森山和道

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    12月 4th, 2010 at 1:48 pm

    Posted in お知らせ

    大西洋の嵐が引き起こす地震波を日本から観測 将来は嵐直下の地球内部を観測することも

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    東京大学地震研究所 数理系研究部門 西田究 准教授

    東京大学地震研究所 数理系研究部門 西田究 准教授

    と、東北大学大学院理学研究科附属 地震・噴火予知研究観測センター の高木涼太 助教は、大西洋で発生した爆弾低気圧による海洋波浪が励起したP波・S波を日本の観測記録を使って検出し、震源情報を定量化することで発生メカニズムを明らかにしたと発表した。嵐によってP波だけでなく、地球の中をS波が励起されていることを初めて検出し、正確に強さと位置を決めた。

    嵐のような発生源であっても地震同様、「点」としてみなすことができることがわかったことで、これまでの地震学の手法を応用できる。今後、嵐による波を利用することで、これまでには観測点がなかった海洋の中心の下などでも、上部マントル(深さ600km程度)の地球深部をより詳しく観測することができる可能性がある。

    「Science」に掲載された論文はこちら:Teleseismic S wave microseisms

    8月24日にはプレスレクが行われた。

    ・脈動 海洋波浪が起源となるランダムな地震波

    海洋波浪起源の脈動

    海洋波浪起源の脈動

    今回の話は一言でいうと、海の波が海水中に音波を発生させ、それが海底に伝わって地震波に変換されることで、遠くからでも観測できるという話である。海の波が地面の振動を引き起こすのだ。

    この「脈動(micoseisms)」(海洋波浪が起源となるランダムな地震波)という現象自体は1950年ごろから知られていたが、ずっとノイズとされていた。そのノイズとみなされていた信号を、今では大量かつ丁寧に見ることができるようになり、今回のような観測ができるようになったという。

    ・爆弾低気圧によって引き起こされた実体波

    爆弾低気圧による脈動実体波を観測

    爆弾低気圧による脈動実体波を観測

    今回観測したのは、大西洋で2014年12月9日に発生した爆弾低気圧によって引き起こされた実体波(地球の内部を通る波)。日本からは距離で 8,000km、角度で90度くらい離れている。地震波を詳細に解析することでどのように海の波が地震波を引き起こしたかを見た。

    遠くの嵐からの信号も近海が荒れていればマスクされてしまうが、今回は日本近海の海がたまたまそれほど荒れていなかったため、観測できたという。

    具体的にはP波とS波がどの程度の振幅比を持っているかを見た。S波には、進行方向に鉛直に振幅するSV波と、直行かつ水平に振動するのSH波がある。その振幅の比がどの程度あるのかを調べることで、何が揺すっているのかを知ることができる。

    P波とS波の振幅比

    P波とS波の振幅比

    今回の研究でP波とS波のエネルギー比を正確に決めることができ、観測されたS波は基本的には嵐が波を作っているものだとわかった。

    なおSV波は予想していたが、SH波の発生は予想していなかったという。S波は海洋表面の音が海底に伝わったとき、海底面の凹凸によってひっかくような動きによって圧力変動が起きて発生するが、SH波は堆積物が多いところで起きていることから、おそらく海底面で多重反射をすることで波のエネルギーが滞在することで、SV波のエネルギーがSH波になると考えられるという。

    次に、どこで起きたかを調べると、ほぼ予想されたとおり、低気圧の移動と連動していた。また、水深がほぼ同じだった。海洋の波浪の振幅が特定の水深と一致すると共鳴して音を出しやすいからだという。SH波は堆積層が厚い部分から起きていた。堆積層のなかで波がトラップされるようなことが起きて、発生したのではないかと考えられているという。

    また、どの程度の大きさの波が発生したかも定量化した。嵐による実体波に対してセントロイド(重心)を決定できることを今回、示すことができた。点源とみなすことができれば、これまでの地震学の手法が使える。

    地震波から決めた嵐の位置

    地震波から決めた嵐の位置

    ・嵐を使ってマントルの不連続面を観測できる可能性

    嵐を地震の点源として利用して地球深部の構造を調べることが可能に

    嵐を地震の点源として利用して地球深部の構造を調べることが可能に

    今後、何が期待されるか。真下に伝わるP波は、マントルのなかの深さ660km程度にある、上部マントルと下部マントルの不連続面で、S波に変わる。これを検出できると面白いという。地震はプレート境界にかたまって発生する。また、海のなかにはほとんど観測点がない。そのため、プレートの典型的な性質は案外わかってない。海底地震計をもっていくのが王道の手法だが、今回の手法を使うことで、何もないところに嵐が来れば、その下の構造がわかることになる。

    「嵐のイベントのカタログを作ることで、総合的な地球内部構造が分かるのではないか。その第一歩目としてこの論文がある」と西田氏は語った。

    西田氏の研究の詳細は「サイエンス・メール」で

    私が編集人をしているメールマガジン「サイエンス・メール」では、西田究さんに以前、お話を伺って配信しています。この研究の話も出てきます。
    バックナンバーだけの購入も可能です。

    全15回。
    より詳しい研究の背景を知りたい方は、ぜひご購読ください。

      サイエンス・メール 2015/10/1 西田究-1 テーマがなかった学生の「博打」だった
      サイエンス・メール 2015/10/8 西田究-2 南極の超伝導重力計で「地球の貧乏揺すり」が見つかる
      サイエンス・メール 2015/10/15 西田究-3 1960年代以前のほうが地球自由振動の予測や考え方はあった
      サイエンス・メール 2015/10/22 西田究-4 大気と固体地球との共鳴や季節変動が地震計から見える
      サイエンス・メール 2015/11/5 西田究-5 大気擾乱や積乱雲発達が生み出す長周期の音波を聞く

      サイエンス・メール 2015/11/12 西田究-6 スマフォ普及・ビッグデータ時代の地震・気圧観測用アレイ
      サイエンス・メール 2015/11/19 西田究-7 深海では海底面を引っ掻くような波が常に発生している
      サイエンス・メール 2015/11/26 西田究-8 海洋波浪活動の季節変動と地球の揺れの対応
      サイエンス・メール 2015/12/3 西田究-9 精度よく測れば測るほど分からないことが増えていく
      サイエンス・メール 2015/12/10 西田究-10 地震波干渉法で地震学の既存の道具を使えるようにする

      サイエンス・メール 2015/12/17 西田究-11 絶えず揺れていることを利用して「構造の時間変化」を追うことができる
      サイエンス・メール 2015/12/24 西田究-12 データありきで思いもしなかったものを探し、芽になるものを持っておく
      サイエンス・メール 2016/1/7 西田究-13 大西洋の嵐を日本から地震計を使って見る

      サイエンス・メール 2016/1/14 西田究-14 大量データ時代における「研究縮小再生産」の恐れ
      サイエンス・メール 2016/1/21 西田究-15 三振してもいいからバットを振る

    Written by 森山和道

    8月 26th, 2016 at 9:45 pm

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    学習まんが『ロボットパークは大さわぎ!』刊行のお知らせ

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    ロボットパークは大さわぎ! 表紙

    まんが 坂元輝弥、高橋智隆 監修、原案 森山和道/学研プラス、2016

    学研プラスさんから学習まんがロボットパークは大さわぎ!という本が出ました。
    私こと森山和道が原案を担当しました。
    監修者はロボットクリエイターの高橋智隆さんです。

    クレジットは、
    まんが 坂元輝弥、高橋智隆 監修、原案 森山和道
    となっております。


    ストーリーは、ふしぎ生物の「コロナ」と一緒に、ロボットが大活躍するテーマパークを駆け巡る、というもの。
    最新のロボット事情やロボットの仕組み、概念などを解説しています。

    目次はこちら。「クエストファイル」というのは解説コラムです。

    プロローグ
    第1章 ロボットがいる家
     クエストファイル 1 ロボットは暮らしの中に
    第2章 夢の二足歩行ロボット
     クエストファイル 2 二足歩行ロボット アシモ
    第3章 線を見分けるロボット
     クエストファイル 3 ロボットのセンサー
    第4章 先生はジェミノイド
     クエストファイル 4 人間そっくりなロボット
    第5章 ロボットパークヘゴー!
     クエストファイル 5 工場で働くロボット
    第6章 ロボットレスキュー隊
     クエストファイル 6 ドローンは空飛ぶロボット
     クエストファイル 7 病院ロボット&レスキューロボット
    第7章 ロボットパークの舞台裏
     クエストファイル 8 コミュニケーションロボット
     クエストファイル 9 倉庫で物を運ぶロボット
    第8章 学習する人工知能
     クエストファイル 10 人工知能(AI)
    第9章 ネットワークでつながるロボット
     クエストファイル 11 未来のロボットネットワーワ
    エピローグ
     クエストファイル 12 ロボットクリエイターの仕事
    ロボットリスト

    小学生向けの学習まんがなので、書店では
    児童書売り場にしか置かれてません。

    もちろん小学生向けの学習まんがなのですが、自分としては、
    「最近ブームらしいロボットや人工知能ってなんなの? ちょっと知っておきたいんだけど」
    と思ってるような、少なからぬ、ごくごく普通のビジネスマン向けならば
    充分なくらいの情報量を盛り込んだつもりです。

    そういう大人が子供のために買ってみて、
    子供が寝たあとに、自分もついでに読んだら意外とためになった、くらいの
    内容にはなっているのではないかと思うので、
    できれば親子で読んでもらいたいなあと思っています。

    (本屋で売っている書店員さん、小学生向けだけじゃないんです)
     なお書店さん向け資料はこちら

    ちなみにアマゾンでは、「メカトロ・ロボット」にも分類されていて、
    そこのランキングではしばらく1位になっていました。

    アマゾン個別ページの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」を
    ご覧いただけるとお分かりいただけると思うのですが、
    ガチのロボット技術者たちが、自分たちの子供のために買ってくれてます。

    よろしくお願いします。
    各オンライン書店へのリンクはこちら。

    ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)
    森山 和道 坂元 輝弥
    学研プラス
    売り上げランキング: 6,191

    honto
    http://honto.jp/netstore/pd-book_27909141.html

    楽天ブックス
    http://books.rakuten.co.jp/rb/14273858/

    紀伊國屋書店
    https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784052044199

    セブン-イレブン
    https://7net.omni7.jp/detail/1106671123

    e-hon
    http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033470660&Action_id=121&Sza_id=A0

    Written by 森山和道

    7月 18th, 2016 at 10:43 pm

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    シャープ、ロボット型電話「RoBoHoN(ロボホン)」の販売を開始

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    RoBoHoN

    シャープ株式会社は2016年4月14日、電話機能を搭載した小型ロボット「RoBoHoN(ロボホン)」の予約販売を開始した。高さは19.5cm、重さ390g。CPUはQualcomm Snapdragon 400 processor 1.2GHz。Android 5.0を搭載しており、背面ディスプレイの解像度はQVGA。メモリはROM 16GB、RAM 2GB。頭部CMOSカメラは800万画素。

    本体価格は 198,000円(税抜き)。特徴である音声対話機能を利用するためには月額料金 980円+税 の「ココロプラン」への加入が必須で、加えて外出先で用いるにはモバイル通信サービス料も必要となる。発売日は5月26日だが、4月14日午後1時から公式サイト( https://robohon.com/ )で予約販売を開始した。

    ロボホンを使った電話の様子

    モバイル通信サービスはシャープ自身がMVNO事業者として提供する。利用するには別途月額料金が必要となる。データ容量によって料金は異なり、1GBプランで650円、3GBで950円、5GBで1,580円。電話機能を利用するために音声通話SIMを契約する場合は、これに加えて+700円となる(価格はいずれも税抜き)。5GBプランで音声通話SIMを利用する場合は月額 2,280円+税 となる。

    このほか保守パックサービスが用意される。修理料金が5年間にわたって5割引になる「ケアプラン50」、同じく7割引になる「ケアプラン70」で、料金はそれぞれ月額で990円、1,650円(いずれも税抜き)。またオプションとしてキャリングケース、卓上ホルダーなどが販売される。

    海外への販売も検討する。月産生産台数は 5,000台。
    カラーバリエーションや、コラボレーション・モデルなどは予定されていないが、将来やっていきたい意向はあるようだった。

    ・「ココロプロジェクト」第1弾

    発表会場にてハンズオン

    シャープは家電製品を人工知能化する「ココロプロジェクト」を進めている。シャープではモノのインターネット(IoT)をさらに進めた「AIoT」を掲げている。より製品に愛着をもってもらうようにすることが目的だという。センシング、音声技術、クラウドとの連携によって、従来の家電ではできなかった、顧客の好みやふるまいから学習することで、より個人に適応し、愛着を持たれる家電製品の実現を目指す。「RoBoHoN」はその第一弾。

    「RoBoHoN」は使う人のプロフィールや行動習慣に合わせて、語彙も増えていき、アプリケーションも追加されるという。「RoBoHoN」の基本設計、デザイン、動作などを担当したロボガレージ代表取締役でロボットクリエイターの高橋智隆氏は「プロジェクトは三年前に始まった」と紹介した。ロボット、スマートフォンそれぞれの難しさに直面したという。

    高橋氏は「スマートフォンに足りなかったものは将来性と愛着。ロボホンはそれらを補完する。単なる足し算ではなく人と機械の関係を飛躍的に進化させる情報通信端末の未来だ」と述べた。

    コミュニケーションロボットにとっては小さいことに価値があるという。ロボットが大きいと期待値も大きい。だがロボットが小さいと人間側のロボットに対する期待値も低くなり、ロボットが相対的に賢く見えるからだ。「人の感性は繊細。デザイン、コミュニケーション、UX、小ささにこだわった。それらを全てを仕上げることで愛着が生まれる」と述べ「スマートフォンとロボホンの二台持ちが始まる。やがて、スマホにとってかわる」と語った。「従来のスマフォのかたちで使いながら、いままで気づかなかった機能や役割を見つけてもらえるのではないか」という。

    会見ではシャープに対しては「本当に売れると思っているのか」という質問も出た。いっぽう高橋氏は「ロボホンについてコンセプトとしては一つの完成系ではないか」と語った。ロボホンのコンセプトは「人と共生するロボットのあるべき姿なのではないか」と考えており、「今後、ソフトウェア、ハードウェアのアップデートを経て、人と暮らすロボットができるのかなと思っている」という。ただし「ロボットだけではなく生活の変化を待たないといけない」とも述べた。

    ・ロボホンのハードウェアについて

    「ロボホン」は小型ロボットなので搭載しているバッテリー容量も1,700mAhと小さい。だが、バッテリーを食うモーターが13に加え、小型レーザープロジェクタを搭載している。どのくらいバッテリーが保つのか、発表当時から懸念されていた。ハンズオンコーナーの説明員によれば、たとえばプロジェクタを1日に2回、ダンスを1日3回程度行なう程度であれば、1日以上は十分に保つという。スマートフォン開発を経て蓄積された節電ノウハウが活かされているとのことだった。

    頭部に搭載された小型レーザープロジェクタも、この大きさでは最も性能の良いものなのだとのことだった(1280×720)。温度監視をしており、過熱しそうになると「いまちょっと無理」といった発話を行って、投影を中止する。なおモーターは並木精密製とのことだった。

    ロボホンのダンス・歩行

    また「ロボホン」は本格的な小型2足歩行と紹介している媒体もあるが、ロボホンの歩行は一般的な2足歩行ロボットと比べると特殊だ。まずロボホンには膝がない。そして足底を内側に曲げて歩行している。トルクの小さなモーターを使っているためだ。順番としてはこうだ。まず体を傾ける。そして足底を傾けて足全体を前に振り出して着地させて体重を移動する。こういうおもちゃがあったなと感じるような動き方だ。

    また腕のつけかたや外見もかなり特殊で、自由度が少ないなりに動きを感じさせるようにひねりをつけたかたちになっている。
    側面から見たロボホンの立ち姿にも高橋氏のこだわりと工夫を感じる。

    ロボホンのバストショット

    ロボホンのマイクは頭部側面にある穴だ。スピーカは胸にある。頭頂部にはキャンセル用のタッチセンサーが仕込まれている。実際に手に持ってみると精密感は高い。生産は広島工場で行っている。

    いっぽう、音声対話機能を利用させるための端末であるというコンセプトを重視しすぎたのか、物理的ボディを持っているロボットならではの身体特性をあまり利用していないUIになっている点は気になった。

    たとえばロボットから選択肢を選ばせるような場合、音声認識だけではなく「1番なら右腕、2番なら左腕を触れ」といったUIを音声認識に加えて併用することがしばしばある。だがロボホンにはそのような併用がなく、ひたすら音声認識にこだわっている。そのため音声認識がうまくいかない環境ではかなり微妙な印象のデモになってしまう。会見時のハンズオンコーナーでも「うるさすぎる」という理由で音声認識がうまくいかないことが多かった。

    ロボホンの音声認識を使ったクイズ

    また、シャープが今後、ユーザー側とどのようなコミュニケーション、関係を維持していくつもりなのかもよくわからなかった。一例を挙げれば、5月末発売にもかかわらず、パッケージも提示されなかった。コミュニケーションロボットを購入した場合、最初に手に取るのはパッケージであり、そこから開封したときにロボットが最初どのようなアクションでユーザーと向き合うのかといったUXは大事な部分だと思う。だが会見を見る限り、シャープはその点を重視しているようには思えなかった。

    商業製品としてのコミュニケーションロボットは、商品に対する擬人化を積極的に行なうことで、顧客にとっての価値を大きくするという性質のプロダクトだ。そこを軽視しているようだと今後が心配である。表面的な「ロボット電話」的なUIしか重視していないのであれば、スマートフォンとしてだけでなく、個人向けロボットとしての商品価値まで失うことになりかねないと思うのだが。

    ロボホン内部が見えるハーフスケルトンモデル

    ロボホン内部が見えるハーフスケルトンモデル。東急プラザ銀座「HANS EXPO」で出展されている

    Written by 森山和道

    4月 15th, 2016 at 3:52 pm

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    書評:『触楽入門 はじめて世界に触れるときのように』(仲谷正史ほか著/朝日出版社)

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    触楽入門

    『触楽入門 はじめて世界に触れるときのように』
    (仲谷正史、筧康明、三原聡一郎、南澤孝太 著 是澤ゆうこ イラスト 朝日出版社 定価:1,580円(税別) ISBN:978-4-255-00905-6)

     触感は素材に宿っているのではなく、素材・身体・心の関係の上に宿るのだと本書はいう。著者らは技術に基づく触感デザインを意味する「テクタイル」という活動を2007年から続けている。 本書は共著形式だが、基本的には、触覚の錯覚を通して神経科学と心理学の間をつなぐ研究をしている仲谷正史氏が執筆したもののようだ。

     彼らが発見したものの一つが本書の裏表紙に印刷で表現されている「フィッシュボーン錯覚」だ。魚の骨のようなパターンが印刷されている。少しだけ非印刷面よりも盛り上がっているのがわかる。ところが、背骨の部分を上下になでると、なぜか凹んでいるように感じられるのだ。そんな馬鹿なと思うだろうが、実際に試してみるといい。

     触感は能動的な感覚だろうか、受動的だろうか? 触られた感覚は自分が動かなくても存在する。いっぽう、ものを触るというのは探索的な行動だ。腕や手、指先を動かし、押し込んだりして、我々は物体の表面の情報を獲得する。動かすことによって時間軸上の情報が新たに付加される。そして触覚をよりクリアにしているらしい。

     たとえば熟練した職人は、軍手をつけるほうが、素手よりも微妙な凹凸がわかるのだそうだ。軍手のメリヤス編みが触感を増幅するのだという。人は指を動かし、振動を検知することによって、皮膚表面の触覚センサの密度よりもずっと細かいものを感知できる。触覚は、自分自身の身体を動かすことによって獲得される空間情報と時間情報の組み合わせから構成されている。

     仲谷らは触感を「感覚の交差点」だという。触感は五感を複合する感覚であり、体験する五感は、いわば触感に変換されて、意味を与えられているのかもしれない。実際に、オノマトペで状況を認識するときにも我々は、全身の触覚情報を処理する第一次体性感覚野を用いて処理しているらしい。動物の感覚体験がどんな情報表現になっているのかはまだ解明されていない。だが触感は一つの鍵になるかもしれない。

     本書後半では、自分で自分をくすぐってもくすぐったくない理由や、ゴムの手を自分の手のように感じるようになるラバーハンドイリュージョンなど、この手の本ではおなじみの話題が紹介されている。

     本書は「触楽入門」のタイトルどおり、触覚に関する様々な話題が収録されている面白い本ではあるのだが、より体系立てて学びたい、あるいはもう少し詳しい話を知りたい人への案内があれば、もうちょっと良い本になったと思う。

     著者らが行っている触覚を記録し、再現するテクタイルの活動については、私も以前、何度かレポートを書いたことがある。二つ挙げておくので、下記も合わせてご覧いただきたい。

    触楽入門
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    仲谷 正史 筧 康明 三原 聡一郎 南澤 孝太
    朝日出版社
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    Written by 森山和道

    2月 10th, 2016 at 6:46 pm

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    九州工業大学大学院 生命体工学研究科 訪問(6)まとめ

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    柴田研究室編から続く。

    というわけで、駆け足で九州工業大学のロボット系研究室のうち5つの研究室を伺い、
    トマトロボコンを取材させてもらいました。
    ありがとうございました。
    以下、こちらの記事のまとめです。

    柴田先生は「研究室は人で決まるので、いろんな人たちを呼び込んでいきたい」とおっしゃっていた。

    留学生たちや、柴田先生が担当である「先進的支援ロボット工学(AAR)国際コース」の取り組みはもちろんだけど、単に狭義の研究室だけではなく、外部の人たちと様々な交流・連携をもって、物事にあたっていきたいと。

    月に1度「ひびきの金曜酒場」のようなオープンな産学官交流の取り組みも行っていらっしゃる。

    北九州が介護ロボット特区になったことも今後、関係してくるかもしれない。
    他にもJST関連のあれやこれやのプロジェクトも関係しているらしい。

    というわけで、とにかく元気な柴田先生の取り組みが、
    具体的な社会の何かに結実することを期待している。

    ただ、研究と、社会への成果普及の両方に成功している研究者はそんなにいない。
    どちらか片方だけでも難しいのだから、当然だ。

    そのためには、研究は研究で、
    そして社会実装の取り組み、一般市民への情報提供などはそれぞれで、
    それぞれ、異なるレイヤーごとに、
    異なるかたちでのカネやインプット、そしてアウトプットが回る仕組みを構築することが必要だと思う。
    そして各レイヤーごとに独立性をもたせつつ(資金面で綺麗にしておくことは当然として、また一つがダメになったら他が全部ダメになるといったことのないような仕組みを作る)、
    相互にゆるやかに関わりを持たせて盛り上げていくことが重要だ。

    今回の学生さん向けの講義でも、部分的にはそういう話をしたつもりだったんだけど、
    彼らに伝わった自信はあまりない。
    話す練習が必要なんでしょうね。

    と、いったことを思いながら、
    北九州学研都市から北九州空港へのシャトルバスに乗っていた。

    なおこのシャトルバスだけでなく、折尾駅から北九州学研都市までのバスもSuicaが使えた。
    電車もだ。これは嬉しい驚きだった。
    やっぱりICカード超楽。四国も早く対応してほしい。
    というかその前に、筑波のバスがICカードに対応しないのが謎。

    北九州空港のメーテル

    北九州空港のメーテルはまた整備中だったけど、カバーは外されていた。
    これなんかも、もっとちゃんと作り直せばいいのになあ。

    終わり。自分の話については、またあとで別途。

    Written by 森山和道

    12月 24th, 2015 at 6:22 pm

    Posted in ロボット,日記