森山和道

サイエンスライター。科学書の書評屋もやってます。

with one comment

WordPressで運営中です。以前のhtml版の日記などはこちらから

サイエンス・メール

  • PC Watch 森山和道の「ヒトと機械の境界面」
  • ロボスタ 森山和道の「ロボットのみかた」


  • Written by 森山和道

    12月 4th, 2010 at 1:48 pm

    Posted in お知らせ

    シャープ、ロボット型電話「RoBoHoN(ロボホン)」の販売を開始

    without comments

    RoBoHoN

    シャープ株式会社は2016年4月14日、電話機能を搭載した小型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」の予約販売を開始した。高さは19.5cm、重さ390g。CPUはQualcomm Snapdragon 400 processor 1.2GHz。Android 5.0を搭載しており、背面ディスプレイの解像度はQVGA。メモリはROM 16GB、RAM 2GB。頭部CMOSカメラは800万画素。

    本体価格は 198,000円(税抜き)。特徴である音声対話機能を利用するためには月額料金 980円+税 の「ココロプラン」への加入が必須で、加えて外出先で用いるにはモバイル通信サービス料も必要となる。発売日は5月26日だが、4月14日午後1時から公式サイト( https://robohon.com/ )で予約販売を開始した。

    ロボホンを使った電話の様子

    モバイル通信サービスはシャープ自身がMVNO事業者として提供する。利用するには別途月額料金が必要となる。データ容量によって料金は異なり、1GBプランで650円、3GBで950円、5GBで1,580円。電話機能を利用するために音声通話SIMを契約する場合は、これに加えて+700円となる(価格はいずれも税抜き)。5GBプランで音声通話SIMを利用する場合は月額 2,280円+税 となる。

    このほか保守パックサービスが用意される。修理料金が5年間にわたって5割引になる「ケアプラン50」、同じく7割引になる「ケアプラン70」で、料金はそれぞれ月額で990円、1,650円(いずれも税抜き)。またオプションとしてキャリングケース、卓上ホルダーなどが販売される。

    海外への販売も検討する。月産生産台数は 5,000台。
    カラーバリエーションや、コラボレーション・モデルなどは予定されていないが、将来やっていきたい意向はあるようだった。

    ・「ココロプロジェクト」第1弾

    発表会場にてハンズオン

    シャープは家電製品を人工知能化する「ココロプロジェクト」を進めている。シャープではモノのインターネット(IoT)をさらに進めた「AIoT」を掲げている。より製品に愛着をもってもらうようにすることが目的だという。センシング、音声技術、クラウドとの連携によって、従来の家電ではできなかった、顧客の好みやふるまいから学習することで、より個人に適応し、愛着を持たれる家電製品の実現を目指す。「RoBoHoN」はその第一弾。

    「RoBoHoN」は使う人のプロフィールや行動習慣に合わせて、語彙も増えていき、アプリケーションも追加されるという。「RoBoHoN」の基本設計、デザイン、動作などを担当したロボガレージ代表取締役でロボットクリエイターの高橋智隆氏は「プロジェクトは三年前に始まった」と紹介した。ロボット、スマートフォンそれぞれの難しさに直面したという。

    高橋氏は「スマートフォンに足りなかったものは将来性と愛着。ロボホンはそれらを補完する。単なる足し算ではなく人と機械の関係を飛躍的に進化させる情報通信端末の未来だ」と述べた。

    コミュニケーションロボットにとっては小さいことに価値があるという。ロボットが大きいと期待値も大きい。だがロボットが小さいと人間側のロボットに対する期待値も低くなり、ロボットが相対的に賢く見えるからだ。「人の感性は繊細。デザイン、コミュニケーション、UX、小ささにこだわった。それらを全てを仕上げることで愛着が生まれる」と述べ「スマートフォンとロボホンの二台持ちが始まる。やがて、スマホにとってかわる」と語った。「従来のスマフォのかたちで使いながら、いままで気づかなかった機能や役割を見つけてもらえるのではないか」という。

    会見ではシャープに対しては「本当に売れると思っているのか」という質問も出た。いっぽう高橋氏は「ロボホンについてコンセプトとしては一つの完成系ではないか」と語った。ロボホンのコンセプトは「人と共生するロボットのあるべき姿なのではないか」と考えており、「今後、ソフトウェア、ハードウェアのアップデートを経て、人と暮らすロボットができるのかなと思っている」という。ただし「ロボットだけではなく生活の変化を待たないといけない」とも述べた。

    ・ロボホンのハードウェアについて

    「ロボホン」は小型ロボットなので搭載しているバッテリー容量も1,700mAhと小さい。だが、バッテリーを食うモーターが13に加え、小型レーザープロジェクタを搭載している。どのくらいバッテリーが保つのか、発表当時から懸念されていた。ハンズオンコーナーの説明員によれば、たとえばプロジェクタを1日に2回、ダンスを1日3回程度行なう程度であれば、1日以上は十分に保つという。スマートフォン開発を経て蓄積された節電ノウハウが活かされているとのことだった。

    頭部に搭載された小型レーザープロジェクタも、この大きさでは最も性能の良いものなのだとのことだった(1280×720)。温度監視をしており、過熱しそうになると「いまちょっと無理」といった発話を行って、投影を中止する。なおモーターは並木精密製とのことだった。

    ロボホンのダンス・歩行

    また「ロボホン」は本格的な小型2足歩行と紹介している媒体もあるが、ロボホンの歩行は一般的な2足歩行ロボットと比べると特殊だ。まずロボホンには膝がない。そして足底を内側に曲げて歩行している。トルクの小さなモーターを使っているためだ。順番としてはこうだ。まず体を傾ける。そして足底を傾けて足全体を前に振り出して着地させて体重を移動する。こういうおもちゃがあったなと感じるような動き方だ。

    また腕のつけかたや外見もかなり特殊で、自由度が少ないなりに動きを感じさせるようにひねりをつけたかたちになっている。
    側面から見たロボホンの立ち姿にも高橋氏のこだわりと工夫を感じる。

    ロボホンのバストショット

    ロボホンのマイクは頭部側面にある穴だ。スピーカは胸にある。頭頂部にはキャンセル用のタッチセンサーが仕込まれている。実際に手に持ってみると精密感は高い。生産は広島工場で行っている。

    いっぽう、音声対話機能を利用させるための端末であるというコンセプトを重視しすぎたのか、物理的ボディを持っているロボットならではの身体特性をあまり利用していないUIになっている点は気になった。

    たとえばロボットから選択肢を選ばせるような場合、音声認識だけではなく「1番なら右腕、2番なら左腕を触れ」といったUIを音声認識に加えて併用することがしばしばある。だがロボホンにはそのような併用がなく、ひたすら音声認識にこだわっている。そのため音声認識がうまくいかない環境ではかなり微妙な印象のデモになってしまう。会見時のハンズオンコーナーでも「うるさすぎる」という理由で音声認識がうまくいかないことが多かった。

    ロボホンの音声認識を使ったクイズ

    また、シャープが今後、ユーザー側とどのようなコミュニケーション、関係を維持していくつもりなのかもよくわからなかった。一例を挙げれば、5月末発売にもかかわらず、パッケージも提示されなかった。コミュニケーションロボットを購入した場合、最初に手に取るのはパッケージであり、そこから開封したときにロボットが最初どのようなアクションでユーザーと向き合うのかといったUXは大事な部分だと思う。だが会見を見る限り、シャープはその点を重視しているようには思えなかった。

    商業製品としてのコミュニケーションロボットは、商品に対する擬人化を積極的に行なうことで、顧客にとっての価値を大きくするという性質のプロダクトだ。そこを軽視しているようだと今後が心配である。表面的な「ロボット電話」的なUIしか重視していないのであれば、スマートフォンとしてだけでなく、個人向けロボットとしての商品価値まで失うことになりかねないと思うのだが。

    ロボホン内部が見えるハーフスケルトンモデル

    ロボホン内部が見えるハーフスケルトンモデル。東急プラザ銀座「HANS EXPO」で出展されている

    Written by 森山和道

    4月 15th, 2016 at 3:52 pm

    Posted in ロボット,仕事

    書評:『触楽入門 はじめて世界に触れるときのように』(仲谷正史ほか著/朝日出版社)

    without comments

    触楽入門

    『触楽入門 はじめて世界に触れるときのように』
    (仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太 著 是澤ゆうこ イラスト 朝日出版社 定価:1,580円(税別) ISBN:978-4-255-00905-6)

     触感は素材に宿っているのではなく、素材・身体・心の関係の上に宿るのだと本書はいう。著者らは技術に基づく触感デザインを意味する「テクタイル」という活動を2007年から続けている。 本書は共著形式だが、基本的には、触覚の錯覚を通して神経科学と心理学の間をつなぐ研究をしている仲谷正史氏が執筆したもののようだ。

     彼らが発見したものの一つが本書の裏表紙に印刷で表現されている「フィッシュボーン錯覚」だ。魚の骨のようなパターンが印刷されている。少しだけ非印刷面よりも盛り上がっているのがわかる。ところが、背骨の部分を上下になでると、なぜか凹んでいるように感じられるのだ。そんな馬鹿なと思うだろうが、実際に試してみるといい。

     触感は能動的な感覚だろうか、受動的だろうか? 触られた感覚は自分が動かなくても存在する。いっぽう、ものを触るというのは探索的な行動だ。腕や手、指先を動かし、押し込んだりして、我々は物体の表面の情報を獲得する。動かすことによって時間軸上の情報が新たに付加される。そして触覚をよりクリアにしているらしい。

     たとえば熟練した職人は、軍手をつけるほうが、素手よりも微妙な凹凸がわかるのだそうだ。軍手のメリヤス編みが触感を増幅するのだという。人は指を動かし、振動を検知することによって、皮膚表面の触覚センサの密度よりもずっと細かいものを感知できる。触覚は、自分自身の身体を動かすことによって獲得される空間情報と時間情報の組み合わせから構成されている。

     仲谷らは触感を「感覚の交差点」だという。触感は五感を複合する感覚であり、体験する五感は、いわば触感に変換されて、意味を与えられているのかもしれない。実際に、オノマトペで状況を認識するときにも我々は、全身の触覚情報を処理する第一次体性感覚野を用いて処理しているらしい。動物の感覚体験がどんな情報表現になっているのかはまだ解明されていない。だが触感は一つの鍵になるかもしれない。

     本書後半では、自分で自分をくすぐってもくすぐったくない理由や、ゴムの手を自分の手のように感じるようになるラバーハンドイリュージョンなど、この手の本ではおなじみの話題が紹介されている。

     本書は「触楽入門」のタイトルどおり、触覚に関する様々な話題が収録されている面白い本ではあるのだが、より体系立てて学びたい、あるいはもう少し詳しい話を知りたい人への案内があれば、もうちょっと良い本になったと思う。

     著者らが行っている触覚を記録し、再現するテクタイルの活動については、私も以前、何度かレポートを書いたことがある。二つ挙げておくので、下記も合わせてご覧いただきたい。

    触楽入門
    触楽入門
    posted with amazlet at 16.02.10
    仲谷 正史 筧 康明 三原 聡一郎 南澤 孝太
    朝日出版社
    売り上げランキング: 968

    Written by 森山和道

    2月 10th, 2016 at 6:46 pm

    Posted in 書評

    九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(6)まとめ

    without comments

    柴田研究室編から続く。

    というわけで、駆け足で九州工業大学のロボット系研究室のうち5つの研究室を伺い、
    トマトロボコンを取材させてもらいました。
    ありがとうございました。
    以下、こちらの記事のまとめです。

    柴田先生は「研究室は人で決まるので、いろんな人たちを呼び込んでいきたい」とおっしゃっていた。

    留学生たちや、柴田先生が担当である「先進的支援ロボット工学(AAR)国際コース」の取り組みはもちろんだけど、単に狭義の研究室だけではなく、外部の人たちと様々な交流・連携をもって、物事にあたっていきたいと。

    月に1度「ひびきの金曜酒場」のようなオープンな産学官交流の取り組みも行っていらっしゃる。

    北九州が介護ロボット特区になったことも今後、関係してくるかもしれない。
    他にもJST関連のあれやこれやのプロジェクトも関係しているらしい。

    というわけで、とにかく元気な柴田先生の取り組みが、
    具体的な社会の何かに結実することを期待している。

    ただ、研究と、社会への成果普及の両方に成功している研究者はそんなにいない。
    どちらか片方だけでも難しいのだから、当然だ。

    そのためには、研究は研究で、
    そして社会実装の取り組み、一般市民への情報提供などはそれぞれで、
    それぞれ、異なるレイヤーごとに、
    異なるかたちでのカネやインプット、そしてアウトプットが回る仕組みを構築することが必要だと思う。
    そして各レイヤーごとに独立性をもたせつつ(資金面で綺麗にしておくことは当然として、また一つがダメになったら他が全部ダメになるといったことのないような仕組みを作る)、
    相互にゆるやかに関わりを持たせて盛り上げていくことが重要だ。

    今回の学生さん向けの講義でも、部分的にはそういう話をしたつもりだったんだけど、
    彼らに伝わった自信はあまりない。
    話す練習が必要なんでしょうね。

    と、いったことを思いながら、
    北九州学研都市から北九州空港へのシャトルバスに乗っていた。

    なおこのシャトルバスだけでなく、折尾駅から北九州学研都市までのバスもSuicaが使えた。
    電車もだ。これは嬉しい驚きだった。
    やっぱりICカード超楽。四国も早く対応してほしい。
    というかその前に、筑波のバスがICカードに対応しないのが謎。

    北九州空港のメーテル

    北九州空港のメーテルはまた整備中だったけど、カバーは外されていた。
    これなんかも、もっとちゃんと作り直せばいいのになあ。

    終わり。自分の話については、またあとで別途。

    Written by 森山和道

    12月 24th, 2015 at 6:22 pm

    Posted in ロボット,日記

    九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(5)柴田研編

    without comments

    柴田智広教授

    (4)和田研、田向研、我妻研編 から続く。

    柴田智広教授は2014年から九工大人間知能システム工学に着任している。もともと福岡県大野城市のご出身とのことなので、そういうこともあったのだろうか。もともとは「視覚移動ロボティクス」を研究していて、知能ロボティクスから計算論的神経科学へ入っている。JST ERATO「川人学習動体脳プロジェクト」、CREST「脳を創る」でATRを経て、NAIST准教授、そして九工大教授というご経歴である。

    「人間や社会を学習・適応するシステムとして理学的に理解すること」
    「その理解に基づいた支援システムを工学的に実現し社会に還元すること」

    の二つが目標であり、研究手法の特徴だという。

    僕はいつお会いしたのかまったく覚えてないのだが、以前、先生がNAISTにいた時代に、NAIST広報の仕事で何度か呼んでいただいたことがある。たぶん、僕が「Robot Watch(休刊)」などに書いていた原稿を通して、ロボットのみならず神経科学、特に構成論的理解や計算論的神経科学、あるいは神経経済学などについても興味があるということが柴田先生の目に留まったのだろう、と思う。この領域で原稿を書いているライターは今でもあまり多くない。数人くらいだろうか。

    さて、NAIST時代から柴田先生がやっていた仕事で、九工大に移ってからも続けている仕事の一つに、双腕ロボットを使った衣服の脱ぎ着がある。着衣介助ロボットだ。今はリシンクの「バクスター」を使っている。ニシャンス・コガンティ氏と執筆した着衣介助の論文はIROSでアプリケーション部門で最優秀に選ばれている(西日本新聞「着衣支援ロボ論文が「世界一」に 九工大大学院の柴田教授ら」)。

    体の姿勢を修正する

    ロボットに体を押してもらって体の姿勢を修正する

    当日は、デプスセンサ(Kinect)とWIiバランスボードを使って人体のスケルトンと傾きを把握して、姿勢を修正するというデモをやってもらった。パーキンソン病の人だと、そもそも自分の傾きが把握できず、それを理学療法士が修正するというリハビリが行われるのだそうだ。物理的に押されることで、力覚的な刺激を直接受けて、自分自身の関節角度情報を修正されることが重要らしい。だが残念ながら急性的な効果はあるものの、恒久的な効果はないとのこと。

    2011年のころはマーカーを使ってモーキャプしていたが、Kinectが使えるようになって少しましになったが、バクスターはやはり大きい。ただ、2015年2月に実際の介護施設(鹿児島県薩摩川内市「グリーンライフ川内」)で高齢者相手に試しても、特に怖いとは言われなかったとのこと。実際にやった学生さんによれば、事前にバクスターに直接触ってもらったりして、あまり力がないこと、ふにゃっと動くことなどを体感して親しみをもってもらっていたことも大きいのではないかとのことだった。

    個人的な話ではあるが、二十年くらい前に柴田先生のお母様がパーキンソン病を患い、母子二人暮らしだった当時、衣服の脱ぎ着に苦労している様子や、ご本人でも介護で様々な苦労をされたことが、ロボット工学を介護に使うことを思い立った理由だという。この辺の話も研究室でいろいろ伺ったが、いつかもうちょっとちゃんと伺ってみたいと思っている。

    衣服を脱ぎ着することは日常動作の一つでだ。だが、ちょっと体を痛めると途端に難しくなる。そもそもロボットにとっては柔軟な物体を扱うのは非常に難しい(柴田研究室ではSIFT特徴量を使って衣服の形状を認識するといった研究も行っている。将来は衣服の折りたたみなどにも応用したいという)。ロボットアームの軌道を作るのが非常に大変であろうことは容易に想像がつく。柴田研では初期軌道は人が与えて、姿勢や素材などの変化に応じて強化学習法を使って運動軌道を探索させている。本当はこのあたりについてもっと詳しく話を聞くつもりだったのだが、今回は時間がなかった。

    ニューロマーケティングのような研究も行っている。顔の向きから嗜好を判断してリコメンドするといったアプリをデモしてもらった。実店舗(大学生協)ですでに行っているとのこと。いまはタブレットだが、将来はロボットにリコメンドさせることも考えているそうだ。

    手指の動きを二次元に圧縮

    手指の動きを二次元に圧縮

    トポロジカルSLAM

    TurtleBotを使ったトポロジカルSLAMの研究

    そのほか、人間の手指の動きのような高次元の情報を二次元上に圧縮表現することで、筋電義手を動かすときのインターフェースやリハビリに使おうとする研究、メトリックではなく構成要素の相対的情報を扱う「トポロジカルSLAM」を用いることで高速にSLAMを実行する研究などについて説明を伺った。

    NIRSで楽器練習過程の前頭葉の活動変化を計測

    NIRSで楽器練習過程の前頭葉の活動変化を計測

    また、NIRSを用いて前頭葉の活動を測ることで楽器演奏のような複雑な運動を練習したときの熟練度の変化を計測し、アドバイスなどに使おうとする研究、あとロボットはいまは動かせないとのことだったが、ダーツを投げるときに人間をサポートしてあげるロボットなどなどの研究も見せてもらった。

    まとめに続く

    Written by 森山和道

    12月 24th, 2015 at 4:23 pm

    Posted in ロボット,日記

    九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(4)和田研、田向研、我妻研編

    without comments

    3日目から続く。

    九州工業大学

    4日目。

    この日は九工大滞在最終日。
    4つの研究室を訪問させてもらった。

    これも記事としては、ある程度は「ロボコンマガジン」に書くつもりなのだが、
    とりあえずブログでもざくっとした話を書いてご紹介しておく。

    相手をしてくださった研究室は以下の4つ。

  • 障害者支援技術などを研究している人間機能代行システム研究室(和田研究室)
  • ロボカップ@ホーム三位の成績を持つ脳型計算機システム研究室(田向研究室)
  • テオヤンセン機構の解析や自動運転などをやろうとしている脳型知能創発システム研究室(我妻研究室)
  • それと、

  • 購買意思決定過程のモデル化や運動意図推定、双腕ロボットを使ったリハビリシステムなどの研究開発をしている人間・社会的知能システム研究室(柴田研究室)
  • である。

    改めて、呼んでくださった柴田先生に御礼を申し上げます。
    そしてご多忙の折(おそらくは突然だったろう取材のお願いに応じて)相手をしてくださった他の研究室の先生方、
    どうもありがとうございます。
    デモや説明などで時間を割いてくださった学生さんたちにも感謝します。

    さて、一つ一つざっとだがご紹介する。

    人間機能代行システム研究室(和田研究室)

    一つ目は和田親宗研究室

    人間機能代行システム研究室という名前のとおり、和田研では障害あるいは高齢者のための機能代行技術の開発を行っている。これまでに視聴覚障害者のための冷覚の仮現運動を使った文字提示システム、立ち上がり動作支援、歩行支援技術などの開発を行ってきた。また、うつ病など精神的負荷を定量的に推定するシステムの研究も行っているという。こちらはなかなか難しそうだ。

    和田研の靴

    最初に見せてもらったのは超音波センサや力センサ、慣性センサなどをつけた靴。歩行訓練用の歩容の計測・提示システムである。

    和田研究室の松葉杖計測システム。右が和田親宗教授

    松葉杖を使うときの圧力計測システムは、松葉杖をどう使えば(脇の下ではさめば)ずれないか、ユーザーに伝えるためのもの。共同研究している九州看護福祉大学の先生たちに使ってもらっているという。単に圧力を計測するだけではなく、歩容のどのタイミングで外れやすいかがわかればいいかもしれないと思った。

    立ち上がるときに適切に前傾姿勢が取れないと、人は立ち上がれない。足裏に重心からの垂線をもってこれないと立てないのである。起立動作誘導システムは、それがどのタイミングか慣性センサを使って教えようというもの。ただ慣性センサだけでは難しいそうだ。最初から背中が丸まってしまっている高齢者なども少なくないからだ。足底の力センサなどを組み合わせる必要がありそうだ。

    このほか、トイレでの起立支援機械の筋電を使った評価システムや、膝の曲がり方を計測するシステムの提案なども見せてもらった。

    真面目で地道な研究室という印象を受けた。ユーザー、高齢者や障害者の方たちともっと現場で触れ合うと、もっと色々な発想や考察が自然に出てくるのではないかなあと思った。

    脳型計算機システム研究室(田向研究室)

    田向准教授とロボカップ@ホーム用サービスロボット「エクシア」

    田向権(たむこう・はかる)准教授には、ロボカップ@homeで3位になった「EXI@(エクシア)」(Hibikino-Musashi @ホーム)のデモだけでなく、こちらの研究室が連携大学院(カーロボ連携大学院)の仕組みを使ってどのように学生たちの教育に取り組んでいるか教えていただいた。自動運転の研究を行っており、ナビゲーション技術、画像認識、また変わったところで脳波計測とその利用などについて、かなりじっくりと実習が行えるとのこと。初めてこの学研都市の構想が若干理解できた。また、企業とのインターンシップなども実施しており、学生・企業ともにメリットがあるのではないかとのこと。

    「EXI@(エクシア)」は、田向先生が九工大に来る前から既に使われていたロボットで、もともとは石井研によってつくられた台車の名前だったそうだ(というわけで、ガンダムに由来しているかどうか不明とのこと)。腕は車椅子などにつけて使われているiARM。デプスセンサ(Xtion)を二つ、それぞれ手先を見るためと人を見るためにつかっている。デモはペットボトルを取って人に渡すというもの。

    iARMはもともと人が操るためのアームなので、精度はそんなに出ない。手先で5cmくらいは平気でずれてしまうそうだ。だからロボットに使わせるのはけっこう大変だとのこと(逆に言えば、それを使っても人間は作業ができてしまうわけで、人間はやっぱりすごい)。

    いまはiARM用のROSパッケージを作ろうとしているという。どうしてiARMを使っているのかについては、もともと研究室にあった資産だから、とのこと。

    処理系にFPGAをアクセラレータとして使って画像処理を行っているところが特徴となっている。ROSユーザーからは特に何も考えずに扱うことができるそうだ。田向先生は「これからはFPGAの時代が来る」とおっしゃっていた。今年になってIntelがAlteraを買収したことにも一面が表れているように、この業界はこれから大きく伸びるという。スマートフォンにもFPGAが入るだろうとのことだった。組み込みマイコンをFPGAがどれだけ置き換えていけるのか、自分にはどうなんだろうと思うところもあるのだが、FPGAは大きく用途を広げつつあるらしい。

    ともかく半導体の人たちは「常にアプリケーションを探している」そうで、そういう立ち位置からロボットや自動運転を見ているということのようだった。その他、田向研の研究室紹介はこちら

    先生によればいまは「ロボカップ@ホームリーグ」がずいぶん盛り上がっているということだったので、やっぱり一度は見ておこうと思った。

    脳型知能創発システム研究室(我妻研究室)

    我妻広明 准教授

    私自身は完全に忘れてしまっていたのだが、我妻広明 准教授には、以前、お会いしたことがあった。今は昔、インプレスに「Robot Watch」があった時代のこと、こちらの記事だ(「異なる時間スケールの階層性」と「全体から部分への分節化」が知能を創発させる? 〜理研、「創発と知能」研究会を開催)。

    また、2015年9月30日に行わ荒れた産総研によるAIセンターの話(しなやかに人間によりそえる人工知能を 〜産総研 人工知能研究センター(AIRC)始動へ)のなかで出てきた、自動運転の話にもコミットされているとのことだった(このスライド)。

    まず脳にとっての身体、また生物にとって意味のある情報とは何かと考えるお話から伺った。具体的な研究としては、テオヤンセン機構の解析やそれを基にした拡張、身体の運動の分節化、脳波計測時の眼電信号のキャンセル、弾性素材を積極的に使った補助具などの開発を行っているとのこと。最近流行の「ファブ」的な設備環境を整え、教育にも力を入れているとのことだった。

    テオ・ヤンセン機構については、おなじみのVagabond worksさんの仕事に触発されたというところもかなりあった様子。「一昨日会いましたよ」と言ったら担当の学生さんがびっくりしていた。ちなみに博士号取得後は東芝の研究所に行く予定とのことだった。

    拡張テオヤンセン機構

    拡張テオヤンセン機構。クランクがもう一つついている

    柴田研究室編に続く

    Written by 森山和道

    12月 24th, 2015 at 1:26 pm

    Posted in ロボット,日記