンから始まる。舞台は一転、現代の日本へ。ライター・八辻由紀子はオカルト雑誌の編集者・久子と、取材で超常現象研究家・瀬野邦生、そしてUFOと接触したという人間・コンタクティーと会うことになった。その時から彼女の周囲の世界は悪夢へと変わってしまった。
という話。嗅覚によって狂った世界と狂った人々が、著者独特の粘つくような文体と独特の言葉ワールドで描かれる。これがたまらなくやみつきになるんだよなあ。
話はやがて、『MOUSE マウス』的な話へと続いていく。単品でみればこれはこれで結構なのだが、ちょっとパターンかなあ。やや残念だったが、この「イカレかた」は他者の追随を許さないので、まあいいか。
近未来のハリウッドでの「boy meets girl」な話。長編だけど、どっちかっていうとちょっと長い中編。話には特にひねりも何もなくて、まっすぐ進んでいく。ああ、いいはなしですねー、とは思うけども、それ以上ではない。まあいいんだけどね、こういうのもたまには。さくさく読めるし。ちょっといい話、て奴だな。
映画が好きな人のための小説、かも。
そんなある日。セオは反体制組織の女性から接触を図られる。反逆を起こす前に、国守に対して最後の忠告をしてはくれないかという。しぶしぶながら引き受けるセオだったが、ザンをはじめ評議会のメンバーは聞く耳を持たなかった。そしてセオは反体制派組織のメンバーと逃げることになるが、彼らにはもう一つ重大な秘密があった。
とまあこんな話。子供が産まれなくなって云々、という設定がまたはやり始めているのだろうか? 最初は『渚にて』みたいに静かに滅びを描いていくのかとおもいきや、そういうふうには展開しなかった。まあ、だいたい分かるでしょうけれども。エンターテイメントとしてはまあまあだから、まあいいんじゃないでしょうか。それ以上ではないけど。
というわけで僕は、死んだ妻の作品を盗作した作家を皮切りに、あやしい宗教団体やら殺人鬼やら呪われたマンションやらが一緒になって出てくるこの本を、「確信犯的C級ホラー」だと思って読んだのだが、どうなんでしょ。ネタ的には何も驚けるところもないし、もちろん怖くもない。もしそのまま映画化されたら、きっと大笑いしながら見ちゃうと思う。そんな本だ。
だから、そういうホラービデオを楽しめる人間だけが読む本ですね、これは。ぱっぱっぱと読めちゃうから損したとは思わないけど、ちょっとがっかりしたのは確か。
さて内容だが、お気に沿わなかった方もいるようだけど僕はけっこう楽しめた(ホーガン偏愛者だし)。ただ、途中の場面転換は確かにあまりに急だし、これだけの分量はいらないかな、という気もする。でもラストもいかにも(昔の!)ホーガンだし、ファンとしては許したいところ。